Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2024.9.19 ミュージカル「ファンレター」ソワレ公演:お芝居からくみ取る感情たち

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「ファンレター」3回目の観劇。

 

全6回観劇した中で、一番舞台に近い席(2列目センターブロック)だったおかげで、とにかく各役者さんの細やかなお芝居をしっかり観ることができて大満足でした。明らかにお芝居がどんどん良くなっていってるのを肌で感じられましたし、上演期間が短めかつこじんまりとしたカンパニーなぶん、本当に濃密に作られていってるなと。

 

以下、感想や気づきのメモ。

 

・「ヘジン先生が、どの時点でヒカル=セフンだと気づいたか」がなんとなーくわかったような…?

 

酔っ払ったヘジン先生が「ヒカルからの返事が来ない」と嘆いて床に倒れ込み、とっさにセフンがヘジン先生を助け起こそうとする場面。それまで酔いと嘆きで焦点の合わない目をしてた浦井ヘジン先生が、自分に触れる海宝セフンを、突然酔いが覚めたかのようなはっきりとした視線で見つめていました。

 

そういえばヘジン先生からセフンへの最期の手紙に「セフンとヒカルは同じ匂いがした」みたいなことを書いていたような…もちろん【匂い】はそのままの意味じゃないかもしれませんが。

 

その後、ヒカルの手紙をユンからとっさに奪い返したセフンが「この人は実在するんです!」と、やや支離滅裂な主張をした瞬間の、浦井ヘジン先生のセフンを見る目で、「あ、多分今察したんだな」と感じました。正解は浦井さんにしかわからないんだと思いますが、この回に関してはこのタイミングで気づいたんだろうと思います。

 

・1幕でヘジン先生がヒカルのことを話す中で「彼女」と言うたび、舞台奥に座ってるまだショートカットの木下ヒカルがびくっ!としてたので、セフンが書く文字のみならず、ヘジン先生からの手紙でも「ヒカル」は作られてる様子がよくわかりました。

 

ちなみにヘジン先生がヒカルのことを「ミューズ」と言った瞬間、ハッとした顔で「ミューズ!?」と口パクでつぶやいてはけていった木下ヒカル。きっとセフンの中で「先生が自分のことをミューズと呼んでいるならば、自分もそれにふさわしくならなければ」ということで、次のシーンからは完全に「女の子」の恰好で木下ヒカルが出てきたんだろうなぁ。

 

・序盤で海宝セフンがヘジン先生の詩を諳んじてるときも、木下ヒカルが一緒に口パクでつぶやいてたことに、この回で初めて気づきました(遅)

 

・「天才作家」である自らを含め、七人会全員を騙して混乱におとしいれたセフン(ヒカル)に対して、「許さない」ではなく「すごい才能だ!埋もれさせたくない」と目をギラギラさせながら言う木内ユン。根っからの文学者すぎて、ある意味彼も狂人と呼べる人なんだと思いました。だからこそ最後の最後、書くことを拒絶し続けたセフンに「書き続けろ」って言い残すんですよね…ユンさんいいキャラだよなぁ…。

 

・これは私の勝手な(妄想に近い)考えですが、ユンがセフンを「最初に会ったときからなんか気に食わなかった」のは、ユンもヘジン先生に友情以上の何かを感じてたからなのか…。表現の仕方が正しいかわかりませんが、セフンを直感的に【恋敵】と見なしてたのかなと。

 

セフンが初めてユンの前に姿を現したとき、その場にいた他の2人(スナム先生とファンテさん)は特に何も気にしてなかったんですが、ユンだけはセフンをじーっと見てたのも気になります。単に才能がありそうな若者だと思ったのか、何か別の嫌な勘が働いたのか…。

 

・投書騒ぎのとき、セフンが原稿を整理しながらユン【だけ】をチラッチラッと横目で見ていて、セフンもユンをすごく警戒してるのがわかりました。

 

あとセフンに文字を書かせてヒカルの手紙の文字と見比べるとき、ファンテさんが横から見ようとするとユンさんは「(筆跡が)違う」ってすぐ片付けちゃうんですが、あれはセフン=ヒカルって何となく勘づいたから?あの場でバレちゃうとさらに混乱しちゃうから隠したんですかね…?

 

・晴香ちゃん、特に2幕はどんなに海宝さんや浦井さんが壮絶な芝居をしようと、「無」に近い境地でいなきゃいけないんだと思いますが、感情が高ぶったのか涙がツーっと頬を伝ってました。言ってることは冷酷なのに涙を流していて、海宝セフンの内面のぐちゃぐちゃ感がそのまま出てて個人的にとても好きでした。

 

・この人、舞台上でこのまま演じながら本当に死ぬんじゃなかろうかトップ3:古川ヴォルフ、中村倫也ルートヴィヒ、浦井ヘジン先生←NEW!

 

浦井さんのお芝居、初日と前回観たときは、「すごいんだけど正直やりすぎでは…?」とも思ってたんですが、この回は感情表現がほんの少し抑え気味になっていて、全体的に緩急ついてて見やすくなってました。

 

前回実は気になっていた語尾の訛り?棒読みっぽい語尾の置き方?もなくなっていて、自分の中で感情のコントロールがきいている状態なのかなと。そしてカテコで突如若返るのが不思議すぎます…。

 

・キム・ファンテさんの「たとえ原稿は燃やしてしまっても、生きていればまた書ける」というセリフ(歌詞)が重たくて、今回1番心に残りました。どんなに美しい芸術も、それが生まれるのは命あってのことなので…。

 

ところでキム・ファンテを演じている畑中さん、完全に初見の役者さんだと思い込んでたんですが、プロフィールの出演作に「LUPIN」って書いてあってひっくり返りました。SNSの投稿画像をさかのぼったところ、古川ルパンとのにこやかなツーショットが出てきて、今2024年一番の宇宙猫顔をしてしまいました。ちなみに「NEWSIES」日本初演にも出演されていたそうなので、「ファンレター」までに確実に10回は観てました!大変失礼いたしました!

(でもプリンシパルキャストとしては初めましてなので…!)(無理やり)