Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2023.7.22 NODA・MAP 第26回公演「兎、波を走る」ソワレ公演:アリスを探して、再び迷い込む不思議の国


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2回目の「兎、波を走る」観劇。

 

2回観たあとも、作品としてはやっぱり「フェイクスピア」の方が好きだったな〜〜〜と思いつつ、何が描かれている作品なのかを知っているだけで、同じシーンやセリフでも初見とは全く違う印象に変化するのが、野田地図作品の醍醐味だなと感じました。理解力の乏しい人間なので、2回観てやっと1つの作品として、自分なりの感想を持てるようになったかも…。

 

そして「フェイクスピア」でも思いましたが、この作品をマチソワやりきる野田地図カンパニーすごすぎます。


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今回、松さん演じるアリスの母が、不思議の国に連れ去られた智恵豊富(ちえほうふ)やブレルヒトに対して「アリスの気持ち、少しはわかっていただけました?」と言い放つセリフがぐさっと来ました。

 

詳しいことはきちんと調べてないですが、この作品の冒頭でも描かれているように、「娘がいなくなった」と必死なアリスの母に対して、「本当にいなくなったの?娘なんて最初からいなかったんじゃない?」とからかうような人たちが本当にいたんだと思いますし、自分の娘が感じたであろう恐怖を、そういう人たちが少しでも実感してくれたら、そんな茶化すようなことは言えないだろうという、母親として静かな抵抗を感じるセリフでした。

 

誰かに悲しいことが起きたときに、「本当にそんなことあったの?」と、相手の気持ちを一切考えず、斜に構えてからかうような発言をすることって、今ではSNS上でしょっちゅう起こってるような…。

 

兎たちが徹底的に仕込まれていた「他人の痛みに鈍感になる」って、実はいつの時代の人間でも少しは持ってる感覚なのかもしれません。別段教え込まれなくたって、人の痛みに鈍感になれちゃうのが人間なのかもなぁ。

 

終盤、アリスがどうやって拉致されたかを再現するシーンは本当に観ててきつかったです。

 

ずだ袋に押し込まれ、わけもわからないまま海を渡って、言葉も通じない国に連れてこられたアリスが、袋から顔を出して「おかあさーん!」と叫び続けるシーン。彼女が感じた恐怖は私には計り知れないほどですが、ネットで事件について調べたり、資料で詳しいことを知るよりも、あのシーンひとつでものすごい痛みを感じました。

 

今回は舞台が1階席前方のセンターブロック。下手側通路の近くだったので、終盤は一生さんがずーーーーっとすぐそこに立っていて、正直気が気じゃなかったです。

 

…という浅い感想はさておき、初見で2階席前方センターブロック、2回目で1階席前方センターブロックという順番で観られたのは、(どこの席が取れるかは神のみぞ知る、なので完全に運任せではあるにせよ)観劇体験として大正解でした。

 

2階席では、不思議の国の演出の美しさ(特に鏡の使い方)や照明での演出が楽しめる&大まかに作品のことを知るという意味で適した舞台との距離感でしたし、1階席前方は、言わずもがな役者さんたちの細やかなお芝居を間近で体感できました。

 

終盤、兎がアリスを母に引き合わせようとするシーンの直前で、一生さんと松さんが目を閉じながら手をつないでたたずむシーンがありました。

 

2人が目の前に立って、照明に照らされる姿が本当に神々しく、まるで絵画のような美しさでした。その背後で繰り広げられるシーンがものすごく悲しくて残酷だからこそ、2人のたたずまいの美しさが際立っていた気がします。松さんが一生さんの手をぎゅっと強めに握っていて、指の先が白くなってるのまで見えて感動しました…。

 

一生さんの舞台は、ありがたいことにこれで4年連続で観ることができており、毎度本当に「すごい」の一言に尽きます。そして4年連続で、舞台でのお芝居を拝見するという贅沢を知ってしまった今、もう毎年舞台で拝見したいというヲタクの勝手な願いが生まれてしまいました(真顔)

 

もちろん映画・ドラマの作品選びも一生さんは信頼できるので、映像で観るのもいいんですが、編集で切り取られない生のお芝居ってやっぱり素晴らしいので、是非とも来年以降も(毎年とは言わないので)定期的に舞台に出続けてほしいです。またミュージカル界隈に足を踏み入れていただいても、こちらは大歓迎ですので…(念)

 

そして今後も野田地図作品は長く見続けたいと改めて感じました。次作以降も、誰がキャスティングされたとしても観に行きたいです!