Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.6.5 ミュージカル「レ・ミゼラブル」マチネ公演:物語とシンクロする観劇日

♪私のレミゼが始まった〜そんな感じ〜♪


f:id:der_letzte_tanz:20210716003132j:image

 

というわけで、この日は「レ・ミゼラブル」2021初観劇でした!

 

大所帯なカンパニーですし、緊急事態宣言の延長などなど、状況的にも開幕までヒヤヒヤしてましたが、とりあえず1回は観劇できました。

 

海宝さんがマリウス役から抜けたものの、いくちゃんがコゼットからエポニーヌへと転身を遂げたので、期待半分、不安半分で観てきました。

 

奇しくも観劇した6月5日は、物語の中では六月暴動が起きた日で、エポニーヌが亡くなった日だったそうです。原作小説は読みましたが、レミゼに対してはそこまで熱心ではないのでそんなこと全然覚えておらず…。完全なる偶然とはいえ嬉しかったです。

 

レミゼは2017年から観ているので、今年で3期目。毎回あの冒頭の♪じゃっじゃーん♪という2音だけを聴いたら8割方満足できるので、めちゃくちゃコスパの良い作品だなと思ってます。笑

 

と同時に、私の中ではいまだにすごく感情移入がしにくい作品でもありますし、それは今回もあまり変わっていません。自分の中で、一体誰にフォーカスすればいいのかあんまりわかっていないので、いわゆる「神の視点」で観ている感じ。前回までは海宝マリウスがいましたが、マリウスには永遠に共感できそうにないので(ひどい)

 

だからといって全然泣けないとかではなく、今回もバルジャンが亡くなるシーンはばっちり泣きました。あれはもう、歌とお芝居を見るだけでパブロフの犬のごとく泣いてしまうので…。

(でもやっぱり2017年人生初レミゼのヤン・バルジャンと清水コゼットが忘れられぬのだ…)

 

今回気になったのは、座席の位置が悪かったのか、終始きーーーーんという信号音のような、マイクがハウリングしているような音が、小さめにずっと鳴っていたこと。これ聞こえてるの私だけなのかな…って不安になりましたが、隣に座ってた女性も終演後に同じようなことを言っていたので、気のせいではないはず。

 

以下、キャスト別感想です。

 

ジャン・バルジャン:吉原光夫さん】

・2021年版は福井バルジャンが観られないのですが、現在キャスティングされている3人の中では、個人的に1番好きな吉原バルジャン。私がバルジャン役に求めるのは、とにかく圧がやばい歌声なので。

 

・2019年版では、野性味に溢れた1幕前半のお芝居と歌が印象的でした。野犬のような荒々しさと「自分は、ジャン・バルジャンという男は、ここで生きてるんだ!」という叫びにも似た歌声に感動した記憶があります。

 

今回は2幕の♪彼を帰して♪が、本当にびっくりするくらい素晴らしく、印象深かったです。神に祈りを捧げる歌なので、穏やかで温かみのある歌い方になるのはもちろんなんですが、「吉原さんってこんな声を出したり、こんな表情をするんだ…!」という驚きがありました。この歌の歌詞にある「彼」は、マリウスだけを意味しているものだと思ってましたが、吉原バルジャンは、その場にいる若者たちが、1人でも多く無事に家に帰れることを祈って歌っているように感じました。

 

・1幕の序盤も、2年前は人間性を失った獣性をすごく感じるお芝居で、司祭様やファンテーヌ、コゼットとの出会いを通してだんだん人間として生まれ変わる、という印象でした。今回は「仮出獄許可証」が彼の手枷になっていて、それがあるがために自由を与えられても、自分には人としての尊厳だったり信頼を得られないことを、ひどく嘆いてるように見えました。怒りよりも、悲しみや絶望の感情が打ち出されていた気がします。その証拠(?)に、銀の食器や燭台を与えてくれた司祭様が立ち去ろうとすると、その裾に一瞬取りすがっていて…バルジャンの弱さが表れたお芝居だなと思いました。

 

・天に召されるシーンも、コゼットに「生きて パパ生きるの」と言われて朗らかに笑っていました。序盤では誰にも必要とされていなかったバルジャンが、コゼットに「生きて」と言われて本当に嬉しかったんだろうなと、吉原バルジャンのあの笑顔を見て思いました(そして滝のように泣きました)

 

【ジャベール:上原理生さん】

・2017年の岸ジャベールが「融通のきかない石のような人」で、2019年の川口ジャベールが「執拗なまでに正しさを求める人」、伊礼ジャベールが「あまりにもまっすぐすぎる正義感を持った人」という印象でしたが、上原ジャベールは、今まで見た中では1番物腰が柔らかくて、一見話が通じそうなジャベールという印象でした。ただとても粘着質でもあり、何度振り落としても這い上がってきそうなしつこさも感じました。

 

・歌唱力という点ではとにかく圧倒的なので魅了されましたが、この回だけでは上原ジャベがどんな人物かまでは、いまいち掴みきれなかったのが正直なところです。私はジャベールというキャラクターをあまり理解できない人間なので、そういうのもあって理解が足りてないんだと思うんですが…。

 

【ファンテーヌ:濱田めぐみさん】

・続投されるとは思ってなかったので、キャストが発表されたときに「あれ、またやるの?」と思っちゃいました。別にミスキャストではないとは思いますが、「イリュージョニスト」や「アリージャンス」を観ると、ファンテーヌのあれだけの出番のために彼女を起用するのは、結構もったいない気がしてしまったり…。

 

・2年前にも観てましたが、今回はより「母親としての強さ」を感じました。前回は「堕ちるほど強くなる女性」で、娼婦になったときのシーンが1番印象的でしたが、今回はファンテーヌが亡くなる場面の方が、ずっと印象に残りました。

 

【コゼット:敷村珠夕さん】

・失礼ながら、ビジュアルが結構素朴な感じなので、おとなしめ&おしとやかなコゼットなのかと思ってたんですが、かなり芯のある強めなコゼットでした。強め乙女キャラクター大好きなので、敷村コゼットのキャラ作りは個人的に好きです。

 

・敷村コゼットは、バルジャンを愛し支えて生きることで、地に足をつけて強く育ったコゼットでした。愛されて甘やかされるだけじゃなく、きちんと他者に愛を与えることを知ってるなと感じました。

 

・声もとっても素敵!ソプラノパートがキンキンして聴こえないやさしい響きなんですが、きちんと芯があるのでブレなくて安定感がありました。

 

【マリウス:三浦宏規さん】

・海宝マリウス以外のマリウスを観るのが初めてだったので、「マリウスってこういうキャラクターなんだな」と、新鮮な目で見ることができました。

 

・三浦マリウスは、ご本人のベビーフェイスも相まってだと思いますが、とにかく幼いイメージ。革命を志す若者たちの中でも、いい意味で浮いてました。そして革命に参加しても、正直ほとんど力になりそうになかったです。原作を読んだときのマリウスの印象に近いかもしれません(身なりと口だけ達者な、悩めるお坊ちゃま)

 

・歌は絶対に海宝マリウスと比べないように…と意識して観てましたが、やはり♪カフェソング♪は…どうしても海宝マリウスを思い出してしまいました…。

 

・あとこれはどうしても直してほしいな…と思ったので書きますが、♪恵みの雨♪が悲惨でした…。生田エポとの掛け合いがばらっばらで、ズレてるのが気になりすぎて全く泣けずでした(真顔)

 

・一方で「ここにいても同じだ!」のシーンのお芝居は、やけっぱちになったマリウスの悲壮感がひしひしと感じられ、その勢いにこちらも気圧されそうでした。

 

・ミュージカル界の次期プリンス候補なのだと思いますが、とりあえず歌はまだまだ上を目指せそうです。今年は「リトル・ショップ・オブ・ホラー」「グリース」でもまた拝見する予定なので、そちらにも期待したいです…!

 

【エポニーヌ:生田絵梨花ちゃん】

・私はいくちゃん大好きですが、さすがにエポニーヌ役になると発表されたときは、申し訳ないけれど「なんで??」でしたし(本当にオーディションで選ばれたのかしら…と疑心暗鬼になったり)、開幕前も不安しかありませんでした。

 

・実際に観てみて、予想以上に健闘はしていたかなというのが第一印象です。元・コゼットだったからか、「幸せの世界に縁があったはずのエポニーヌ」に見えました。

 

ぶっきらぼうな歌い方とか仕草はそれなりに様になってましたが、歌の低音パートは苦手なキーになると途端に声が埋もれて聴こえづらくなるのはかなり致命的では…?(ちなみに同じくいくちゃん大好きな母は絶賛してましたけど)

 

・公演が始まって間もないからということもあるとは思いますが、キャラクターとしても「いくちゃん独自のエポニーヌ像」はまだまだ見えてないように思いました。2019年のエポニーヌたちは、しっかり3者3様でそれぞれかなり見応えがあったのですが、いくちゃんは歴代エポたちをなぞってしまってるように見えたのと、とりあえずがさつに振る舞っておけば…みたいな部分も感じられました。歌はともかく、お芝居は今後もう少ししっくりくると良いなと…。

 

・それにしても、いつだってかわいい…!顔が泥で汚れてたって、地味なトレンチコート着てたって、ひときわ輝いててかわいいんだ…!!!

 

【アンジョルラス:木内健人さん】

・2019年は、3回とも「革命がなぜ成功しないのかがわからないくらいカリスマ性のある上山アンジョ」を観ていたので、木内アンジョでやっと話の流れに納得(?)がいきました。いい意味でとても「青い」アンジョルラスでした。

 

・三浦マリウスと並ぶととにかく若く、「自分たちでも世界を変えられる」という熱に浮かされているひとりの若者に過ぎませんでした。強いて言えば、若者たちを率いるカリスマ性はもう少し欲しいかな…。新キャストだからということもあるのか、みんなを引っ張る感じはあまりなくて、他の人と肩を並べてる印象でした。

 

【テナルディエ夫妻:橋本じゅんさん・谷口ゆうなさん】

・私の初レミゼでテナ夫妻だったペアに再会できました!やっぱりテナルディエ夫妻好きだなぁ…どうにも憎めないんですよね…。