Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.5.27 劇団四季「ノートルダムの鐘」マチネ公演:横浜の空に再び鳴り響く鐘

 \鐘を今打ち鳴らせ~~~~~~~~~~~~~~~~/

 

ということで、待ちに待った「ノートルダムの鐘」横浜公演を観てきました。


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本来であれば2021年の1月、大井町の四季劇場夏で再演予定だったのが、コロナ禍の影響で中止に。その前にやっていた地方公演には足を運んでいなかったため、前回の横浜公演からなんと4年もの月日が流れておりました(驚)

 

ちなみに振り返ってみたら、なんとちょうど4年前の全く同じ日に、横浜公演を観ていました。なんという偶然。

 

4年ぶりですし、その間ほとんどサントラも聴いておらず、復習のためにサントラ聴こうかなと思ったんですが、カジモドとエスメラルダが未見のキャストさんだったのと、記憶がある程度薄れている方が新鮮味を感じられるかと思い、あえて何も復習せずに観ました

 

やっぱり「名作」だな…(しみじみ)

 

自分の好きなミュージカルって、基本的に「まぁ私は好きだけど、別に他人には勧めないです」という作品が多いんですが、「ノートルダムの鐘」(と「アラジン」)は誰にでも勧められますし、機会があればぜひ観てほしいなと思います。これほどまでに、物語にも楽曲にも魅了されるミュージカルって他にないです。

 

エリザベート」や「モーツァルト!」は楽曲が大好きですし、それぞれのキャラクターの描き方に興味深さはありますが、なにがしかのメッセージを訴えかけてくる作品ではなく、あくまでも「娯楽作品の最高峰」という認識です(*個人の感想です)

 

それを考えると「ノートルダムの鐘」はとにかく濃密なミュージカル。ぼんやりしている暇を一切与えない情報量の多さに加え、全身で受け止めざるを得ない歌声の迫力。2022年初の四季作品観劇でしたが、やはり四季は「1つのチームで長く演じていること」の強みがあるなと、改めて感じました。


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全体的な感想としては、主に役者さんを観て思ったことですが、初演から出てる役者さんがキャラクター像を深堀りして作り上げているのに対して、再演以降に出演している役者さんが、ややそこに追いつけてない印象を受けました。特に野中フロローが「濃ゆい」お芝居をされてたので、「これってカジモドが主役なんだよね?」と感じてしまうくらい、フロローの存在感が強めでした。

 

それでも観劇後の満足感は120%でしたし「今年は後半に『エリザベート』があるから、この作品は月イチ観劇に抑えておこう」と思ったんですが、やっぱり時間とお金が許す限りは観たい…と思いました。結局増やせなかったんですけどね…(涙)


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以下、簡単なキャスト別感想。

 

【カジモド:寺元健一郎さん】

・あまり事前情報を入れずに観た寺元カジ。フィーバス隊長の副官・フレデリックを演じていたことは知ってましたし、おそらく観たことがあるはずなんですが、残念ながら私はアンサンブルさんに目を向けるほどの余裕がない人間なので………。

 

登場時の印象は「めっちゃ若くない!?」だったんですが、調べたら2022年に35歳になられてました(驚)2019年に四季に入団され、それまではアンサンブルさんとして活躍されていたとのこと。

 

・印象としては、田中彰孝さんのカジモドに1番近いものを感じました。

 

・フロローに対する従順っぷり…というより、もはやあれは服従な気もしたんですが、地面に頭つけてる…?という瞬間が何度もありました。フロローの機嫌に振り回されてるカジモドで、野中フロローとの組み合わせは観ていて1番しんどいペアだったかもしれません。

 

・顔は歪んでいても屈託のないかわいらしい笑顔で、とてもピュアな印象だったので、後半でズタボロになっていくのが辛かった…。外の世界で人とかかわることによって感情を知って、最後は愛ゆえに「怪物」になって主人を手にかける、というその流れの悲惨さがすごく伝わってきました。

 

・寺元カジを観ていていいな!と思ったお芝居がありました。カジモドが道化の祭りで民衆にひどいことをされるシーンで、自分の身を守るためにカジが民衆の1人を投げ飛ばすんですが、その直後に自分の手を見つめ、心底ショックを受けた表情をしてたんです。

 

カジはこれまでフロロー以外の人間には会ったこともないし、フロローに対して暴力を振るうことももちろんないので、「自分は強い」と言いつつ、自分の力がどれほどのものかは知らなかったんだろうなと、この一瞬の芝居で全部伝わってきたのが印象深かったです。これまで観劇してた中で、少なくとも私は見たことのない芝居でした。

 

・最後のカジの顛末の語りのシーンで、寺元カジは訥々と語るというよりも、ふわっと穏やかに、ちょっと微笑んだような表情で、「彼はこれで良かったんだ」と思っているような雰囲気が好きでした。

 

誰がどう見てもバッドエンドな今作。でもカジモドは初めて人を愛することができて、その人を結局守ることはできなかったけれど、自分の命を燃やしつくしてまでそばにいて、生涯を全うできたんだから、カジモド視点で見ればもしかしてハッピーエンドと捉えることもできるかもしれないと、初めて思うことができました。

 

・楽曲は♪陽ざしの中へ♪が1番良かったです。「陽」の質を持った声だったので楽曲の雰囲気に合っていました。

 

【フロロー:野中万寿夫さん】

・再演を重ねるごとに、どんどん激情型になっていく野中フロロー。初演はもっと内に秘めたお芝居だった記憶があるので、当時は比較的ドライな印象を受けましたが、今回はもうなんか色々溢れ出しすぎてて、あまりにも「ザ・人間」でした。

 

・野中フロローの芝居が濃ゆかったこともあったからか、「ノートルダムの鐘」の主役ってフロローでもあるよなと感じた回でした。「手を出してはいけない、それ以上踏み込んではいけない」と分かっていながら、誘惑に勝てずに引くに引けないところまでいってしまう、人間の性(さが)を1番よく表してるキャラクターですし、一見すると「聖人」ですが、中身はどろどろといろんな感情が渦巻いていて、見方を変えたら彼が最も観客に近しいキャラクターなのではないかと思いました。

 

・カジモドへの当たりが最初から強くて、完全に「しつけ」になってしまっていました。芝フロローには愛があるけど、愛し方を知らない人だなという印象。一方野中フロローはそもそも愛を知らない印象です。

 

「愛」というのは、「神が人に与える慈悲の心や思いやり」という意味での愛しか知らず、カジモドに対しても「育ててやっている」「守ってやっている」というスタンスが強めに感じられます。「ときどき息子のように思うよ」という言葉も、さすがにこの長い年月一緒に暮らしていたら愛着が湧いただけで、本心からそう思ってるかは謎ですし、そうカジモドに伝えることでまた自分への依存を強めようと思っていそうでした。

 

・野中さんは声が太いという感じではないので、それを逆手にとってうまく活かした♪罪の炎♪が好きです。歌詞がセリフっぽくなるんですよね。

 

エスメラルダ:松山育恵さん】

・前回の横浜公演ではお目にかかれず、4年越しにやっとこさ観られた松山エスメ。妖艶さはそこまで濃く感じられず、ちゃきちゃきと元気よく踊ってる印象でした。

 

・過去に観てきた3人のエスメは、どこかしらで「女」を武器にしてる印象があったんですが、松山エスメはそれがあまりなさそうで、ある意味とてもピュアでまっすぐなエスメでした。誰よりも純粋な女性なので、2幕終盤のフロローとの牢獄のシーンで「どうしてあたしなの?」という問いかけに、「そりゃそう思うだろうなぁ」(=本人にそういう気が一切なさそうなので)と思ったり。

 

一方でフロローは、「あなたのしてほしいと思うことを、あなたも人にしてあげたらどうかしら?」という言葉を、「主も同じことを言っていた」と褒める(?)くらいなので、松山エスメの曇りのない気持ちに、「彼女がジプシーであること」とのギャップを感じて堕ちていったのではと思いました。エスメの女性的な魅力ではなくて、人間的な魅力に惹かれてしまったんだろうなぁ…。

 

・声質は硬派でかっこよくて、ひとつひとつのセリフをとても丁寧に発しているなという印象でした。一方、お芝居でもうひと押し、彼女らしさを感じられたらなとも思いました。

 

【フィーバス:佐久間仁さん】

・四季で最も多くの役柄で観ているのは三平さんですが、観ている回数が1番多いのは、もしかしたら佐久間さんではないか、というくらい、なぜか私は佐久間さん率が高いです。ちなみにこの回の翌週から神永フィーバスになったので、やっぱり佐久間さん運が謎に強いようてす。この年の3月に39歳になられたそうですが、私もあんなかっこいいアラフォーになりたいものです(真顔)

 

・最後は絶対セーヌ川に身投げして、エスメの後を追ってそうな佐久間フィーバスですが、今回は一幕が比較的コミカルな印象もあって、多少生命力増した気がしました。まぁ2幕ラストは相変わらず後追いエンドっぽかったですが…。

 

・『膝から崩れ落ちさせたら天下一品役者リスト』に勝手に入れておきました(古川雄大木村達成、佐久間仁←NEW!)

 

・改めて聴くと、佐久間さんの声は四季の中ではわりと異質だなと感じました。今すぐ佐久間ユダが観たい!!!!!佐久間ユダの断末魔が聞きたい!!!!!(狂)

 

・佐久間さんめっちゃ客席観てきますね…?(客席は暗いので向こうからはきっと何も見えてないはずですけど)あと背が高すぎるな!?

 

・久々に聞いて思わず吹きだしたセリフ。

\僕はどーいう女の子でも好きだよ♡/

 

・♪フィナーレ♪のフィーバスソロ、歌はもちろん、あのフィーバスのシルエットが目に焼き付いて離れませんでした。かっこよかったなぁ。よほど力が入っているのか、歌ってる間にみるみるうちに赤く染まっていく佐久間フィーバスの顔と首元に、それこそすごく「生命力」を感じてなんだか泣きそうになりました。

 

・佐久間さんのカテコのお手振り、最後まで袖から手だけ出してふりふりするの変わってなくて良かったです。かわいい。

 

【クロパン:吉賀陶馬ワイスさん】

・阿部クロパンが退団してしまった今、吉賀クロパンのどっしり安定感が頼みの綱です。

 

・目ヂカラの強さが相変わらずハンパなくて、10列目から観ててもひるみそうでした。