Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

ドラマ「岸辺露伴は動かない」:人に刻まれる記憶を読み解く

 

2020年末に放送されたNHKスペシャルドラマ「岸辺露伴は動かない」、今さらながら全3話見ました。

 

www.nhk.jp

 

岸辺露伴」が何者か知らない。

というかそもそも「ジョジョの奇妙な冒険」について何も知らない。

というわけで、原作未読で挑みましたが、全くもって問題ありませんでした。

むしろ「実写化」を意識せずに楽しめたので良かったのかもしれません。

 

全体的に摩訶不思議な世界観で、ものすんごい派手な面白さ、というよりかは、堅実に楽しめる面白さでした。

海外ドラマ的な「大どんでん返し!」とか「気になって夜も眠れなくなるくらいのクリフハンガー!」が好きな人にはおすすめしません。

(例:私の家族。笑)

 

物語が繰り広げられる場所や、物語にかかわる人は比較的限られていましたが、そのことが逆にストーリーにのめりこめる要素になっていたと思います。

役者さんのお芝居も素晴らしく、素っ頓狂な世界観でもしっかり楽しめる安心感がありました。上質な舞台でのお芝居を観ている感覚。舞台化しても面白いだろうなぁ(ヘブンズ・ドアーの再現が出来ないか…)

 

あと「高橋一生、別に好きじゃなかったのに…」って言いながらどんどん沼に落ちていく人がTwitter上に結構いて、沼の底でにやにやしながら見ておりました。笑

 

各話ごとの感想。盛大にネタバレしております。

 

【富豪村】

アバンタイトルまでの流れが秀逸でした。「岸辺露伴」なる人物が一体どんな人なのか、このドラマの世界観はどういうものなのか。「主人公の自宅に泥棒が入る」というシチュエーションだけで、すべて説明がなされていました。

しかもいわゆる「ザ・説明」ではなく、露伴と泥棒2人のやり取りで視聴者に把握させるという上手さ。ありきたりなドラマ(?)であれば、担当編集者の泉を冒頭から登場させて、彼女視点で露伴のことを説明しそう。

 

・「なぜ自分の家に盗みに入ったのか」ではなく、「なぜ自分が描いた漫画を読むのを途中でやめたのか」にキレる露伴。特殊能力「ヘブンズ・ドアー」で、泥棒になった経緯よりも自分の漫画を読んでくれなくなった理由を探してて笑いましたw(生け捕りにして「資料」扱いするのも面白かったw)

そしてこのちょっとしたエピソードが、ラストにまたひょっこり登場してたのも好きでした。

 

露伴の担当編集者になった泉。例えば「シャーロックホームズ」シリーズの、ホームズの相棒・ワトソンは、常識から外れまくったホームズに最初振り回されてばかりですが、泉は露伴のエキセントリックな言動を目の当たりにして「変な人!」と言いつつ、特に振り回されている様子はなく、むしろ2話・3話と進むうちに泉が露伴を振り回していたような…。笑

「変人と常識人」はよくある組み合わせですが、「変人&変人」というのが斬新でした。泉のキャラクターもうざくならないギリギリのラインを保っていて、飯豊まりえさんのお芝居力に感心しました。

 

中村倫也さん演じる太郎くんの存在意義が、この回だけだとよくわからなかったんですが、3話まで見たら「あーーーそういうことかーーーー」と。1話で彼がコーヒーに砂糖を大量投入していた理由がわかりました。

 

・肝心の富豪村の話は、2話・3話に比べるとあまり印象に残りませんでした。富豪村に行く道中の、露伴と泉のやり取りの方が楽しかったかも。

 

 

【くしゃがら】

・人間って「ダメ」と禁止されたものが気になったり、深堀りしたくなる不思議な生き物ですよね…。私もこの話を見た後、気になって「くしゃがら」を検索しそうになり、検索ボタンを押す手前でやめました。笑

そもそも「くしゃがら」という言葉自体、視聴者の安全を考慮して、NHKによって元の禁止用語から差し替えられている、という設定なので問題ないのですが(あの最後の貼り紙、粋な演出でしたね)

 

・「くしゃがら」の謎に憑りつかれてしまい、狂気を帯びていく漫画家・志士十五役の森山未來さん。すごかったな~!登場シーンの大半が露伴との会話のみでしたが、一生さんとのお芝居のテンポがぴったり合っていて、会話してるだけなのに全く飽きずにどんどん惹きつけられました。

 

・人の好奇心は、人類にとって新たな道を開くカギにもなりうるけど、時として禁断の扉を開いてしまい、その人を滅亡させることもある。「ただの言葉」のはずなのに、人が理性で抗えないほどの得体のしれない力を持つという内容が非常に面白かったです。「自分に知らないことなんてない」と豪語する露伴が、「くしゃがら」に心惹かれる様子があったのも良かったです。

 

・あとなんだかんだ文句言いつつ、人に優しい露伴も素敵!笑

 

 

【D・N・A】

・わちにんこ?????

まおちゃんかわいい!!の回でした。

 

・臓器移植によって、移植先の人間に元の臓器の持ち主の記憶や生前のクセが宿る、という話はフィクションでも現実世界でも聞いたことがあったので、それほど新鮮味を感じるお話ではありませんでしたが、最後はほっこりできる良い話でした。

 

・言葉がさかさまにしか話せない、散歩以外の時間はぬいぐるみだらけの自分だけのスペースにもぐりこんだまま、というまおちゃんの性質を、一言「この子の個性、何の問題もない」と一刀両断する露伴

まおちゃんママは「普通じゃないから生きていけない」と訴えますが、「普通とは一体どこからどこまでを言うのか」と再度突き放す露伴。またまおちゃんがこうなった原因の1つは、過保護すぎるまおちゃんママにあるとまで言います。

一見冷たいですが、露伴自身も「普通」から外れた人として日々扱われているはずなので、まおちゃんの気持ちを代弁しているようなセリフに、逆にグッときました。「子供は嫌い」と言いつつ、問題が解決するまでしっかり寄り添ってあげてましたし。

 

・奇跡は、それが起こった時点で奇跡とは言わなくなる!と泉に断言していた露伴でしたが、さすがに「太郎くんの臓器の元の持ち主が、亡くなったまおちゃんパパのものであったこと。まおちゃんが直感でそのことに気づいたこと」は、彼にとっても奇跡…と言わざるを得なかったでしょう(ね?露伴先生?by泉)

 

 

ものすごく好評だったようなので、続編やシリーズ化を期待しております…!