Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.03.22 ミュージカル「アナスタシア」:本当の私を探す過去への旅

 


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*想いが詰まりすぎてて無駄に長いです。笑

*物語のネタバレも思いっきり含みますのでご注意ください。

 

 

2017年のブロードウェイでの初演から、ずっと情報をチェックしてきたミュージカル「アナスタシア」。

 

CDが配信されれば即座に購入し、海外発のミュージカル情報にて「梅芸」の文字を発見し、日本版の公演がいつか実施されることを確信し、いざ発表されたらなんと海宝さんが(期間限定ではあったものの)ディミトリ役を演じられるとのこと。本当に嬉しくて何度も公式サイトを見に行っては、開幕を心待ちにしていました。

 

そんなわくわくした気持ちを、コロナの馬鹿野郎が全部奪っていきました…末代まで呪ってやるぞこのく〇ウイルスめ………(念)

 

開幕が延期になったり、やっと開幕したと思いきやまたもや中止になったりと、本当に翻弄されました。結局海宝さんのディミトリ役を見ることは叶わず、半ばやけくそになって取ったのが22日の公演のチケットでした。これが3度目の正直。最初はキャストを選り好みしていましたが、もはやそんな状況ではなくなったことに気づき、作品が見られるだけでもありがたかったです。

 

開演前にあの可愛らしい幕を見て泣き、暗転してオーケストラの1発目の音が鳴ったのを聴いて泣き、幕が開いてマリア皇太后と幼いアナスタシアがオルゴールを見つめながら微笑んでいる姿を見た瞬間泣きました(大洪水)劇場に到着しても、幕が開くまでは「急に中止になっちゃうんじゃないか…」とびくびくしていたため、もはや幕が開いただけで胸がいっぱいになってしまいました…。 

 

そして作品自体、本っっっっっっ当に素晴らしくて。「なんでこのタイミングでウイルスが流行っちゃったんだろう…」と、ただ観てるだけのこちらが心底悔しくなりました。本当は色んな人に薦めたかったですし、そう思えるくらい誰でも一度は観て損はしないと感じる作品でした(そして私は確実にリピーターになってたはず)

これまでに観たミュージカルや演劇のMyベスト10本には確実に入ります。

 

とにかくすべてが豪華絢爛。臨場感たっぷりの映像を映し出す巨大なLEDパネルや、一体何着あるのか分からないくらいの衣装の数々。舞台上を彩るカラフルな照明などなど、嫌な現実を忘れさせてくれる夢のような世界が広がっていました。

 

特に巨大なLEDパネルは、おそらく「そんなものでごまかすなんて…実物のセットのほうがいいよ…」 と思っているであろう大半の舞台ファンの考えをねじ伏せてくるレベルのすごさでした。

(ただこの作品は、舞台セットも結構しっかりしていたので、どちらにも力を注いだ結果両方の良さを生かす舞台になったんだと思いますが…)

 

CDだけ聴いてるとどんなシーンだかわからなかった部分も、日本語になって初めて「あ、そういうことだったのね!?」と分かるシーンがちらほらありました。

特に「なるほど!」と思ったのは、バレエを見ながらのカルテット歌唱シーン。バレエの演目が「白鳥の湖」なのはわかっていましたが、アーニャ=オデット姫、王子=ディミトリ、ロッドバルト=グレブと、それぞれが歌うところで「白鳥の湖」のキャラクターが動いていて、そういう意味での「白鳥の湖」だったのかー!!と。単にロシア=チャイコフスキー白鳥の湖ってわけじゃなかったん だな~(安直)

 

あとパリ行きの電車に乗る前の駅で歌う曲も、そういう意味の歌だったのかと初めてその意味を知りました。曲の冒頭とラストで素晴らしいソロを披露する人に、キャラクター名がついてることすら知らなかったですし、その後電車で亡命貴族として殺されるなんて…。

 

映画版を見て思いましたが、物語としては正直やや尻すぼみ感があります。アーニャがアナスタシアであることは、最初っから観客ははっきりわかっちゃっているので、その上で面白く見せるのって結構大変だなと思います。

 

今回実際にミュージカル版を観てみて、これはグレブ役の俳優さんの力量で作品の良し悪しが決まってしまいそうな気がしました。後述しますが、この回でグレブ役を演じられていた山本耕史さんは、さすがベテラン役者さんだなと感じられる素晴らしいお芝居だったので、ともすればなんだかぼんやりとしたラストになりそうなところを、作品としてしっかり締めてくれてたなと感じました。

 

演出として好きだったのは………全部好きなのですが、冒頭のロマノフ家の悲劇を描いたシークエンスと、ラストでアーニャがグレブと対峙してからディミトリと生きていく決意をするラストが、個人的にかなりツボでした。

 

冒頭のシーンは、リトルアナスタシアと皇太后のやり取りから始まり、途中でヤングアナスタシアに成長してからは一切セリフが入らないまま、音楽と踊りのみで進んでいきます。一家が楽しそうにダンスをしたり記念撮影をして過ごす中、革命の波が宮殿にも襲い掛かり、窓が割れたり爆発が起こったり(というのを LED パネルで表しててすごかった…!)最終的に皇帝と皇后がアナスタシアを連れて逃げようとしますが、アナスタシアは1人で祖母との思い出のオルゴールを取りに戻り、そこで気を失います。この一連の流れが音楽だけで紡がれていて、圧巻の見ごたえでしたし、一気に世界観に引き込まれました。

 

クライマックスのアーニャ vs グレブのシーンは、アーニャとグレブが対峙する奥でロマノフ家が革命家によって抹殺される最期のシーンが再現されていて、手前と奥どっちを見るか、ものすごく迷うシーンでした。目があと2つ欲しい…(無理)

 

そしてラスト、アーニャが皇太后の元を離れてディミトリを追いかけるシーン。アーニャがディミトリを、彼の愛称「ディマ」と呼び、ディミトリの持っていたトランクを地面に横倒しにして、その上に乗っかってキスするのが100 億点満点でした。柄にもなくめちゃくちゃキュンとしてしまったーっ!

そのあと客席に背を向けたまま、アーニャがディミトリと腕を組んで頭をこてっとディミトリの肩に乗せるのも、シルエットがとても素敵で考えた人天才…って思ってました。ちなみにこの場面で、LEDパネルがそれまで映していたものすごくリアルな映像ではなく、一気に水彩画みたいなメルヘンな背景を映し出すのもすっごく良かったです。「アナスタシア伝説」が、あくまでもおとぎ話であって、アーニャとディミトリがこの後どう暮らしていくのかを、観客それぞれが想像できるような演出でした。大好きすぎる(重) 


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以下キャスト別感想です。

 

【アーニャ:葵わかなちゃん】 

・2019年「ロミオ&ジュリエット」ぶりのわかなちゃん。個人的に葵ジュリエットのお芝居も歌も好みでしたが、明らかにアーニャのほうがご本人のキャラクターに合ってましたね…!(ジュリエットとしては未見ですが、これは木下晴香ちゃんにも当てはまりそうな気が…)それにしてもミュージカル2作品目にしてタイトルロール。ロミジュリの時も、若いのにずいぶんと肝の据わった役者さんだなと感じましたが(18歳くらいで朝ドラの主演を務めていたくらいなので、度胸は誰にも負けてなさそう)、今回も本当に堂々たる歌とお芝居を見せてくれました

 

・葵アーニャ(私は勝手にわかーニャと呼んでます)は、何と言っても\か わ い い/!!!!!!!!!!!本っっ当にチャーミン グでかわいらしいです!!!!!ディミトリとダンスの練習をさせられて、ディミトリの足をわざと踏んづけた後ヴラドに怒られるんですが、その時に「にひひ~(*´ω`*)」っていたずらっ子みたいな笑顔を見せてくるので、石川ヴラドが(おそらくアドリブで)思わず「…かわいい!」って言っちゃってました。その気持ちめっちゃわかる …!ってくらい、納得のチャーミングさでした。

 

・わかーニャちゃんは気の強さもピカイチで(笑)頭に血が上るととことん暴れるのが面白かったです。酔っ払い撃退シーンでは、ディミトリを「邪魔っ!!!」と押しのけたり、ディミトリに向かって「来い!!!」となぜか戦闘態勢を取ったり、はちゃめちゃでした。笑

王室にいた頃から、さぞかしおてんばプリンセスだったんだろうなぁというのが、お芝居のあちこちから伺えるわかーニャ。本当に召使いにキックかましてたんだろうなぁ…w

 

・お芝居は、特にグレブと対峙するシーンがすごく印象的でした(怒って一気にまくしたてるところは、かなりキンキン声になってたのは気になりましたが…)

 

・ラストの真っ赤なドレスがとってもお似合いでしたが、個人的には普段着?が一番好き。ブロンドの長い髪のウィッグもばっちり似合ってました。 

 

・歌は、♪In My Dreams♪は頑張れ…!って感じでしたが、私の大好きな♪Once Upon A December♪の歌唱が、わかーニャの音域に合ってたのかすごく素敵でした。♪Journey to the Past♪も、なるべく裏声を使わず地声で頑張ってました。

 

 

【ディミトリ:内海啓貴さん】 

・当初は千秋楽公演のみで見る予定だった内海ディミトリ。というのも、正直歌唱披露の映像を見て、歌唱力に一抹の不安を感じていたので…。失礼ながら、年齢的にはおそらくディミトリに一番近いかな~程度の印象でした。 

 

・実際に見たら、良い意味で化けてました…!!!!!今回初めてのグランドミュージカル出演とのことなので、本番まですごく努力されたんだろうな…と。稽古期間は並行してテニミュにも出演されていたそうで、かなり苦労されたかと思います。

ちなみに勝手に未見の役者さん…と思っていたのですが、実は配信で観た「黒執事~Tango on the Campania~」で、リジーちゃんのお兄さん役をされていたと知り、「あーーーーあのシスコン気味の!!!!!」と気づきました。印象がひどいけど…。笑

 

・歌唱披露時にはちょいと不安を感じていた♪My Petersberg♪、予想をはるかに超えてものすんごーーーーーーーーく良かった!!!♪この街をー!♪のロングトーンも、直前の息継ぎなしですごい声量でしたし、あの歌唱披露の時のふらふら~っとした感じは全く無くなってて本当に素晴らしかったです。

惜しいな…!と思ったのは、ショーストップになりそうなくらい拍手が起こったのに、普通に次の台詞を言い始めちゃったところ。照れ隠しなのか、そのあたりもまだグランドミュージカルに慣れてないからなのか…もう少し拍手を浴びても良かったのに…!!

 

・お芝居的には、かっこいい方向に行くのではなく、少年のような可愛らしさを残したディミトリ像を確立していました。少なくとも海宝さんと相葉さんにはないキャラクター性だと思うので、オリジナリティがあってすごく良かったです。自分の強みをしっかり把握して演じていらっしゃる印象を受けました。顔にすぐ感情が出ちゃうので、詐欺師には向いてなさそうだったけどw

 

・可愛らしいわかーニャとの組み合わせも抜群に良かったです。当初(千秋楽)ははるーニャ(木下晴香ちゃん)とのペアで見る予定でしたが、こちらで正解だったかも??

 

・初めてアーニャとダンスをした時、観ているこちらまで笑顔になっちゃいそうなくらい、楽しそうに踊ってたのがとても印象的でした。ずっと強がって生きてきたけど、「強く生きてきた」んじゃなくて「強く見せて生きてきた(ので本当はさみしがり屋)」なのかなと。誰がどう見たってアーニャのこと大好きなのに、ヴラドにそのことを指摘されて全力で否定するのも可愛かった~!

 

・♪In the Crowd of Thousand♪では、白いタンクトップから伸びる、ベビーフェイスに似合わぬものすごい二の腕に唖然。お顔とのギャップが凄すぎました( ゚д゚)今後どんどんグランドミュージカルに出て活躍していく役者さんになるだろうなと思いました!

 

 

【ヴラド:石川禅さん】

・「ダンス・オブ・ヴァンパイア」以来の禅さん!わかーニャ&ディミよしの可愛いペアにぴったりな、これまた可愛らしいヴラドでした。♪Learn to do it♪でのトリオが本当に可愛くて可愛くて癒されましたし、見ててずっと頬が緩みっぱなしでした。

 

・2幕のリリーとの掛け合いもめちゃくちゃ面白くて、客席が笑いに包まれるシーンがいくつもありました。かわいらしい堀内リリーとの相性が抜群!(ちなみにこの回は全体的に相性良さそうな組み合わせだったなと、後から2回目を観劇して感じました)

 

 

【グレブ:山本耕史さん】 

・まさか「土方歳三様」が舞台上で歌っている姿を見ることになるとは、「新選組!」にハマっていたころの私は思ってもみなかっただろうなぁ(遠い目)

 

・あまりアーニャに恋してる…というのは感じず、「ロマノフ家を滅ぼし、新たな時代を切り開いた自分の父親の名に恥じない生き方を」というのをモットーに生きている、ザ・軍人という印象でした。アーニャがアナスタシアでなければ …と感じているのは、彼女を好きだからではなく、もしそうであれば自分が父の代わりに仕事を果たさなければならない=アーニャを殺さなくてはいけなくなるからで、果たして自分に何の罪もない、ただロマノフ家の 1 人だったというだけの女性の命を、奪うことができるのかという点で葛藤を感じていそうでした。

 

・アーニャと対峙するシーンがとてつもなく素晴らしかった…!この場面では、LED パネルでも豪華な衣装でもなく、「守るべきはアーニャの命か、自分のモットーか」という葛藤の中で揺れ動く、山本グレブの鬼気迫るお芝居と歌声に鳥肌が止まりませんでした。特にアーニャに向けた銃を持つ手が、次第にブルブル震えるのがすごくリアルでした。さすが役者歴が長いだけあって、説得力のあるお芝居をされる方なんだなぁと感じました。

 

・カーテンコールでは、客席だけでなくなぜかその場で1周くるっと回って、アンサンブルさんたちにも手を振ってたのがお茶目でかわいらしかったです。ギャップ萌えというやつでしょうか…。笑

 

 

【リリー:堀内敬子さん】 

・歌が抜群に上手でパワフルだった堀内リリー。♪Land of Yesterday♪がかっこよすぎて震えました!!キャラクターとしては本当にかわいらしくて、少女のまんま成長した印象を受けました。ヴラドの前ではずっと乙女な表情しててめっちゃ可愛かった~!!