Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.8.28 ミュージカル「王家の紋章」マチネ公演(東京公演千穐楽):古代エジプトへ、4度目にして最後の旅

4回目の「王家の紋章」。東京公演千穐楽でした。

 

さすがに4回も観たら、少なからず愛着が湧いた…!初見は「どうしよう…チケット取っちゃったけど、4回も観るのはなかなか厳しいな…」と思っていたのが正直なところでしたが、私がこの作品自体に慣れた(?)のと、カンパニー全体のクオリティがどんどん上がっていったので、その過程を楽しむという意味でとても興味深い作品でした。

 

ただ脚本はもうちょいどうにかしてほしい…………(切実)

 

楽曲は、ようやく耳慣れていくつかメロディーラインを覚えられたところで千穐楽になってしまって残念でした。CD出してくれないかな~。

 

東京公演千穐楽だったため、カーテンコールでの挨拶がありました。挨拶自体は、ライアン兄さんを除き、わりと真面目なトーンでした。が、スタンディングオベーションが鳴りやまず、4回ほど引っ込んだり出てきたりを繰り返すうち、どんどん小芝居が増えていったのが面白かったです。笑

 

海宝メンフィス、木下キャロル、大貫イズミル、朝夏アイシスがにこにこしながら手を繋いで横並びで出てきたり、舞台袖にはけるときに朝夏アイシスが華麗なターンを決めたら、その後に続く大貫・海宝・木下の3名が順番にその真似をしたり、大貫イズミルが木下キャロルを強奪しようとして海宝メンフィスが反撃して、最後は海宝・木下・大貫の3名で仲良くお辞儀してたりと、和気あいあいとした雰囲気でなんとも平和でした。

 

ちなみに帝劇1階席の最後列に初めて座ったんですが、すごく見やすいですね…?後ろに人がいないため、背筋をピンと伸ばしても大丈夫ですし、そもそも座席自体がその列だけ高めに段付けしてあるようで、前列の人の頭が舞台に被ることがありませんでした。仮に座高が高めの人が前に座ったらちょっとはかぶりそうですが、舞台全景が隈なくしっかり見えたので、最後列でも楽しめました。


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以下、キャスト別感想。

 

【メンフィス:海宝直人さん】

初日公演を観た時は、冗談抜きで「黒歴史になりそう………」とまで思ったんですが、回を重ねるごとに「海宝さんが目指すメンフィス像」と、「マンガの中のメンフィス像」がどんどん融合していくのが目に見えてわかりました。海宝さんがメンフィスを演じることを楽しんでる様子も、千穐楽ではしっかり伝わってきたので、本当に良かったなぁと(あくまでも観ている側の印象としてですが、それでも初日と千穐楽では明らかに違ってたもんなぁ…)

 

ディズニー作品で「アニメ→舞台」は経験されてますし…と開幕前は思ってましたが、さすがに45年前の少女マンガのぶっ飛びキャラを演じるのはわけが違ったんだろうな…。この役を経験したことでまた一回り大きくレベルアップされたのでは(保護者目線)

 

この回では「海宝さんノリノリじゃん…!」と思った瞬間がありました。それはキャロルが現代から再び古代エジプトに戻ってきて、メンフィスと再会したシーン。海宝メンフィスがにこにこしながら、木下キャロルの鼻を指でちょんってつついてて「少女マンガや…!!!!!!」ってなりました(注:少女マンガです)

 

初日公演ではいまいち感じられなかったキャロルへの愛を、この回ではきちんと感じられたのも良かったです。華奢な木下キャロルが折れるんじゃなかろうかというくらい、いたるシーンで力強くギューギュー抱きしめててほっこりしました。

 

逆にファラオとしての冷たさを感じたのが、墓荒らしをした嫌疑をかけられた人たちを自らの手で死罪にして、キャロルに責められるシーン。「なぜ申し開きもさせずに殺すのか」とキャロルに問われて、「定められた処罰だ」とメンフィスが返すのですが、そのセリフのトーンがゾッとするほど冷たくて…!なんの感情も込められてない【無】のトーンで、「こんなの当たり前なんだけどなんか間違ってる?」みたいな言い回しで背筋が凍りました。メンフィスが怒鳴るシーンや脅すシーンよりも、あの場面のあのセリフが一番怖かったです。

 

キャロルに似合う髪飾りを探してあげたのに拒否されて、挙句「これからは鉄の時代よ!」と言われたメンフィスが激怒して髪飾りを投げつけるシーンも、血管切れそうなくらいブチ切れてて良かったな…。あとキャロルを拉致られたときの「戦も辞さぬ!!!!!!」の激おこっぷりも…。

 

おそらく公演中にメイクが上達されたのでしょう。今回やっとこさ、海宝メンフィスがかっこいいと思えました(遅)(でもかっこいい!と思ったのが、キャロルを捕まえて品定めしてるシーンって我ながらどうなんですかね???品定めしてる横顔がとっても素敵だったんですけど…笑)

 

さて、これでリーヴァイさんが関係する作品にも縁ができたわけですし、そろそろウィーンミュージカルの楽曲、歌ってくれないかなぁ(支離滅裂なわがまま)

 

【キャロル:木下晴香ちゃん】

あまりにもかわいいので、メンフィスじゃなくて私の妃になってくれませんかね(やめなさい)木下キャロルも、初日公演よりずっとずっとず~~~~っと表情豊かで、動きも少女マンガのような大げさな感じが増えてました。手足がすらりと長いので、そういう動きがまた様になっていて素敵!

 

木下キャロルは、テンションが上がった時に声にならない嬉しい悲鳴をあげてるのがとってもかわいくて…。イムホテップ様が諸国の使者を連れてきた時に、いろんな人や物を見て、両手で口元を覆って「きゃー♡」って叫びそうになってたのが特に印象的でした!

 

イズミル:大貫勇輔さん】

カーテンコールでの挨拶を聞く限り、歌で相当苦労されたんだろうなと思いました。健闘はしていましたし、殺陣に関しては大貫イズミルは本当に素晴らしく、舞うような優雅さがありながら強さも感じました。

 

ただ総合的に見ると、平方イズミルが…!あまりにも強かったんだ…!!

(*あくまでも個人感です)

 

アイシス朝夏まなとさん】

歌は正直新妻アイシスに軍配が上がるかなと思いますが、個人的にキャラクターの表現としては、朝夏アイシスの方が好きでした。メンフィスに向ける気持ちが、空よりも高く、マリアナ海溝より深く恐ろしかった朝夏アイシス。新妻アイシスはメンフィスと2人きりの時だけ「女の顔」になりますが、朝夏アイシスはどんな時でもどんな場所でも、メンフィスに何かあればあからさまに態度に出すのが興味深かったです。

 

キャロルがメンフィスにビンタするシーン、ビンタされた海宝メンフィスの表情を確認したくてオペラグラスを構えていたのに、ビンタの瞬間、朝夏アイシスが失神しそうな勢いでふらふら~~っとナフテラの肩に倒れこんでいるのを見て、思わず笑ってしまいました。メンフィス強火担な朝夏アイシス様…。

 

朝夏さん、「ローマの休日」や「マイ・フェア・レディ」もそうですが、「ザ・ヒロイン」を演じられることもあります。でもアイシスを見てると、こういった闇属性のかっこいい女性の方が似合うのでは…と。元男役さんなのでおそらく低い声の方がきれいに出せると思いますし、すらりとしたスタイルなので、アイシスの衣装が全部似合ってましたし…。

 

 

他キャストだと、ナフテラ役の出雲さんが好きでした。4回観て4回とも安定感抜群。経歴を調べたら、お母さまが宝塚の役者さんで、出雲さんご自身も星組宙組・専科・月組と、かつて宝塚を支えていた娘役さんだったそう。キャロルに寄り添う姿が本当にお付きの人のようで、「たとえ時代が違っていても、この人なら信用できる・頼りになる」と、すぐにわかるような雰囲気が素敵でした。

 

次回再演になったとしても、よほど観たいキャストでない限り観ないとは思います。ただ、なんだかんだ言いつつ1か月間楽しませてもらいましたし、何より無事に全公演上演できて本当に良かったです…!