Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

小説「紙の月」:非日常が当たり前になる怖さ

 「紙の月」:角田光代

 

(あらすじ)

ただ好きで、ただ会いたいだけだった。

わかば銀行の支店から一億円が横領された。

容疑者は梅澤梨花、四十一歳。二十五歳で結婚し、専業主婦になったが、子供ができず銀行でパート勤めを始めた。真面目な働きぶりで契約社員になった梨花。そんなある日、顧客の孫である大学生の光太に出会うのだった。

 

(感想)

角田光代さんの小説は初めて……かと思いきや、「八日目の蝉」はすでに読んでました。あれもなかなか面白かった記憶があります。

 

「紙の月」は、20歳も年下の不倫相手との関係を、1億円近く貢いで「買った」主人公・梨花の物語。

 

梨花の行動や気持ちには全然共感できなかったんですが、途中でてくるある言葉にハッとさせられました。

 

『かつて非日常だったものが、すっかり日常になってしまう』

 

これ、趣味が多すぎる人間としては、とても共感できる言葉でした。

 

学生時代、初めてミュージカルを観に行ったときは、A席でもチケット代が「高い」と感じ、「ミュージカルなんて贅沢、1年に1度だよな…」と思っていました。

 

でもお金と引き換えに体験できる「非日常」に魅了されて、今では15000円が簡単にチケット代に消えていきます。「非日常」を「当たり前」にするために。

 

もちろん梨花のように、絶対にやってはいけない領域を犯してしまったら、それはもうアウトですし、そこまでしてその「非日常」を守ろうとは思いませんが、実は誰だって(特に私みたいに何かにハマってる人は)梨花みたいになりうる可能性を持っているんだろうなと感じ、ある意味怖くなりました…。

 

今楽しんでいる「非日常の時間」を当たり前と思わないようにしなきゃなぁ…。