Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2018.8.18 劇団四季「ノートルダムの鐘」:新キャストが吹き込む新しい風

 

いよいよ本格的な観劇ヲタクと化した2018年夏。

8月中旬~9月にかけて、前代未聞の7週連続観劇がスタートしました。笑


まずこの日は「ノートルダムの鐘」横浜公演のMy千秋楽。大好きな清水フィーバスには会えずじまいでしたが、この回で初めましての川口フロローと相原エスメラルダを観ることができました!
 


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特定の誰かが、というわけではなく、全体的に皆さんややお疲れなのかしら…という雰囲気を感じた公演でした。一斉に歌う部分やセリフが、どうも上手くハマってなかったような…。ロングラン公演だと、常に最上級を保つのは本当に難しいんだなと感じました。

 

以下、キャスト別感想です。


【カジモド:田中彰孝さん】

・うーーーーん、微妙に歌声が苦手………かもしれないなと思いました。東京公演で観たときには、そんな風に思わなかったんですけど…。


・お芝居も非常に「陽」の印象が強く、カジモドが持っているある種の悲壮感が、私にはあまり感じられませんでした。どちらかというと田中さんの代表作(?)である「ライオンキング」のシンバ役で見てみたいな…と。

 

・仕草も、他のカジモド役のお2人よりも、細かい仕草をされていないような気がしました。あえてそういうお芝居の仕方を選ばれているのかもしれませんし、「目に見えて分かる障がいだけが、カジモドというキャラクターを表現してるわけじゃない」といった意見も見かけました。でも個人的に思っているのは、そもそもカジモドは【見た目】が普通の人と違うがゆえに隔離されたり、いざ人前に出たら虫けらのような扱いを受けるので、「見た目の障がいが重たいこと」ってすごく重要だと思うんですよね…。

・田中カジモドの演技で好きだったところ。けがをしたフィーバスと、エスメラルダを探しに行くのにどっちが行くかケンカするシーン。「そっちこそ、ろくに歩けないよね!」とか、フィーバスに対するセリフが完全にふてくされてて可愛かったです。笑


・クライマックスの対フロローのシーン。♪元通り仲良~く 暮らして~ゆけるだ~ろう~♪と歌う、完全にネジ飛んじゃってた川口フロローを見た田中カジモドの表情が、(ご主人様が狂ってしまった…)みたいに呆然していて印象的でした。あの様子だと、田中カジモドは最終的に怪物と成り果てたフロローと暮らすより、エスメを守って死ぬことを、あの瞬間に選んだんじゃないかと感じました。



エスメラルダ:相原茜さん】

・全体的な印象としては、とにかく「気が強い」。そして正直これ以外の印象があんまりありませんでした。「エスメラルダはヒロインじゃない」っていうのが、今作の演出の方向性だそうですが、それを意識しすぎているのか、ずいぶんトゲトゲしい感じがしました。フロローぶん殴ってフィーバスと駆け落ちしそうだったな…。

 

・とげとげしさを一番顕著に感じたのが、♪神よ 弱き者を~♪の歌い出し。岡村さん・宮田さんだと「あなたは今そこに いるのですか」と、厳かに問いかけてたり、切実に訴えたりする感じでしたが、相原エスメラルダは(言い方が悪いですが)「神様なんてホントにいんのかよ!?!?」みたいな、ケンカ売ってるのかな…と思うくらいの静かなキレっぷりを感じました。ちょっと濃いめのメイクも相まって、余計そう見えてしまうのかもしれません。

・ダンスはダイナミックさを感じて好きでした!♪タンバリンのリズム♪の、♪パッと揺れる~スカート♪の後の足の上げ方が好き(細かすぎるツボ)



【フロロー:川口竜也さん】

・私が「ノートルダムの鐘」を観劇していない2か月の間に、史上最凶フロローが誕生していたようです…。村フロローは未見ですが、少なくとも芝フロロー、野中フロローとは全く違う、解釈としてかなり斬新、かつ素晴らしいフロローでした。演じている期間としては一番短いはずなのですが、この方はどれだけこの役を研究して向き合ったんだろうと思わずにはいられませんでした。この日はとにかく川口フロローから目が離せなかった…。


・冒頭、弟・ジェアンの死の直前からカジモドを投げ捨てようとするところまでの一連のシーン。おそらく今まで見たフロローの中で、一番弟に甘いフロローでした。ジェアンを疎ましく思うことなく、自分と血を分けたたった1人の存在として、ありったけの愛を注いでるんだなと。ジェアンからカジモドを受け取って、初めてカジモドの顔を見たときも、そこまでショックを受けてるようには見えず、うっかり「ジプシーの子だ!」って言ってしまったことすら後悔していそうでした。


そのあとカジモドを抱えてうろたえる場面では、何と川口フロロー号泣してました(呆然)でもよくよく考えたら、たった1人の家族を失ってしまったんだから、たとえ聖職者であってもそういう時くらい人間らしくなるよなと、すごく納得できました。芝フロロー・野中フロローだと、「こんなおぞましいモノを一体どうしたらいいんだ」って焦りが見えましたが、川口フロローはわーっと感情が高ぶって思わず投げ捨てそうになる印象でした。


・カジモドに接する態度は意外にもやさしく、ちゃんとフロローにとっては甥っ子なんだな、というのがよく分かりました。ただこの「やさしさ」の印象が、のちに大きなギャップになって襲いかかるのですが…。

エスメラルダと最初に会話を交わすシーンも、余裕がある印象でした。ドギマギすることなく、嫌味すら微笑みながらさらっと言う感じ。


エスメに同棲を迫るところ(って書くと変な感じだけど、それ以外に形容できないので。笑)は、完全に下心が見え見え。あわよくばエスメの手を握ってやろうっていう魂胆が、エスメの手を追いかけて、手すりの上をするするっと滑る手の演技で明確にわかりました。ちなみにこの後、自分を邪な目で見ているとエスメラルダに指摘された川口フロローは、「いきなりそのテンション!?!?」とびっくりするレベルのブチ切れ度でした。客席の半数は飛びのいたに違いない(含む私)


・カジモドに「エスメラルダと二度と会わないように」と説教するシーン。川口フロローが怖すぎて、私がカジモドだったら逆に脱走するレベル。カジモドの頭を両手でわしづかみにして、おでこをくっつけんばかりに近づけて「約束しろぉぉぉぉ」(1000デシベル)(本当に怖かった)


・♪地獄の炎♪は、声質・声量ともに私が勝手に思い描いていた理想の歌い方をされていて、恐怖を通り越して感動するくらい素晴らしかったです。歌っている間の仕草はわりと最小限でしたが、表情が完全にヤバイ人のそれになっちゃってました。時折歌舞伎の見得をきるような、目をひん剥いた表情をしてて、エスメラルダ…全力ダッシュで逃げてくれ…って思いました(無理)


エスメラルダに襲いかかるシーンもなかなかすごかったです。泣きながら「憐れんでくれ!!!私は自分を見捨てたぁ!!!」とか言われてもエスメ困惑するしかないじゃん…。「愛してくれぇぇ!!」のところも、押し倒した後にさらに「愛してぇぇぇぇ」ってすがってて心底ゾッとしました。退場するときは、エスメラルダに叩かれたところを、エスメラルダのスカーフで抑えながらふら~~~っと出ていくという…もはやホラー…。


・川口フロローが一番ヤバいともっぱら噂だったエスメラルダの火刑シーンは、本当にヤバかったです(語彙力)エスメラルダにかけられた唾を指でぬぐって、その指舐めてたんですけど…。もうただの変態ですよそれ(真顔)


・すさまじいインパクトを残した川口フロロー。今後またこの作品を観る機会に恵まれたら、是非とも見たいです…!