Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.1.20 ミュージカル「リトルプリンス」ソワレ公演:いつだって大切なものは目に見えない


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ミュージカル「リトルプリンス」。原作はサン=テグジュペリ作の超有名小説「星の王子さま」……ですが、上演が発表された当時、私は「星の王子様」をまだ読んだことがなく、「キャスト豪華だし、音楽座のミュージカルといえば『シャボン玉とんだ、宇宙までとんだ』は良い作品だったし、今回も観に行ってみよう~~~」と軽い気持ちで観に行きました。

 

観劇直前まで、原作を読むかずっと悩んでたんですが、「星の王子様」自体ずっと気になってた物語だったのと、1度しか観られないならあらかじめ物語を知っておいた方が、解像度高めに観られるかな?と思い、観劇日前夜に読み終えました。

 

観劇後、真っ先に思ったこと。「これは小説読んでおいて正解だったー!」

というのも、正直かなり抽象的なお話なので、何も知らないで観たらおそらく「…何これ?」となってたはず…。小説を読んだあと「言いたいことは何となくわかるんだけど、それをうまく言語化できない」という印象だったので、生身の役者さんが目の前で演じてくれることで、物語への理解が少し深まった気がします。我ながら良い楽しみ方ができました。

 

全体的な感想。

 

原作の世界観をそのままうまく三次元に落とし込んでいる上に、役者さん個々の技量が高いので、あのメルヘンチックだけど少しシリアスなトーンの雰囲気がしっかり作られていて、物語にスムーズに入りこむことができました。あいかわらず私は「周囲が泣いてると感動してても全然泣けない病」なので、終盤両隣の方が泣いてる間で「スンッ…」って顔してたんですけどね(真顔)

 

小説では淡々と描写されていた場面がしっかり深堀りされてるのが、個人的には好きでした。王子様とキツネが距離を縮めていくところから別れるところまで、かなり尺を取っていたので、感情に訴えかけるものが大きくなってたと思います。

 

逆に「いろいろな星の王様に、王子様が会いにいくシーン」は、文字で読んだ方がわかりやすかったかも。そもそもあんなパリピな王様いたっけ…?笑

 

とにもかくにも、星の王子様役の土居裕子さんが本当にすごかった。観劇後、Wikiで調べたら私の母と同じくらいの年齢と知り、電車の中で危うく叫ぶところでした。ビジュアルはみんなが知ってるあの星の王子様にそっくりですし、ほぼ出ずっぱりなのに最後まであの少年のようなハリのある声を出し続けてましたし、喜怒哀楽がころころ変化するさまを見事に表現されてましたし、一体どうなってるんだ…と、終始「すごい」という感想しか浮かびませんでした。ミュージカル役者さんたちが目指すべきはこの方なんじゃないかなと思うくらい、すべてに圧倒されました。

 

特にセリフと歌のテンションの差が全くなく、セリフから歌に移るのが信じられないくらい自然。だから「歌」の部分も「セリフ」として聴こえてきました。感情を織り込んで歌うのもわざとらしくなく、話すように歌うとはこのことかと。特に飛行士に怒って泣きながら詰め寄るシーンでの歌、王子が放つ負の感情のエネルギーがこちらまで伝わってくるようで、客席の雰囲気もこころなしか緊迫感があったように思いました。

 

テクニックとかそういうものを完全に超越してたことに、本当に感動しました。あれは一朝一夕で身につくものではなく、これまでの積み重ねから生まれるものなんだろうな…。いわゆるベテラン役者と言われる方を見て、これほど感銘を受けた役者さんは土居さんが初めてかもしれません。

 

飛行士とキツネの2役を演じた芳雄さん。芳雄さんはこれまでいくつかの作品を観ていますが、声質が独特なこともあるからか、基本的には軸に「井上芳雄」がいて、その周りをその時演じるキャラクターで固めている印象があります。

 

飛行士はひたすらかっこよくて素敵でしたが、個人的には芳雄さんのキツネがツボすぎて終始にやけてました。というのも、「エリザベート」で芳雄さんトートを観た時、あのちょっと吊り目っぽく描いてるアイメイクが好きで、「芳雄さんトートってフェネックとかキツネとか、あんな感じの小動物に見えるなぁ」とぼんやり思ってたので、まさか今回本物の(??)キツネ役として観れるなんて…!笑

 

【大きなもふもふの耳としっぽをつけた井上芳雄】が観られるのは、この作品だけだろうなぁ。芳雄さんは確か「キャッツ」を観てミュージカル役者を志したはずなので、なんとなく「キャッツっぽい動き」も取り入れてたように見えました。とにかく王子様と戯れてるシーンがずっとかわいくて、あのシーンだけ延々2時間観たかった…。コミカルなシーンと涙を誘うシーンのお芝居の切り替えが好きです。芳雄さんもその辺がわざとらしくなくて素敵だなぁと思います。

 

花役の花總さん。「ぴったり」以外の言葉が思いつかないくらいぴったりでした。王子様の故郷に1輪だけ咲いてる花なんですが、なにかと王子様の気をひこうとして、わがままや意地悪を言うので、本で読んだときは正直「性格悪いな…」と思っちゃうキャラクターでした。でも花總さんは、ベースに「気高さ」と「愛らしさ」があるので、そういうキャラクターでもどこかかわいらしさを失わず、守ってあげたくなるようなオーラを放っていて、ご本人の持つ素質がキャラクターをうまく生かしている素晴らしいキャスティング&お芝居だと感じました。

 

蛇役の大野幸人さん。人間か?????????(人間です)多分1人だけ重力ない空間で舞ってた(そんなはずはない)言い方が悪いんですが、めちゃくちゃ気持ち悪かったです(*最上級に褒めてます)でも目が離せない気持ち悪さだった(*超絶褒めてます)なんで「ロミオ&ジュリエット」の「死」を演じていないのか不思議なくらい。イケコ先生!!ここに逸材がいますよ!!!!!!

 

ちなみにこの回、某プレイガイド貸切回だったので、カーテンコールでのご挨拶があったのですが、なんともゆる~~~い空気感にほっこり。最後に土居さん&花總さんが一緒にはけるとき、花總さんが土居さんのほっぺたにエアーでキスをしてて(かわいい)それを受けた土居さんは、きゃー♡って照れながらニコニコしてました(かわいい)そしてワンテンポ遅れて逆の舞台袖からジト目で顔を出す芳雄さんに爆笑。最後まで存分に楽しめました!