Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.7.31 ミュージカル「ミス・サイゴン」マチネ公演:戦火に咲いた愛のゆくえ

6年ぶりの再演となった「ミス・サイゴン」。


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2022年で日本上演30周年とのことですが、あまり再演はしていないイメージがあります。日本ではこれが6回目の再演らしいので、近年ほぼ2年ごとに再演している「レ・ミゼラブル」と比べると、なんだかレアな感じがしました。もちろん私もこの年が初観劇でした。

 

本来であれば、7月24日からプレビュー公演を行った後、29日に本公演スタート…のはずが、コ○ナの影響でプレビュー公演は全て中止。29日から上演されたものの、キャスト変更やイレギュラーな休演があり、図らずも海宝クリスと伊礼エンジニアのデビュー公演を観ることになりました。


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個人的にこの作品を観れば、いわゆる「世界4大ミュージカル」を制覇できることになっていたので、観てみたいなという気持ちはあったものの、作品自体に惹かれるとか、観劇前から好きな楽曲がある…というのは、正直特にありませんでした。

 

そして初見で観た感想としては、「ふーん…」というかなりそっけない印象でした。

 

役者さんたちはそろって素晴らしい歌唱力の持ち主で、楽曲はどれも素敵でしたし、演出も迫力があり、総じてとてもよくできた作品。と思いつつ「この作品を好きか」と聞かれたら、それはまた別だなと。

 

インパクトはあるんですが、なぜかあまり心に残らず、観劇後は重たい気持ちを引きずるんだろうと思ってたんですが、全くそんなこともなく、カフェで元気にパンケーキを食べておりました。笑

 

特にこの作品のテーマ曲ともいえる♪命をあげよう♪の歌唱シーン。音楽番組で耳にしたときは、歌唱している方が誰であれ、歌を聴いただけで泣いちゃいそうになってたので、本編で聴いたらさぞ号泣してしまうんだろうなと思ってたんですが、全然そんなことなかったという…(昆さんの歌唱は素晴らしかったです、言わずもがな)

 

こう表現するのは申し訳ないんですが、特に感銘を受けなかったというのが、初見の率直な感想です。

 

以下、簡単なキャスト別感想。

 

【エンジニア:伊礼彼方さん】

・この日初めてエンジニア役を演じていた伊礼さん。とはいえ、すでに何年も舞台に出ている方ですし、緊張しているような雰囲気もなく、初日にしてすでにこの役を楽しんでる印象でした。今回初めての「ミス・サイゴン」だったので、他の役者さんのエンジニアを知らずに観たのも、バイアスなく伊礼エンジニアを楽しめて良かったです。

 

・あのギラギラした雰囲気を醸し出すのは意外と大変な気がしますが、伊礼さんは濃ゆいビジュアルも相まってか、無理せず(?)自然にギラギラしていて、かなりはまり役な気がしました。

 

・タムのことを「アメリカ行きのビザを獲得するための道具」じゃなくて、普通にかわいがってそうなところが好きです。

 

【キム:昆夏美さん】

・今回3人のキム役の中で、唯一経験者である昆キム。クリスに出会う前からクリスと結婚するあたりまでは驚くほど幼く、タムが生まれてからは驚くほど「母親」でした。タムがどのタイミングで出てくるか知らなかったんですが、「あ、このシーンのキムはもう子供がいるんだな」というのが、昆キムの声や立ち居振る舞いでわかりました。

 

・もう凄まじいほどに歌がうまい。あんなに小柄で折れそうなくらい細いのに、どこから出るんですかその声量…。

 

・トゥイとの対峙シーンと、クリスがすでにアメリカで結婚してると知ったシーンが印象的でした。

 

【クリス:海宝直人さん】

・海宝さんが大人の役者として初めてミュージカルの舞台に立ったのがこの作品だったそうで、当時はアンサンブルだったところから、14年越しにクリスを演じているそうです。ご本人としても感慨深いんだろうな…と思いながら観てました。

 

・一般的に(?)「クリスはク〇」と言われるキャラクターらしいのですが、ひいき目なのか、海宝さんの演じ方が良かったのか、(確かにやってること・言ってることは部分的には都合いいなと思いつつも)別にそこまでク〇じゃなくない?というのが正直なところです。

 

ちなみに「いやクリス、それはさすがにちょっと…」と思ったのは、「キムとタムは香港に住まわせて、俺とエレンで金銭的援助をしよう」と歌うシーン。良かれと思って提案しているとは思いますが、そもそもそうなったのは誰のせいよ…。

(ジョンも「それは違うだろ」的ツッコミをしていたので、ツッコんでもいいんだろうなあれは)

 

・♪神よ何故♪ってあんな序盤で歌うの!?!?!?(初見ならではの驚き)この曲に関しては、2020年の帝劇コンでの育三郎さんの歌唱があまりにも衝撃だったので、まだそこは越えられてないかな…と。まぁ初日なので…。

 

・♪世界が終わる夜のように♪は、もちろんFNS歌謡祭での歌唱も素晴らしかったんですが、役に入るとこんなに違って聴こえるんだ!とびっくりしました。当たり前かもしれませんが、気持ちの入り方が段違い。♪不実なこの町~♪という歌い始めから全然違いました。

 

サイゴン陥落のシーン、ヘリコプターに乗りながらキムの名前を叫ぶ海宝クリスがすごく良かったです。ヘリコプターの爆音に負けずに叫ぶの大変そうだなぁ。

 

・2幕で、戦争中にあったことをエレンに話す(歌う)シーン、そういえば海宝さんが泣きながら歌うって結構珍しいやつ?と思いつつ観てました。珍しく歌唱がぶれるように聴こえた部分もあり、それが余計「あの海宝さんの歌がほんの少しだけブレた!?」という部分で驚いたのと、芝居歌としてとてもグッとくる歌唱だなと思いました。