Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.08.11 ミュージカル「モーツァルト!」韓国版:逃れられなかった「影」

当時の私が、何を差し置いても(未見の「ミス・サイゴン」を差し置いたとしても)1番に観たかったミュージカル「モーツァルト!」。

 

東宝版の再演いつだよ〜〜と思っていたら、なんと韓国版の配信が決定!文字通り、飛び上がって喜びました(大ジャンプ)

 

韓国ミュージカルは非常にクオリティが高いと評判になっているのは知っていて、前から気になっていたのと、上演中の公演に日本語字幕を付けて配信してくれるという、超絶親切設計だったので、「見る」以外の選択肢がありませんでした。笑

 

ちなみに配信チケットは、3公演セットで買うとお安くなったみたいですが、1公演のみだと6000円とややお高め。ただしその価値は十二分にありました。

 

ちなみに韓国では「モーツァルト!」の後に「キンキーブーツ」や「グレート・コメット~」や「ウィキッド」などなど、個人的に「観たい」作品がラインアップされていて、コロナ禍でなければ行きたかったです。旅行先としても気になっているので(ハングル語全く分からないですけど←)

 

それにしても韓国のミュージカル俳優さんはみんなほんっっっっっとうに歌が上手い…!!声の出し方がブロードウェイやウエストエンドで活躍されている俳優さんのような、厚みのある声を出せる方が多いなと感じました。韓国の芸能ってすごくハイレベルな印象があります。競争を勝ち抜くのが大変なんだろうなぁ。

 

私が見た回のヴォルフガング役は、今回初キャスティングされたパク・ガンヒョンさんでした。「エリザベート」でルキーニを演じた経験があるそうです。もちろん見たことはないけど、なんかわかる…。

 

そして肝心の「モーツァルト!」自体は、初見だったこともあり、字幕追いかけるのも必死であまり深くは理解できませんでした。各キャラクターがみんな自分本位すぎて、誰にも共感できない(というのは「エリザベート」に似てる気がしました)

 

でも考察の余地がすごくありそうで、役者さんごとにキャラクターの捉え方とかガラッと変わりそうでした。さらにキャストの組み合わせによっても印象が変わりそうだったので、ハマると沼になりそうな演目でした。

あと楽曲にハマるとめちゃくちゃ好きになれますね!もともとウィーン版を愛聴していたので、そういった意味では大好きな作品です。私の中では「私は大好きだけど、他人におすすめはしません枠」に入りました。笑

 

ところで韓国語って、聞いている限りでは恐らく日本語の「つ」の音が存在しないようで、モーツァルトは「もーちゃると!」だし、コンスタンツェは「こんすたんちぇ!」って発音されてました。かわいい〜〜!!!!!

 

パク・ガンヒョンさんのヴォルフガングは、比較的凡庸な青年が、うっかりアマデという才能の化物を背負ってしまった印象でした。ヴィジュアル的に、スマートというより愛嬌がある感じだったからかも?

 

アマデがいなければ、きっと彼なりに幸せに生きられただろうし、レオポルドもヴォルフを愛せただろうし、ナンネールお姉ちゃんは弟に引け目を感じることなく、あくまでも当時の女性が可能な範囲ではあるけど音楽を楽しめたのでは、と思います。ヴォルフがアマデを抱えて生まれてしまったがために、引き裂かれるモーツァルト一家という印象でした。

 

ガンヒョンヴォルフで1番心に残ったのは、2幕の♪何故愛せないの?♪という楽曲。

「アマデじゃなくて僕を愛して!!」という、痛々しいまでのヴォルフの心の叫びが画面を通してこちらまで伝わってきてぐっと来ました。

 

一方♪破滅への道♪で、コロレドを全力で拒絶するパワフルな歌声もかっこよかったです!

(♪破滅への道♪めちゃくちゃかっこよくて大好き!「エリザベート」の♪闇が広がる♪もそうですが、クンツェ&リーヴァイコンビは男性デュエット曲が本当に素晴らしいです)

 

逆に1幕のガンヒョンヴォルフは実はあまり印象に残らず…。1幕ラストの♪影を逃れて♪、最後のオクターブ上げがうまくいってなかったのがやや残念でした…。

 

1番びっくりしたのは、♪ダンスはやめられない♪が持つ意味が、日本版と全然違ってたこと。

日本語歌詞だと【愛する人の力になりたいけど、元の自分の性分から享楽的に生きることもやめられない】という、コンスタンツェの葛藤を描いた歌だと思ってたのですが…。

 

韓国版歌詞だと、それまで家の中でも外でも日陰で生きてきたコンスタンツェが、「あたしの人生これからだぜ!!!」と力強く宣言してる印象で、謎の気迫を感じました。インスピレーション与える気ゼロ。笑

 

これ意味合いが大幅に違ってきますが、一体どちらが本来の意味に近いのでしょうか?ウィーン版の歌詞翻訳読めばいいのかな…?楽曲の終わり方は、韓国版とウィーン版が同じだったので、歌詞もそっちに合わせてるのかもしれないですね。

 

あと韓国版コンスタンツェは、私が見た回の女優さんは、正直あんまり華がなく、でもそれが日陰で生きてきたコンスタンツェという説得力がすごくありました。

 

2幕のアマデがめっちゃ怖かったんですが、あれは東宝版も同じなのかな。

(注:2021年東宝版を見ましたが、同じ感じの演出がつけられてました〜)

ヴォルフの首を締めたり、数々の不幸を呼び寄せる合図を出すのがアマデだったりで、若干ホラーな雰囲気もありました。アマデの子役ちゃん、ずっと無表情保ってますし。

 

ラストがまたとても悲劇的で…!

2幕ラストの♪影を逃れて♪で、曲が終わる3秒前くらいに、アマデとレオポルドが舞台の上手下手からそれぞれ駆け寄って、舞台中央で抱きしめ合うんですが、それを…ヴォルフが歌いながらただ眺めて暗転するんですよ…。

 

観た直後の私の脳内では、全く正反対の2つの解釈が生まれ、どちらが正解なのか悩みました。

 

1つ目はハッピーエンド。幼少の姿(アマデ)になったヴォルフを、レオポルドがハグ=最終的にヴォルフもアマデもレオポルドは愛した。

2つ目は、結局レオポルドが愛したのはアマデ(才能)だけで、あくまでも【才能の器】でしかないヴォルフは、最後まで愛せなかった。

 

後者だったらしんどいんですが、多分後者なんでしょうね…地獄みたいな終わり方だ…。

 

ところで♪影を逃れて♪、大好きな楽曲ですが、韓国版での歌唱シーンの演出を見て思ったことがありました。

あの歌はヴォルフ視点で見てるからアマデが「影」と呼ばれますが、韓国版の演出ではアマデが中心にいて、その周りをヴォルフとアンサンブルさんたちが囲っていました。ということは、アマデにとってはヴォルフが「影」なのかな…と。

 

韓国版の舞台機構はすごく複雑そうでした。ただの回る盆舞台なのかと思いきや、「ライオンキング」のプライドロックのように、上下にも可動する盆舞台でした。見応えありましたが結構ぐらぐらして不安定そうで、タイミングを間違うと役者さんが挟まれそうで怖かったです。

 

これはいつか本場で見てみたい…!「エリザベート」も、演出が個人的に好きになれそうなのがウィーン版と韓国版なので、こちらもぜひ生で観てみたいです!