今回が2度目の観劇となった「オペラ座の怪人」。ただし劇団四季版は初です。
じゃあ1度目はどこで見たの……?と思われそうですが、実は留学中、帰国前にニューヨークをふらっと訪れまして、ブロードウェイに行き、そこでチョイスしたのがなぜか「オペラ座の怪人」でした。あと「ウィキッド」も観たよ!!
正直「ウィキッド」が超・絶・素晴らしかったのと、当時の私にはそちらの楽曲と物語が心に響いたのと、「オペラ座の怪人」で私の目の前に座っていた老夫婦が、1曲終わるごとに熱烈なキスを交わすという、全然別の方向の衝撃体験をしたため、BW版「オペラ座の怪人」は闇の組織に記憶を抹消されたのかな???レベルで覚えておりません。
あと余談ですが、本当に初めて「オペラ座の怪人」を知った&観たのは、とある高校の文化祭でした。当時私は中学生で、高校3年生が演じる「オペラ座の怪人」(全編50分くらいの超短縮ver)を観たのですが、みんなびっくりするくらい歌も演技もうまかったです。あとラウル役の学生さんが小栗旬さんによく似ていた(どうでもいい)
ということで、実質初めての「オペラ座の怪人」。
ちなみに四季専用劇場ではなく、KAATでの観劇でした。専用劇場だったらシャンデリアとかセットがいろいろ変わるのだろうか。
座席は3階席の1番後ろ。でもセンターブロックだったのと、最後方だったので座面におしりをつけたまま、多少背伸びをしても許される感じで思ったよりも見やすかったです。
全体的な感想としては、楽曲はすごく好き。でもお話が全然私には刺さらなくて…。
終盤になるとすすり泣きがあちこちから聞こえてきましたし、隣に座ってた女性も泣いてましたが、個人的には泣くポイントがさっぱりわからず、困惑してる間に終演してしまいました。
みんなファントムがかわいそうで泣いてるんだと思うんですが………うーん、私にはどうしても「究極のかまってちゃん」にしか思えず。彼の魅力がつかめないままでした。生まれつき顔が醜くて母親からも愛されず孤独に育ったのはかわいそうだとは思うけど、だからと言って自分のわがままが通らないと人殺すって…そりゃあんまりだよ…と思ってしまいます。
クリスティーヌも終始ふらふらしてて、「あんたがそんなんだから悲劇が起こるんでしょーが!!!!!!!」って若干いらっとするし、ラウルもクリスティーヌの話をろくすっぽ聞かずに「クリスティーヌ!!!!結婚しよう!!!!!」とか猪もびっくりの暴走っぷりですし、カルロッタは怪人に負けず劣らずのかまってちゃんだし、オペラ座の支配人たちももうちょっと慎重に行動すればいいのにねぇとか思ったり。あとマダム・ジリーはさっさと怪人の素性を誰かに話すべきでしょ!?
とにかく登場人物誰一人として全く感情移入ができず(ってこれレミゼと同じやないかい)、さらっと観てしまいました。
ただし楽曲は本当に好みで、今回生オケで聴けて良かったです。特に私の大好きな♪Point of No Return♪が圧巻。♪The Phantom of the Opera♪も良かったですし、♪Think of Me♪、♪All I Ask of You♪、♪Masquerade♪などなど、どれも素晴らしかったです。
↑すさまじく撮影しづらかったKAATのキャスボ。
以下、キャスト別感想。
【ファントム:佐野正幸さん】
・立ち居振る舞いが美しい佐野ファントム。指の先の動きまで計算しつくされた、スマートな紳士でした。♪The Phantom of the Opera♪でクリスが歌ってる時、腰から顔に向かっての謎の撫で上げポーズをしていたのと、地下室の壁(?)に寄りかかってキメポーズとってるのはちょっと面白かったですけど。あれはきっと全ファントム共通なはずだから…佐野さんだけではない……はずです、多分。
スマートな所作とは反対に、子供が母親を求めるように、心の底から熱烈にクリスティーヌを求めているのがよく分かるお芝居でした。
・特に♪Point of No Return♪で、クリスティーヌがファントムとは知らずに色気たっぷりに迫ってくる場面。両手で自分の両膝をすごい力でぎゅってつかんでいて、必死に自制心を働かせてるような仕草が印象的でした。そのあとクリスに手を取られてからは、彼女の手を離そうとしないのが怖かったです(そこで初めて相手役がファントムにすり替わっていることに気づく山本クリスの表情も秀逸)
・前半がスマートなぶん、後半、特にクライマックスでクリスティーヌに仮面をはがされて地下室に彼女を連れ去るシーンから、それまでかろうじて秘めていた幼児性が表に出てきて、ラウルの首に縄をかけてクリスを脅すシーンで見せる、完全に支離滅裂な言動が怖かったです。
…と同時にこういう方法しか思いつかない、ある意味悲しい人なんだなぁとも思いました。あの仮面は自分の醜い容姿を隠す役割と同時に、自分の幼稚な部分、誰からも愛されずに成長してしまった心を隠す役割も果たしていたのでしょう。結局クリスティーヌにキスされて、言われるがままにラウルを解放するファントム。単純だよな~と思いつつ、本当に誰よりも純粋な人だったんじゃないかな…。クリスを手に入れるためにいろいろ恐ろしい策を弄ずるけれど、目的はただ1つ「クリスの愛が欲しい」だけですし。
・ところでファントムが求めていたのは、「女性」としてのクリスからの愛なのか、それとも「母」としてのクリスの愛なのか……もしかしたらファントムを演じる人によってここも変わるのかもしれないですね。佐野ファントムの感想、というよりファントムのキャラクターの感想になってしまいました。
・佐野ファントムは、歌声や話し方を聞いてると、時折ものすごく得体のしれない気持ち悪さを出す瞬間があって、「ノートルダムの鐘」のフロロー役としても見てみたいなと思いました。あの声で♪Hellfire♪をぜひ聴いてみたい。
・ザ・王道系ヒロイン。おそらく山本さんはベルやジャスミン、アリエルのような、いわゆる「自我が強いディズニープリンセス」よりも、運命に翻弄されるヒロインを演じたらドハマりするんだろうなと感じました。山本さんの他の代表作が「ウエストサイドストーリー」のマリアや、「ジーザス・クライスト=スーパースター」のマリアですし。
・クリスティーヌってキャラ的にあんまり…というか正直全然好きになれないんですが、たとえば山本クリスがぼーっとしてドジ踏んでも、「あらやだ、ごめんなさい♡」ってにっこりされたら許しちゃう(単純)
・あと冒頭のシーンで、旧支配人に「あの子はいつもどこか夢見がちな子でしてね」って言われたりとか、メグに「クリスティーヌしっかりして!」って一喝されたりっていうのがとてもハマる、ぽわぽわしたクリスでした。誰かが守ってあげないとふわふわどこかに浮いて飛んで行ってしまいそう。多分常に3センチくらい宙に浮いてる。目が大きいので、びっくり顔が特に良かったです。
・歌はいわずもがなうまい!!!!!♪Think of Me♪の冒頭で、ものっすごく自信なさげに歌うもんだから、そのあとのクリス覚醒モードがきちんと生きてました。
・♪All I Ask of You♪や、♪Wishing You Were Somehow Here Again♪も美しかったけどあまり印象には残らず。圧巻だったのはそのあとの♪Point of No Return♪(私が好きなだけですけど)歌も良かったですが、それよりもお芝居が良かったです。なにせ冒頭のぽやぽやクリスはどこへやら、流し目と口端をくいっとあげた色っぽいクリスに変貌するので、ファントム以上に私がびっくりしました。「ドンファンの勝利」でのクリスの役がそういうキャラクターだから当たり前なんですけど。これまではファントム→クリスだったのが、劇中の役どころも手伝ってクリス→ファントムの力関係になるのがたまらんですな…。ドンファン(ファントム)の背後から指を絡めて手をつないで離してもらえなくなった瞬間、「…はっ!!」っと目が真ん丸になるのが印象的でした。
・他にお芝居で印象的だった場面は2つ。
1つは♪All I Ask of You♪の前…だったと思うんですが、クリスがラウルに「ファントムに会ったのよ!!」って話すシーン。ファントムの容姿について話す時は心底恐ろしそうにしてるのに、「彼の声…」って言った瞬間にとろんとした表情になるところ。クリスは「リトルマーメイド」のエリック王子に負けず劣らずの声フェチなのでしょうか…。
もう1つはクライマックス、ラウルに連れられて地下牢から逃げるシーン。愛する人(ラウル)の命が助かって恐ろしい怪人から逃げることができるのに、うなだれるファントムを目を見開いて見つめる山本クリス。ラウルを解放したことや自分を逃がすことが信じられない…っていう表情に見えたけど、ファントムをただ心配してるようにも見えました。
【ラウル・シャニュイ子爵:光田健一さん】
・この年の4月にデビューした新生・光田ラウルでしたが、歌より何よりとにかく\\デカい//という印象。3階席の1番後ろの席から見てるのに、驚異の足の長さとスタイルのよさ。1階席から見たら足長すぎて違和感しかなさそうです…。クリスとのキスシーンは、光田ラウルがちょっとかがんでもわりと山本クリスがいっぱいいっぱいな感じでかわいかったです。笑
・お芝居に関しては正直、「ラウルってこんなに影薄かったかな…」と思ってしまうくらい、存在感があまり感じられませんでした。他のラウルを見てないので、もしかしたらこういうキャラクターなのかもしれませんが。佐野ファントムの気迫にやや押され気味だったので、ぼんやりしてるとクリス取られちゃうぞ~って感じのラウルでした。
【カルロッタ・ジュディチェルリ:河村彩さん】
・河村カルロッタの♪Think of Me♪、普通に聞きたいです…。
【メグ・ジリー:松尾優さん】
・とても可愛らしい俳優さんでした。光田ラウルとは反対で、3階席から見るとすごくちっちゃくて…!!クリスと友達の設定らしいですが、どちらかというとクリスを姉のように慕う妹キャラのようでした。
【マダム・ジリー :早水小夜子さん】
・私「美女と野獣」のミセスポット役で見てる気がするんだ…あの時は初めてのミュージカルだったので、キャスト表もらうとかキャスボ撮るっていう概念がなく…(ベル、ガストン、野獣はかろうじて役者さん覚えてるけど…)
・厳格な感じはマダム・ジリーのイメージにぴったり。歌の場面があまりなかったような気がするのでもったいないかなと。
また首都圏で公演があれば、1回くらい観に行こうかなという、レミゼと同じスタンスな作品に(私の中で)いったん落ち着きました。