「とんび」:重松清
(あらすじ)
昭和37年、ヤスさんは生涯最高の喜びに包まれていた。愛妻の美佐子さんとのあいだに待望の長男アキラが誕生し、家族3人の幸せを噛みしめる日々。
しかしその団らんは、突然の悲劇によって奪われてしまう。アキラへの愛あまって、時に暴走し時に途方に暮れるヤスさん。我が子の幸せだけをひたむきに願い続けた不器用な父親の姿を通して、いつの世も変わることのない不滅の情を描く。
(感想)
これは電車の中で読んじゃだめなやつだ…(涙目)
いや~泣けます。人のあたたかさに泣けます。人と人のつながりが希薄になってる、まさに今また読んだらもっと泣けそうだな(そういえば今度映画化されるみたいですね)
重松清さんの作品は今回初めて読みました。読み始めはやや独特な文体に慣れず、少し読みづらさを感じたものの、重松さん自身がヤスさんとアキラを見守っている人の立ち位置にいるように思えて、なかなか味わい深い文体だなと感じました。
人物の心情の描写も秀逸で、例えば「モヤッとした気持ち」のことを「割り算で余りが出た時みたいな」という表現を使っていて、「あ、私もそういう気持ち、なったことあるな」と共感できる表現がたくさんありました。
主人公のヤスさんはとにかく不器用すぎる男。思ってもないことを口にしたり、言葉より先に手が出てしまうこともあるけど、ものすごく優しくて愛情深い人でした。1人息子であるアキラとずっと2人家族で、アキラを愛しすぎるあまり、時々めちゃくちゃな行動を取ってしまうヤスさんが終始いとおしかったです。ただ自分の親だったら……ちょっと面倒かも…。笑
ヤスさんとアキラを取り巻く人たちも、みんな愛に溢れた人ばかり。親1人子1人の家族だとしても、これだけ周りの人が支えて助けてくれたら、それはすごく幸せなことだよなと思いました。特に海雲さん、照雲さん親子がとっても素敵でした。
いつぞや放送されたTBSのドラマ版も見てみたいです…!