Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.8.12 ミュージカル「ミス・サイゴン」ソワレ公演:あなたに「私」を永遠に刻む

ミス・サイゴン」2回目の観劇。


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所持チケットの中で、唯一の2階席の日でした。某プレイガイドで当たった席だったので席位置は全然期待してなかったんですが、B席の中では1番の良席でした(I列のどセンター)

 

今回は駒田エンジニア、高畑キム、上野ジョン、松原エレンがはじめましてのキャスト陣。駒田さんは「レ・ミゼラブル」、松原さんは「グレート・コメット〜」で観てるので、この作品では初でした。

 

私の捉え方の問題もあるとは思いますが、キムとトゥイの怨念がすごすぎて「呪い」を感じる回でした。なんか怖かった。ホラー映画なの?(違)

 

全体としては初見と変わらず、よくできた作品だなとは思うけれど個人的には全然刺さらないままでした。

 

以下、キャスト別感想メモです。

 

【キム:高畑充希さん】

・今回の私の感想がホラー映画か?になってしまった1番の要因:高畑キム。

 

・本当に本当に、ほんっっっとうに他の表現が思いつかなくて、こんなひどい表現でごめんなさいなんですが、高畑キムはたとえ戦争があろうがなかろうが、恐らく熱烈に好きな人とかに対して、メンタルが………になるタイプの人に感じてしまいました。

 

・とにかくクリスに対しての執念を感じる高畑キム。キムの目線に立てばそれは「愛」と呼べるのかもしれませんが、私から見ると愛を通り越して執着にしか感じませんでした。クリスはキムにとって運命の人ではあったけれど、同時に決して出会ってはいけない人だったんじゃないかなと(あくまでも高畑キムの場合は…ですが)

 

でもそれは、キムが目の前で自分の村を焼かれ、両親を焼かれ、仲間を焼かれ、愛するものすべてを失くしたからこその執着なのかもしれないと感じました。「あのときしっかり手をつかんでいたら、ひとときも離れず隣にいたら、大切な人を失わずに済んだかもしれない」という後悔が、彼女がひたすらクリスを求め続ける理由なのかもしれません。

 

高畑キムは、クリスがアメリカに戻ったとしても、彼が生きてさえいれば、そして自分が彼を想い続けてさえいれば、きっとまた自分の前に戻るはずだと、その希望だけを捨てずに生きてる印象でした。昆キムは「明るく希望を持ち続けてた」キムで、高畑キムは「暗い中で一筋の光から手が伸ばされるのを待ち続けていた」キムかなぁ(自分が受けた印象を言語化するのって難しいですね…)

 

・タムを産んだ後の昆キムには「母」を感じましたが、高畑キムには最後まで母性よりも女性としてのプライドを感じたのも、大きく印象が違うと感じた要因かもしれません。

 

・キムが最後にあのような行動を取ったのは、高畑キムだと「クリスに生涯忘れられない傷を残そうとしてる」ようにしか見えなかったです。というのも、タムを抱きしめたり愛おしそうに見てるとき、彼女はおそらくタムを通してクリスを見るような目をしてたんです。だから最期もタムのために、というよりかは「私はタムを通してあなた(クリス)を想い続けた。だから今度はあなたがタムを通して、死ぬまで私のことを見ていなさい」という意味で、自分の命を断ってクリス(とエレン)に呪いをかけたような印象でした。

 

・歌番組とかで拝見して思ってましたが、高畑キムは歌い方と声質がかなり独特。どちらかというと個人的にはあまり好みではないのですが、「ミス・サイゴン」のオリエンタルな世界観には合っていたと思います。

 

・正直他の役者さん(主にクリス)とのデュエットはあまり印象に残らず、逆に愛という感情を煮詰めすぎてドロッドロになってた♪命をあげよう♪には衝撃を受けました。あれだけの情感を込めてるのに、ずっと目が据わってるのちょっと怖かった…。

 

・お芝居も、表情はものすごくはっきりくるくる変わる感じではないのですが、私が高畑キムを見てこれだけたくさんの感想を持ったのは、彼女が伝えてくるものがとても大きかったってことだと思うので、上手い役者さんなんだろうなと。カーテンコールでも役が抜けていない表情で、客席ではなくうつむいてタムを見つめながらぼーっとしてたのもまた印象的でした。

ただし絶対に生娘ではなさそうな手慣れたキスは気になりました(真顔)

 

【トゥイ:西川大貴さん】

・高畑キムとの相性(?)が良いのか、キムとトゥイが似た者同士に見えて面白かったです。キムがトゥイを拒絶するのは、同族嫌悪的な感情からなのかと思いました。

 

・トゥイは登場するまでにかなりのエピソードがあるはずなのに、全部端折られた挙げ句、観客としては「なんかこの人いきなり出てきてキムの許嫁を名乗ってるぞ…?」と思ってしまうような立ち位置のキャラクター。あの場面に至るまでにものすごいドラマがあったのは、登場時の顔についた泥や傷、♪トンネルの中を抜けてきた♪みたいな歌詞でわかりますが…。

 

・♪呪うぞ〜♪という歌詞の通り、キムの運命はクリスではなくトゥイが握ってたのではと感じる回でした。サイゴン陥落でキムとクリスが会えなかったのも、キムの想いとは裏腹にクリスが勝手に新しいスタートを切っていたのも、キムがああいう結末を迎えたのも、すべてトゥイの呪いな気がしてなりませんでした。ラストシーンでは、トゥイからキムに渡った呪いを、キムがクリスに渡したようにも見えました。キムがトゥイの亡霊に怯えたように、クリスもきっとキムを助けられない悪夢を、これから何度も見るんだろうな…。

 

その他キャストは簡単な感想メモです。

 

【エンジニア:駒田一さん】

・続投キャストなだけあって、アドリブも混ぜつつそつなく楽しんでる印象でした。ただ個人的には、もう少しギラギラ暑苦しい感じの伊礼エンジニアが好みかもしれません。

 

・キムの「お兄ちゃん」としてビザをもらおうっていうのはなかなか厳しいのでは…。同じことは市村エンジニアにも言えそうですが。

 

【クリス:海宝直人さん】

・怒りや憤りの感情が初日より圧倒的に強かったのと、(少々下世話な感想ではありますが)キムとのイチャイチャが濃ゆくなってたのでびっくりしました。

 

♪サンアンドムーン♪は顔のみならず、首筋にも肩にもキスを落としていたのと、♪世界が終わる夜のように♪は、キスしすぎてなのか、息継ぎで2人とも息が荒くなる感じが妙にリアルで、見てるこっちが勝手に赤面してました(真顔)あれだけ愛されたらそりゃキムも忘れられないでしょうし、戻ってくると信じちゃうでしょ…と思える溺愛っぷりでした。エレンとは一度もキスシーンがないのがまた何とも……………。

 

・ところで♪神よ何故♪が全然しっくりきてないんですがなぜ…。帝劇コンで育三郎さんの歌唱を聞いて「すごい!」って思ったのは何だったんだろう…。育三郎さんの聞かせ方がうまかったのかな…?

 

【ジョン:上野哲也さん】

・Wキャストの上原ジョンがあまりにも濃ゆいので、上野ジョンも駒田エンジニアと同じく「卒なくこなしてる」感じが強い気がしました。今回一度きりだったので、もう一回くらい観たかったです。

 

【エレン:松原凜子さん】

・自分の気持ちとキムの気持ち、どちらも考えてぐしゃぐしゃになる様子がすごく良かったです。

 

・何のセリフだったか忘れましたが、クリスに対してキムのことをちょっとひどい風に言ったとき、思わず口から出てしまった後悔みたいな表情がにじみ出ていて、クリスのことを愛しているがゆえに、冷静な良き理解者でいようとするけれど、キムへの嫉妬もときどき暴発する感じがなんとも人間らしかったです(長)

 

【タム:藤元萬瑠くん】

・初見の上原タムよりもややお兄さんな藤元タム。4歳とは思えないくらい達観した顔をしていて、その子供らしからぬ雰囲気は、高畑キムの子供だなぁと思えた良い組み合わせでした。プレイガイド貸切回ということで、カーテンコールで駒田さんの挨拶がありましたが、じーっと前を見据えて聞いてたので(意味はほぼ理解してないだろうけど)あんなに落ち着いた4歳がこの世にいるのか…とそこで感慨深くなりました(保護者目線)