Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.6.19 劇団四季「ノートルダムの鐘」マチネ公演:大事に守る花嫁のように

ノートルダムの鐘」、念願の金本カジモド回を観劇しました。


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なんと前回観劇回からプリンシパルキャストが全員変更になっており、村フロロー、神永フィーバス、高橋クロパンも初見でした。また新たな印象の「ノートルダムの鐘」が観られそうだなと、わくわくしながら観劇してきました。

 

この回で「ノートルダムの鐘」通算10回目の観劇だったんですが、「初見か?????」レベルでおいおい泣いてしまい、久々にマスクがびしょびしょになって、終演後にトイレに駆け込んで取り替える始末。金本カジに泣かされました。

 

席は3階席センターブロックの後ろから2列目。KAATの3階席は手すりが邪魔なことをすっかり忘れておりました…。この回は先行販売で確保してたチケットを手放して、開幕後に取った席だったので仕方ないんですけど…。

 

とはいえ、開演してしまえばすっかり作品にのめり込めましたし、2幕なんて「手すりあったっけ?」ってくらい没頭して観られたので問題ありませんでした。隣の席のおばさまが信じられないくらい落ち着きない方だったのでイラっとはしたものの、没頭できたおかげでおばさまの存在は途中から忘れ去ることができました。笑


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音響はやっぱり2階・3階の方が良い気がしました。特に1幕ラストの♪エスメラルダ♪で、主旋律じゃなくて下ハモ(裏で動いてる旋律?)がよく聴こえたのは個人的に収穫でした。「あ、こういうメロディーラインもあるんだなぁ」って思えたので。

 

あとはもう何回観ても「本当によくできた作品だな…」の一言に尽きます。ミュージカルの良いところと、ストレートプレイの良いところを一緒くたにしたような作品ですし、作品自体に力があるのをひしひしと感じます。もちろんその作品を作り上げている人たちが、四季の中でも指折りの実力者だから、というのもあると思いますが。

 

以下、キャスト別感想です。

 

【カジモド:金本泰潤さん】

・2018年の横浜公演にもいらっしゃったはずなんですが、本当に縁がなさすぎてデビューから4年経ってやっと観られました。そして「なんでもっと早く出会えなかったのか…」と悲しくなるくらい、とっても素晴らしいカジモドでした。

 

・全体的に重たさを感じさせる、どっしりとした動きは飯田カジモドを彷彿とさせました。個人的に少しだけ苦手に感じている飯田カジモドの「あざとさ」を、完全に抜いたのが金本カジなので、総合的に見ると彼の演じ方の方が好みでした。海宝カジモドを抜いた4人のカジモドの中では一番好きかもしれません(山下カジモドは未見です)

 

・これは感覚的にそう感じたまでですが、「カジモド」という役をとても大切にしているんだろうな、というのが、彼のお芝居全体から伝わってきました。どこの仕草が、とかどの楽曲の歌唱が、とかではなく、カジモドを演じている金本さんを観ていて、この役への愛を感じました。

 

・カジモドは空想の世界と現実を行ったり来たりするときに、声の出し方が少し変わりますが、金本カジはかなりシームレスに、うまく切り替えてたように思います。

 

・♪陽ざしの中へ♪は、歌唱はもちろん素晴らしかったんですが、それ以上にこちらの想像を掻き立たせるような歌い方が素晴らしかったです。

 

歌い出しの♪石の壁に隠れたままで~♪からしばらくは、本当に大聖堂のてっぺんの暗い部屋の隅で、ひとりごとを呟くような歌い方なんですが、♪みんなと一日過ごせたら どんなに素敵だろう~♪あたりでメロディーも明るくなってくると、部屋の中でも明るい陽の射す部分に移動して、サビの♪夢がかなうなら~♪からは、バルコニーに出て外に向かって歌いかける、というように、カジモドがどこで歌ってるのかを、歌い方で表現してるような印象を受けました。

 

♪陽ざしの中へ♪は、要するにカジモドの「大きなひとりごと」の歌なので(と言ってしまうと、フロローの♪地獄の炎♪もエスメラルダの♪神よ救いを弱きものに♪も大きなひとりごとなんですけど!)、どちらかというと「心情の移り変わり」の表現に重きが置かれそうですが、金本カジは不思議と(お芝居として本当に部屋からバルコニーへと場所を移してるわけでもないのに)彼が歌っている「場所」自体がどんどん変わっているように感じられました。

 

・金本カジの素晴らしき♪陽ざしの中へ♪を聴いた私の胸中。

「これは良すぎる早く2幕で♪石になろう♪が聴きたい」(鬼)

 

・本当に澄んだ声質でした。透明感があるというかなんというか。いわゆる男性の低音を活かした「美声」じゃなくて、声自体が美しいと言えばいいのか…(表現が難しい)

 

・金本カジはことあるごとに自分の頭や腕、胴を自分で激しく叩いて「罰していた」ので、フロローが普段から「悪人は罰を受ける」と、ひたすらに教え込んできたんだなと、観ていて悲しくなりました。

 

フロローに「お前の父親のように」と言われるシーンでは、「父さん…!」って言いながら、自分の身体をたたくのはまだしも、自分の頭を手すりにぶつけてて(ちなみにさすがにダイレクトにぶつけてたわけではなく、恐らく自分の手を手すりに置いて、そこにぶつけてました)あまりにも自傷行為がひどくてびっくりしてしまいました。

 

・金本カジはおそらくカジ役者の中では一番背が高い(?)ので、あの身をかがめた姿勢を保つのがより一層大変そうでした。

 

・♪世界の頂上で♪の前、それまではエスメラルダと話すのもおどおどして恐怖心が勝ってるんですが、エスメに「あなたのお友達、好きよ?」と言われて表情がぱぁっと明るくなってたのを観て、私が涙ぐみました…。

 

・飯田カジのようなあざとさはなく、寺元カジのような少年っぽいキラキラもないので、(こういう表現はどうかと思いつつ、あえて言うのであれば)「異形の者」っぽさはすごく強かったように思います。

 

エスメラルダがフロローにカジモドのことを伝えるときに「彼は立派な大人よ」という表現も金本カジには非常に合っていて、身体に障がいを持っている以外はごく普通に発達しているけれど、社会と隔絶されてフロロー(とガーゴイル)とのコミュニケーションしか知らないがために、心の発達は未熟なまま。カジモドの特徴でもあるそのアンバランスさが浮き彫りになるような印象がありました。

 

・今回一番、そして唯一号泣したのが、2幕のクライマックスのシーンでした。

 

溶けた鉛の釜を見つけた金本カジが、あの大混乱の中、1人静かに十字を切った、その背中を観て、一瞬にして何とも言えない気持ちになって涙が止まらなくなりました。あの鉛をひっくり返すという行動に関して、彼は「罪深いこと」だと捉えていて神に赦しを乞うているのかと思ったのと同時に、そこまでして彼はエスメラルダを助けたいという覚悟を持ってたんだなと思い、カジモドの愛の大きさに泣きました。

 

あの行動によって傷つく人がいることに対しても「ごめんなさい」という気持ちで十字を切ってるのかなと思ったんですが、ずっと自分を守ってきてくれたノートルダム大聖堂に、少なからず被害が及ぶことに対する謝罪も含まれてるのかなとも思ったり。とにかくあのシーン、あの仕草をした金本カジの背中に泣かされました。あの場面で十字を切る仕草するカジモドは初めて観たんですが、他のカジ役者さんたちもやってたんでしょうか…。

 

・カーテンコールで舞台奥にはけるとき、背が高いので奥までいっちゃうと2階・3階席からは彼の上半身が見切れちゃうんですが、それをわかってるからか、ちゃんとひょこっと身をかがめて、最後まで3階席まで顔が見えるように手を振ってくれて、え、いい人すぎる~~~~~~(全力で手を振り返す私)

 

【フロロー:村俊英さん】

・こちらも今回やっとこさ観られた村フロロー。アニメ映画の吹き替え版を担当していた、いわゆる「元祖フロロー」です。ご本人も、まさかミュージカル版で同じ役を演じるとは思ってなかっただろうな…(というかいまだ現役で役者やられてるのがすごい)

 

・村フロローは、正直ちょっとつかみどころのないキャラクター像に感じられました。感情が全然顔に出ないんですよ…!初演(秋劇場)のドライな野中フロローを思い出しました。「ジーザス・クライスト=スーパースター」の村ピラトは、ジーザスの気持ちも汲んでやりたいけど民衆の押しの強さに負けちゃう、あの板挟みになって苦悩する歌と芝居が印象的だったので、フロロー役はあえてこういうお芝居にされてるのかな…。

 

・セリフの間合いも全体的にあんまり取ってなかった印象でした。特にエスメラルダに「わかってるの。私を見るその目」と、自分の下心をズバリ言われて激昂するシーンでは、他役者さんのフロローは、言われたことに対してちょっと間合いを取って怒り出すんですが、村フロローは速攻反応するので「あれ?」とちょっと不思議に感じました。

フロローがそんなことを言われたのって、これまでの人生でおそらくなかったと思うので、一瞬「……!?」ってなるんじゃないかなと、個人的には思うのですが…。

 

・というわけで、狼狽したりうろたえる様子があまり感じられず、エスメラルダに狂わんばかりに惹かれているという様子も感じられなかったため、自分の欲望のためというよりかは「秩序を乱すあのジプシーを始末せよ」な雰囲気が強く感じられたのと同時に、「あれ、フロローってもしかして正しいことしてる?」と、ちょっとでもこちらに思わせるような芝居になってるなと思いました。

 

・あまりにもポーカーフェイスなのは、あるときからずっと神に仕えてきて、一切の欲を排してきた結果、ついぞ「何も感じない人間」になってしまったんじゃないかとも思いました。喜怒哀楽すら捨て去ってしまったような印象を受けたので。とはいえ、対カジモドのシーンではまるでお父さんのような温かさは感じられたので、完全に心を捨てたわけではなさそう。

 

エスメラルダ:岡村美南さん】

・秋劇場ぶり…なので、なんと5年ぶりの岡村エスメ!!!!!岡村さんは2年前のMM!で観てるのでそこまで久々ではなかったけど、2018年の「ノートルダムの鐘」横浜公演では観られなかったので…。相変わらず「最高の美女」っぷりを見せてくれました。

 

・岡村エスメは姉御肌強めな印象がありましたが、今回は特に一幕はセリフのトーンを高めに発しているように感じました。意図的に少し年齢を下げて見せてるのかな?と。

 

・神永フィーバスとのツーショットはとにかくビジュアルが強!!!!!!身長差もちょうど良くて、美男美女でした(拝)

 

【フィーバス:神永東吾さん】

・今回の横浜公演でデビューした神永フィーバス。そういえばフィーバスってみんな韓国ご出身の役者さんのような。体格が良くて背丈も十分あってとなると、なかなか日本人役者さんは難しいんでしょうか…(と、思っていたらその後、加藤迪さんがフィーバスデビューされました)

 

・神永フィーバス、登場時の陽キャパリピっぷりが面白すぎて、必死に笑いをこらえる羽目になりましたw色男と呼ばれて「ありがとう!」と返すセリフに合わせ「ちーっす!」みたいなポーズをしたり、女の子を膝の上に乗っけて両手でその子の太ももをぱーんぱーんと叩いたり、\FOOOOOO!!!!!!/と奇声を発したり。面白すぎました。ここキャッツシアターじゃないんよ(真顔)

 

とはいえ、あのくらい「わざとらしい明るさ」で振舞っているので、心の傷は相当深いんだろうなというのは感じられました。が、それにしてもちょっとパリピすぎるのでもう少し抑えめでも良いのでは…(個人感)

 

・「アナと雪の女王」のクリストフ役でも思ったんですが、セリフを怒鳴りぎみに話されるのがちょっと気になるような。声質でそう聞こえてしまうのか、言い方なのか、全部「怒」に聞こえるんですよね…。特に2幕の奇跡御殿のシーンは、もう少し抑揚が欲しいなぁと。

 

【クロパン:髙橋基史さん】

・髙橋クロパンはこの週にデビューされました。ビジュアルがとっても素敵なクロパン!阿部クロパンほど癖はないですし、吉賀クロパンほどのどっしり感もないんですがど、アニメ版クロパンにちょっと似てるかなぁと思う部分がちらほらありました。

 

道化の祭りのシーンも、結構テンション高め。しかし阿部さんは退団されてしまいましたし、吉賀さんは他作品にも引っ張りだこなので、クロパン全然足りてなくない!?

 

心に残る公演がまた1つ観られて大満足でした!