Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.8.21 ミュージカル「王家の紋章」ソワレ公演:気高く哀しい新妻アイシス

王家の紋章」3回目の観劇。

 

この日の開演3時間ほど前。最寄り駅のホームでスマホを見て、目に飛び込んできたニュースの衝撃に膝から崩れ落ちました。

 

「古川雄大、コロナに感染。予定していたコンサートは全公演中止」

 

今からどんな気持ちで「王家の紋章」を観ろと???

(情緒不安定マン)

 

(あまり言い方はよろしくないですが)よりによって同じ日に、しかも開演前に、このニュースは聞きたくなかったというのが本音でした。

 

「海宝メンフィスを観ながら古川さんの心配しちゃいそうだなぁ」と一瞬不安になりましたが、全然別のことを考えながら観るのは、「王家の紋章」カンパニーに失礼だと思ったので、いったんこのニュースは全力で忘れることにしました(古川さんごめんなさい!!!!!)

 

幸いにもこの日は母と観劇。母は古川さんにはまるで興味なしなので、全く違う話題を話しながら開演まで過ごし、おかげで「王家の紋章」に集中することができました。

 

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この日のキャスト。なかなか良き組み合わせでした!あくまでも「歌」メインで考えるのであれば、海宝さん・平方さん・新妻さんは外せないと思います(※個人感)

 

やっぱりいたるシーンで「いやなんでやねん!」って思っちゃうんですけど、初見みたいな"虚無"を感じることはほぼなくなり、「これはこれで楽しもうフェーズ」に突入しました。楽しもうと決めたら徹底的に楽しめるのは私の強みです。笑

 

でも本当に、内容についての感想がまったく浮かばない…。作曲担当のリーヴァイ先生は、きっとアイシスイズミル推しなんだろうな、というのを、楽曲を聴きながら思ったくらいでしょうか…。笑

 

以下、キャスト別感想。

 

【メンフィス:海宝直人さん】

・何となく感じていたお芝居のちぐはぐさが消え、全体的に観やすくなっていました。それに伴って、観ている方が「うむ…なんか恥ずかしいな…」と思うこともなくなりました。ぶっ飛んだセリフや仕草に全くためらいがなく、「少年王・メンフィス」が板についてきたな~と。

 

・この作品でのメンフィスは、ファラオに即位したばかりという設定。周囲の人たちみんなが自分の言うことをなんでも聞いてくれるし、指図をすればすべてが自分の思い通りになることに、責任よりも愉悦を覚えていたんだろうなと感じました。

(ファラオ=神なので、おそらく今でいう「大統領」とか「首相」なんかよりも、よほど位が高いイメージなんだと思います)

 

だからこそ自分に歯向かってくるキャロルに対して、ムカつくというよりも「おもしれー女」になるのは無理ないのかもしれません(当初は女どころか「モノ」扱いでしたけど…)

 

この回の海宝メンフィスは、そのあたりの感情の動きがよく見えるようになってたと思います。少年王として即位し、周りを意のままにいろいろ動かすのを楽しんでる印象を受けました。

 

【キャロル:神田沙也加さん】

・「ダンス・オブ・ヴァンパイア」のサラ役で観て以来、2年ぶりに舞台上で拝見しました。サラもなかなかぶっ飛んだヒロインでしたが(風呂が好きなことしか覚えてない…)、「ぶっ飛びヒロイン」を演じるのが本当に上手だなと、今回神田キャロルを観て感じました。

 

・ディズニー映画での吹き替えをやってることもあり、ああいう「ちょっとデフォルメしたセリフ回し」が全く嫌味に感じないですし、歌唱は正直晴香ちゃんの方が好きなのですが、あの「ザ・ヒロイン」な声質は神田キャロル独自で色が濃くて良かったです。仕草や表情もいちいち「マンガチック」で、「マンガの中のキャロルの再現」としては、おそらく神田キャロルが「正統派」なんだと思います。

 

・勝手に初演から出てたと思ってたけど違うんですね…!?あまりにもなじんでるので、初演からの続投キャストかと思っていました。

 

・ぶりっ子みたいな仕草もするのに、観ていて全然嫌な気分にならないのは本当に強い。同性からも好かれるタイプの役者さんですよね。

 

・外部キャストとして、四季版「アナと雪の女王」にも出てほしいんですけど無理ですか!?!?!?

 

*上記は観劇直後に書いた感想です。まさか数ヶ月後、あんなに悲しい出来事が待っているとは予想もしていませんでした。ミュージカル界からまた1人、素晴らしい役者さんがいなくなってしまったことを本当に残念に思います。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

イズミル平方元基さん】

・平方イズミル本当にかっこええ!!!!!

正直他の作品の平方さんのビジュアルがあまり好みではなかったのですが(「エリザベート」のフランツとか)、イズミルは衣装もメイクもばちっとハマってました。

 

 ・イズミルはなぜかソロ曲が連続しており、2曲連続で同じキャラクターが歌うとなかなかダレそうなところを、そんな風に感じさせないメリハリの効いた歌い方で乗り切ってました。いや本当にかっこええ(大事なことなので2度書いておく)

 

アイシス新妻聖子さん】

・やっとミュージカル作品に出演されてる新妻さんを見られました~!これまではテレビやミュージカルコンサートで拝見していたので…。

 

・新妻さんはもともと原作の大ファンとのこと。初演・再演はキャロルとして出演され、再再演である今回はアイシス様としてのご出演。ご本人めちゃくちゃ楽しいだろうな~。

 

・意外だったのは、(私が観た印象だと)朝夏アイシスの方がメンフィスに向ける気持ちが重たそうだったこと。恋する女の重たいオーラがあると言うんでしょうか…。新妻アイシスは、あくまでも「自分は女王である」という前提があるので、メンフィスがキャロルに目をつけたときも、メンフィスが危篤状態になったと聞いたときも、目に見えて激しく取り乱したりはしていませんでした。

 

ただし人前では気持ちを押さえつけているぶん、1人きりになったときに発散する感情の大きさはとてつもなく、♪想い儚き♪は最初から涙ながらに歌い始めて、大サビは絶唱状態。すごい迫力でした。

 

・ということで、歌が本当にすごい(知ってた)冒頭でアイシスが歌う♪王家の呪い♪は、キャロルのみならず帝劇全体に呪詛の言葉を吐いてるみたいで怖すぎました。新妻さんご自身はわりと小柄なんですが、客席ごと飲み込みかねないスケールの大きさを歌で感じました。