Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2019.03.01 舞台「唐版 風の又三郎」:理解不能だけど伝わってきた「何か」

 

*引き続き2019年の観劇記録が続きます~。

 

 

窪田正孝さんの演技を初めて観たのはどの作品だったか、今では覚えていないのですが、「死ぬまでにこの人の演技を舞台で観てみたいなぁ」と思っていました。

 


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早々に叶いました。

 

職場のエレベーターを待ってる時にチケットの当選メールが届いて、その場で「ぎええええ!?」って叫んだことをよく覚えています(あのとき1人で良かった)


40年以上前に上演された、いわゆる「アングラ」演劇(アングラ=アンダーグラウンドの略だそう)で、長い年月を経て今回再演。昔はテント(!?)で興行していたとの話もパンフレットに載っていました。


いつも比較的分かりやすい物語ばかり見たり読んだりしてるので、お話としては到底理解が及ばなかったんですが、不思議なことにきちんと「伝わって」きました。わけがわからないながらも、最後のシーン、ちょっとぐっと来ちゃったもん…。



精神病院から抜け出した少年・織部(窪田くん)と、自衛隊の飛行機を乗り逃げした恋人の遺体を探すエリカ(柚希礼音さん)の物語。


精神を病んでいる織部は、「風の又三郎」に憧れていて、たまたま出会った少年のような格好をしていたエリカを「風の又三郎」と勘違いします。

エリカは恋人探しに織部を使おうと、自分が「風の又三郎」であると偽って、2人で旅を始める、といった流れのお話でした。

ちなみに風の又三郎、というのは、宮沢賢治の童話の登場人物のこと。

 

あ、そういえば3幕まである作品はこれが初めてだったな。2幕と3幕の間の休憩が短くて、お手洗いに行くのが大変でした。


とにかくまともな思考のキャラクターが誰1人として出てきません。「不思議の国のアリス」に出てきそうな奇妙なキャラクターばかり登場して、支離滅裂なことを言っては去っていきます。

 

だから「これはどういうこと?」と理屈で見ることはしないで、ただただ目の前で繰り広げられるあれやこれやを何となく受け止めながら観てました。あれを全部理解しようとしたら、きっと脳みそが爆発する。


思わずぎょっとするような場面もちらほらありましたが、描写がエグくて見てられない…みたい場面は無かったので、これはまだまだ浅い(?)方のアングラ演劇なんだろうなぁと。もしかしたら今の時代に合うように、マイルドになったのかもしれません。


ベテラン勢によるアドリブの数々がめちゃくちゃ面白かったですし、織部やエリカのおちゃめな動きに思わずふふっとさせられたところもあって、意外と笑えるシーンも多かったです!

 

以下、メインの2人のみの感想。

 

織部窪田正孝さん】

・なんと6年ぶりの舞台でのお芝居だったとのこと。映像作品だけでなく、もっと舞台にも出てほしいなぁ。


・そんな窪田くんが舞台上で繰り広げるお芝居、本当に本当に本っっっっ当にすごかったです…!!!お芝居が達者なのは、ドラマや映画で重々承知していたつもりでしたが、改めて「すっっっごい!!!!!」って感動しました(語彙力無さすぎて「すごい」しか出てこない残念なヲタク)


・登場から1幕を中心に見せる、ちょっぴりとぼけた表情や声、そしてコミカルな動きがとても愛らしかったです。ところどころ他の役者さんが歌う場面があったんですが、そのときは端っこの方で不思議そうな顔で眺めたり、腕をぱたぱたしてリズムを取ったりしてました。かわいい。


・風見鶏を売ってるお兄さんに、「金はいいんだ!気持ちをくれ!」って言われて、渋々ダンスするのもめっちゃ可愛かった!お兄さんに向かって投げチューしてました。笑


・エリカに対して嘘泣きで騙して手をつなぐシーンも可愛かった…。


・2幕ラスト、エリカが流す血を嬉しそうに飲んで、血まみれの顔で浮かべる恍惚とした表情(怖かった)、精神を病んだときの狂気の表情(怖かった)、クライマックスで死の縁にいる時の表情(怖すぎてオペラグラス使うのやめた)、どれもものすごく魅力的で恐ろしくて美しかったです。コンマ1秒でさっと表情が変わってた…。


・目がキラキラしてる時と、ギラギラしてる時の差が、遠くからでも分かるのすごくないですか?????


・最初登場した時に「窪田くんだ!」ってあんまり思えなくて不思議だったんですが、そこにいるのが「織部を演じる窪田くん」じゃなくて「織部」だったんだなぁ。


・早口で喋ってもきちんと伝わる声量と滑舌よ…!!


・先輩俳優さんの頭をぱこーーーーん!って5回くらいスリッパではたいてて、お芝居とはいえ威勢が良すぎて笑った…w


・俳優になるべくしてなった人なんだなぁとつくづく感じました。窪田くんには悪いけど、自動車の修理工場で働く人にならなくて良かった…(俳優じゃなければそっち方面のお仕事志望だったらしいので)

 

・カーテンコールでは全然笑顔がなくて、本人も頑張って笑おうとしてる感じだったけど、もう全部出し尽くして抜け殻みたいになっちゃってました。

それでもカーテンコールが続くと、舞台袖からふらふら〜と出てきて、マイクを通さずに「ありがとうございました!」って客席に叫んでました。全身全霊をこの作品に捧げてるんだなって感じられて、最後の最後で涙出てきました…。


・お顔が小さすぎて、手足も細くて長くてうらやましいです。いつか窪田くんに直接会えるチャンスがあれば、「そのスタイルを手に入れるのに前世でどんな徳を積んだか?」を是非とも聞きたいものです(真顔)


・このあとの大阪公演では、足を大怪我されて、なんと全編車椅子で出演したとのこと。す、すごい根性だ…。

 

【エリカ:柚希礼音さん】

・宝塚の元男役さん、ということで下手すると窪田くんよりも男らしかったかも…?一挙手一投足にキレがあってすごくかっこよかったです。


・歌う場面や踊る場面も結構多くて、宝塚時代の柚希さんを見てみたかったなーと。宝塚版ロミジュリにて、めっちゃくちゃかっこいいロミオを演じてたらしく………え、何それめっちゃ見たい(時すでに遅し)


・死んだ恋人をどこまでも追い求めていく一途さは、理解はできないけど「そういう愛し方もあるよね」とは思えました。いやでも死んだ恋人の肉片食べちゃうんですもんね!?!?


・窪田くんとのお芝居の相性もばっちりだと思いました。気の強いお姉さんと振り回される弟にも見えたし、狂気の世界に生きる恋人同士にも見えたし、母親と息子に見える場面もあって面白かったです。一言では説明できない、織部とエリカの関係性が素敵。

 


北村さんや六平さんなど脇を固める方たちも、皆さん個性が強くて見ていて楽しかったです。

特に六平さんが2幕前に客席から出てくるんですが、「わー!わー!」って喜々としながらお客さん驚かせてるのに、その後「俺、ホントはこういうの苦手なんだよなー」ってぼやいてて笑いましたw

また舞台作品で窪田くんを見たいです!