Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.2.8 「シラノ・ド・ベルジュラック」ソワレ公演:きみがほしい

いつの頃からか、「古川雄大さんのストレートプレイが観てみたい」と願うようになり(壮大)情報解禁されるたびに「ミュージカルか~」「朗読劇か~」「映像か~」と思ってましたが………ついにこの日がやってきた…!

(とはいえ、よく考えたら2021年初めに上演された「INSPIRE 陰陽師」はストプレだったのでは…!?)

 

しかも基になってるのは、なんとロンドンで上演されていたジェームズ・マカヴォイ主演の「シラノ・ド・ベルジュラック」…!日本でもNTLiveとして映画館で何度か上映されており、1度は観に行こうと思ってたんですが、毎回スケジュールが合わず結局見られずじまい。というところに日本版の上演が決まり、しかもシラノ役を古川さんが演じるということで、結構楽しみにしてました。

 

原作は観劇前に読みました。これが思った以上に面白くて、個人的にすごく好きな物語でした。詩と剣術の腕前は超一流だけど、大きくて醜い鼻をコンプレックスとするシラノ。誰もが認める美女であり、賢いけれど恋には盲目気味のロクサーヌ。美貌の持ち主だけど女性と話すと途端に語彙力ゼロになるクリスチャン。この3人の複雑な恋模様を描く物語。今回の観劇きっかけできちんと知りましたが、長く愛される理由がよくわかる話でした。

 

コ〇ナの感染状況が過去最悪の中、本当に開幕できるんかな…と不安でしたが、無事上演スタート。7日にプレビュー公演、8日初日ということで、私は初日に行ってきました。座席はセンターブロック後方。両隣は空席、目の前の席も1つ空いてたので、正直この上ないくらい快適な観劇環境ではありました。

 

真後ろに座ってた関係者らしきおっさんとおばさんが、上演前と幕間でずーーーっとしゃべってんのには辟易しましたけど。同時期上演の他作品が中止になったことを話題にして、「大変ですよねぇ」とか話してましたが、大変ですよねぇじゃねぇお前らのその口縫い合わせたろかと思ってました(口が悪い)


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全体的な感想。

 

「ラップをセリフにして演じる」みたいな部分を結構全面に売り文句にしてたので、ラップが苦手な私としてはかなり身構えて挑んだんですが、そこは正直あまり気にはなりませんでした。ただ四季の母音法に甘やかされてきた観劇ヲタなので、ラップパートはほぼ何言ってるか初見では聞き取れなかったです。原作(戯曲)を読んだときに「なるほど、これはラップという方法をとるのは納得だな」とは思ったんですが、一方で「それ通用するの、英語だからじゃないかな」とも思ったり。

 

「好きだな」って思ったところと、「なんで!?」って思ったところが結構はっきり分かれたので、箇条書きでとりあえず書いてみます。支離滅裂になりそう(真顔)

 

・キャスティング時から言われていた「イケメンがシラノを演じるのはどうなんですか問題」について。私も発表されたときは「鼻のメイクなしでやるんか…成立するんかな」と一瞬思いましたが、まぁイギリス版シラノのジェームズ・マカヴォイもかっこいいしな…。正直演劇における「観客の想像力」と、古川さん自身のお芝居でどうにでもなる気がしましたし、「シラノがイケメンじゃん」と観客に思わせてしまったら、それは(表現は適切でないかもしれないけど)古川さんの負けなんじゃないかなと思いました。

 

あくまでも私は、観ている間、古川さんが演じているのは「自分の容姿にコンプレックスを抱いているシラノ」という認識が外れることはありませんでした。ただしもう少し【容姿をディスられて生きてきた人間の卑屈さ】みたいなものは感じられると良いかなという印象も受けました。それはたまたま、私が好きな他の役者さんたちが「容姿に難があって女性に想いを伝えられない or 応えてもらえないと感じている男性」を演じた経験があることに気づいて、彼らのお芝居に共通していたものは何だったかなぁ…と考えてみた結果なんですけど。海宝さんのカジモド、高橋一生さんの三世次、清水さんのファントム。みんなどこかしら「諦めモード」だったり、「どうせ自分なんて」というオーラを漂わせてたと思うんですが、古川シラノは、少なくとも初日ではそれがあまり感じられなかったかもしれません。

 

ちなみにここから派生して、「そういえばミュージカル作品の【容姿に難ありキャラ】って、思いつくかぎり男性ばかりだな」と思いました。唯一思いついたのは「VIOLET」ですが、ヴァイオレットの傷跡は後天的ですし、別に異性に想いを伝えたいから顔の傷をどうにかしたい、ということはなかったもんなぁ。

 

・古川シラノ良き…!キャラとしてかなり好きです。ロクサーヌに2人きりで会いたいって言われてテンションぶち上がってるシーンと、ロクサーヌのお願いを聞いてるシーンと、クリスチャンに鼻を馬鹿にされてむきーーーーってなるシーンと、ド・ギーシュを足止めするシーンが好き。あ、全部1幕だ(真顔)2幕も悪くなかったと思うんですが、なにせ終わり方が好きじゃなかったので(別途後述)

 

・落語っぽいしゃべりが結構ハマってたので、古川さんの落語聞いてみたいです。

 

・ミッ〇ーマウスの声真似シーン(違)許されるならお腹抱えて爆笑したかったですwあの声出してる古川さん、控え目に言っておもろすぎる。

 

・1幕はおおむね良かったんですが、2幕はなんだかなぁ…。原作(戯曲)とはラストに至るまでの流れが少し変わってたんですが、個人的には原作の方が好きでした。

 

ロクサーヌ、ポスタービジュアルのままでよかったのに、なにゆえあの髪型に…?ポスターだと黒髪ストレートでちょっとモードな衣装が素敵だったんですが、舞台上では青髪でミディアムボブくらいの長さになってて、衣装はダボッとしたストリート系でした。ロクサーヌが言う「クリスチャンは美しい!美しい人なら美しい知性も持ち合わせてるはず!」っていうのはよくわからないですし、そもそもシラノがクリスチャンに成り代わって告白するシーン、どう考えても声で気づくやろ案件ですし。こうなるとシラノはなんでロクサーヌが好きだったんだろうなぁ…と思ってしまいますね…。誰もが振り向くような美女という設定なので、結局顔か…?ってなっちゃう。

 

・シラノがクリスチャンのふりをして告白するシーン、本で読んだときはあそこまで直接的な告白ではなかったような印象だったので、「君を押し倒したい」とか言い出して「!?!?!?!?」ってなってしまいました。あれ、ロクサーヌって自分がモノみたいに扱われるのを嫌がってるんじゃないの…?だからド・ギーシュとの結婚も嫌がったんじゃないの…??なのにあの告白には心惹かれるの…?????(悩)特に文才を感じるような告白にも思えず、ただただ自分の欲望を垂れ流してるようにしか聞こえなくて、あのセリフを泣きながら言われてもなぁ…とちょっと冷めてしまいました。まぁ原文(ロンドン版)がそうなら仕方ないか…。

 

・15年後にロクサーヌとシラノが会うシーン、ロクサーヌが遅刻してきたシラノに向かって「女の人と会ってたんでしょう!?」とか言うので「そんな心無いこと言うなよ…」と思ったんですが、ロクサーヌはシラノが女性にモテないなんて思ったこともなかったのかもしれないですね。むしろ剣術できるし文才もあるし、あんためっちゃモテるんでしょ~!?くらいに思ってそう。シラノはロクサーヌのそんなところが好きだったのかも(自己完結)

 

・観た後になぜかドラマ「SHERLOCK」のアイリーン・アドラーが言ってた「Brainy is a new sexy.」っていうセリフが思い浮かびました。見た目がどうであれ、頭の回転が速いっていうのは「かっこよくてセクシー」ってことなんだろうなぁ。ていうかベネディクト・カンバーバッチのシラノめちゃくちゃ見てみたくないっすか…!?(唐突)

 

・本で読んだときは「シラノ切ないなぁ」って思ってたんですが、舞台で観たらクリスチャンが圧倒的にしんどいポジションでした。シラノの文才に頼ったからこそつかんだ愛ではあるので、一見彼は得したように見えますが、最終的にロクサーヌの愛は彼を通り抜けて、彼の幻(シラノ)を愛してたわけですし、シラノは手紙を通じてクリスチャンの愛ではなく自分自身の愛をロクサーヌに届けてたわけだし、クリスチャンからしてみれば「俺の存在って一体なに?」ってなりますよね…。クリスチャン役の浜中さん、愛嬌のあるキャラクターで個人的にかなり好きでした。

 

・クリスチャンが戦地の前線に飛び出しちゃう前、シラノにキスした意味は初見ではよくわかりませんでした。2人で1人だったらよかったのになぁ!みたいな意味かと思ったんですけど…ちょっと違うような…。

 

・ド・ギーシュのブロマイドwあれは確かにいらんw

 

・ラップ以上に「??」と思ったのは映像でした。舞台上からぶら下がってるマイクにカメラがついていて、そのカメラが映す映像がセットの大きな画面に映るんですが、役者さんが自分で映すのでドアップばかり。正直めちゃくちゃ気が散ったのでない方が集中できる気がしました。

 

思っていたよりもなじめましたが、やはりラップは日本語では難しいなと感じたので、普通にストレートプレイで観たかったです。役者陣のお芝居はおおむね良かったので…。古川さんのお芝居、やっぱり好きだなぁ。