Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2023.1.31 ミュージカル「エリザベート」マチネ公演(大千穐楽):花總シシィにお別れを


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♪泣いた 笑った くじけ求めた

♪虚しい戦い 敗れた日もある

 

この歌詞がそのまんま当てはまりそうな2022年-2023年東宝エリザベートの終着地点。そして「エリザベートを演じる花總まりさん」の終焉を現地で見届けてきました。公演期間は(中止になった回も結構あったものの)まるっと4か月。長かったような、あっという間だったような…。


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観劇前は、正直あんまり「大千穐楽」ということにピンと来ないままで「また明日から別の地に移って公演があるんじゃないか」と思うくらいだったでした。でもいざ幕が開くと、舞台からの熱量がやっぱりいつもとはちょっと違っていて(生配信があるからという理由もありそうですが)、「あぁこれで今期は最後なんだなぁ」と泣きそうになりました。

 

そういえば博多座に売ってたいちごクロワッサンがおいしかったな(突然の食レポ

 


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以下、簡単な感想メモです。

 

・花總シシィ、決して歌は本調子とは言えなかったのではと思います。全体的に、というわけではないのですが、肝心の♪私だけに♪ラストのロングトーン部分が、ややフラット気味になっていたような。

 

でも変に「大千穐楽だから」「自分が演じる最後のエリザベートだから」という気負いがなく、いい意味で「いつも通り」だったのは本当に素晴らしかったです。

 

・カーテンコールで「私の中のエリザベートとお別れします。ばいばーい!」と軽やかにシシィに別れを告げる花總さんを見て、いやまだ演じられそうなのになぁと正直思っていました。

 

観劇が趣味になってから、たくさんの作品でさまざまな役者さんを観てきて、本当にごくたまに「この人、この役を演じるために生まれてきたんじゃないか」って思えるほどのハマり役を演じる方に出会いますが、花總さんは間違いなくエリザベートを演じるために生まれてきたような役者さんでした。今後、これほど\ばちーん/とエリザベート役にハマる役者さんは、少なくとも私が生きてる間には出てこない気がしています。そのくらい花總シシィは至高でした。花總さんのエリザベートを何度も観ることができて、最後の瞬間にも立ち会うことができて、寂しいけどとっても幸せでした!

 

・古川トート、開幕から大千穐楽まで、ずっと見続けてたわけじゃないので本当のところがどうだったかは神と古川さんのみぞ知るですし、大阪公演なんて本当に大変だったと思いますが、とにかくずっとずっと楽しそうだったのが印象に残りました。技術面でもメンタル面でも、2019年公演からの大きく飛躍したと感じたのは、ただのファンの贔屓目だけではないと思います。

 

・ミュージカル俳優として、この年齢になってもまだ伸びしろがあるって、実はものすごい強みなのでは…!?私は、観ていて『次は何を仕掛けてくるんだろう!?』ってわくわくできる役者さんが大好きなのですが、古川さんには毎回わくわくさせられています。

 

・2019年公演でもいろいろなアプローチでトート役に挑戦していて、何回観ても1つとして同じような演じ方をしている回がなかったんですが、今期は2020年以降ミュージカルの外の世界での活躍で身につけたスキルを限界まで使っていて、自分の魅力を最大限に発揮されていたと思います。キーが高くなった♪最後のダンス♪も見事に歌い上げ、2019年公演では正直全然響いていなかった低音部分も、ぞくぞくするような響きを持たせられていて、確実に「前回とは違う」トートを作り上げていました。古川さんは役者としても人としてもとても謙虚だけど、挑戦の仕方が大胆なところが本当に素敵で大好きなところです。

願わくばイ◎コ先生の元を離れて、もっといろんなミュージカルに挑戦してほしいものです(小声)

 

・佐藤フランツ、2015~2016年公演で、今回とはほとんど違うメンバーですでに2年公演した経験もあって、久々の参入にもかかわらずカンパニーの大黒柱のような存在でした。お芝居的にものすごく主張するわけではありませんが、佐藤フランツがいると地盤がぐっと固まる印象でした。

 

どうしても歌に注目されがちな役者さんですが、今回佐藤フランツを何度か見て、「あぁ、フランツってこの時こういう風に思ってたのかな」とか「この一言はこんな気持ちで発してたんだろうな」という、新しい発見がいくつもできました。2019年公演では、正直フランツにはあんまり共感できなかったんですが、今回はフランツの人となりが、少なからず佐藤フランツを通して見えた気がしました。

 

・甲斐ルドルフ、帝劇序盤はさすがに「型通り」な印象で、役の大きさに対して本来の力が発揮できてないのかな?と思いました。それが、実質帝劇千穐楽となった11月22日ソワレの彼のパフォーマンスは本当に本当に素晴らしくて、あの時きっとルドルフという役を自分のものにしたんだろうなと感じました。

 

今までいくつか出演作を観る中で、お芝居面でもう少し…と思う部分もありましたが、今回それが(個人的には)かなり払拭されました。心の機微を表情や仕草でしっかり語れる役者さんになったと思います。

 

歌は言わずもがな問題なく、ミュージカルデビューからたった数年で、すでに若手ミュージカル俳優のトップをひた走る役者になりましたなぁ。ブロードウェイ発の作品もヨーロッパ発の作品も似合う、稀有な役者になる予感がしています。しかしあまりにもスピード出世すぎるので、もう少し脇でどのような演技ができるのかも見てみたい気がします。もう主役級しかやらないかな…。

 

・今期エリザベートで私がMVPをあげたいのは黒羽ルキーニです。最初から本当に完成されていたのと、「ルキーニを演じることへの気負い」がいい意味であまり感じられなくて、きっと大変だったんだろうとは思いますがどちらかというと「楽しそうだなぁ」という印象でした。

 

ひたすらルキーニという役を身体になじませてたであろう帝劇公演、意図した芝居と実際の芝居に少し齟齬が出てそうだった&シンプルにお疲れモードな印象だった御園座を経て、博多座千穐楽は完全体として着地していて本当に素晴らしかったです。

 

成河ルキーニと山崎ルキーニのいいとこ取りなルキーニという印象で、ルックスは二枚目でも狂気のカケラをきちんと抱いていました。おそらくミュージカル「るろうに剣心」の志々雄役で一気に花開いたんだろうなと。いわゆる「王子様」役ではなく、危なっかしかったりどこか倫理観が破綻してたりする役の方が絶対に似合うので、今後ちょっと変わった立ち位置の役者として、ミュージカル界のみならず、演劇界に君臨してほしいです…!

 

千穐楽の感想…というよりかは、各キャストの総まとめになっちゃいましたが、まぁいいか。笑

 

本当に幸せな4か月間でした。改めて私は「エリザベート」という作品が大好きで、たとえ今後ミュージカルを頻繁に観ることがなくなったとしても、この作品だけは追い続けたいです。

 

また新生・帝国劇場でシシィに会える日をいつまでも待ってます…!

 


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