Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.04.09 ミュージカル「モーツァルト!」ソワレ公演:幸せなマチソワ

初めて同じ演目をマチソワした記念すべき日です。

きっと観劇後はすんごい疲れてるんだろうな…最悪の場合、ひどい頭痛に見舞われそう…と覚悟して観劇しましたが、マチソワ間でしっかりご飯を食べたおかげか、案外平気でした。

 

この回は、Wキャストが山崎ヴォルフ、涼風男爵夫人、そしてこの回が初登場だった設楽乃愛ちゃんアマデ。

 

初見のマチネでは長く感じた上演時間が、全体を通して体感30秒くらいで終わったことに本当にびっくりしました。流れを把握した上で観たという理由もあると思いますが、すごく夢中になって観ることができた回でした。単純に推し(古川さん)がいないから、作品そのものに集中できたのかも。笑

 

2回目の観劇なので考察と言えるほどのものでもないのですが、コロレド大司教の2幕のソロ(♪神よ 何故許される♪)を聴いて思ったこと。

 

「人間は教育できる 猿でも調教できる」

「天才は育てられるけど、神からの授かりものを生まれ持った天才とは違う」

という趣旨のことを猊下は歌うんですが、その昔エジソンが言ったとされる「天才とは、1%のひらめきと、99%の努力によって作られる」という言葉は、おそらくヴォルフには当てはまらなかったんでしょう(エジソンの方が後世の人物ですが)

 

ヴォルフは一生懸命頑張ろうが、怠けていようが、素晴らしい音楽が次々と溢れてしまう人で、それは努力によって勝ち取った才能ではなく、生まれつき神から与えられた才能。だから誰かの言うことを聞いたり、誰かのもとで作曲するのは性に合わなかったのだと思いました。

 

もし努力を重ねた「天才」だったら、自分が頑張って築きあげた才能を無駄にすることはないだろうと思うので、上司に素直に従ったり、人生の先輩のアドバイスをうまく受け入れたり、いわゆる大人の対応ができるのかもしれないです。

 

こうなってくると、ヴォルフの人生って一体なんだったんでしょう…。何百年にもわたって偉大な作曲家として名を残しているのは素晴らしいですが、果たして生きている間、彼は幸せだったのかな…?

(と思うと、ナンネールの旦那さんのセリフがまた気になってきます…)

 
f:id:der_letzte_tanz:20210706201301j:image

 

キャスト別感想、Wキャストのみのメモです。

 

【ヴォルフガング・モーツァルト:山崎育三郎さん】

・やはり4度目の出演なだけあって、歌はもちろん、ヴォルフとしてのお芝居が確たるものになっていて、ヴォルフがどういうキャラクターなのか、育三郎さんがヴォルフ像をどうとらえているのかが、こちらに伝わってきやすい印象でした。お芝居の中に、彼独特の「育三郎節」を感じつつ、それこそが彼の武器であり、役者としてキャラが確立しているのは強いよなぁと感じました。

(実は個人的にはそこが少し苦手な部分ではあります…)

 

・「ぼくはプリンスなんだ~♪」という歌詞に、「うん、知ってる!」ってなってしまう朝ドラエール勢(久志〜!)

 

・赤いコートの裾捌きがめちゃくちゃ上手。今回衣装が新調されたとのことで、鮮やかな赤がとても素敵でした。

 

・歌い方は、あえてポップスっぽくしてるのかな?と思う部分もありつつ、歌い上げるところはさすがミュージカル界のプリンスでした。クライマックスの♪影を逃れて♪のフェイクがとんでもないことになっており、こちらが「はい!?!?!?」ってなったまま幕が閉じました。笑

 

・振る舞いは、特に1幕はロックミュージシャンっぽく感じました。古川ヴォルフが異端児なら、育三郎ヴォルフは反逆児という印象。

 

・古川ヴォルフよりも、動きではなく表情で語ろうとするシーンが多かったような…。あまり大げさにならないよう、抑えてるのかな?と思いました。

 

・かなり後方の席から観ていましたが、メイクが気になってしまいました。リップの色が変にピンクなので、「プリシラ」入っちゃってるよ?って思ったり。血色が良すぎるような…。

 

・アマデと2人きりのカーテンコールでは、アマデ役の乃愛ちゃんを片手にひょいっと抱っこしてはけていく姿が完全にパパで、「そうだった…この人私生活は自分がパパなんだった…」と思い出すなど。劇中で「パパ~!」って言う姿になんの違和感もなかったので、完全に忘れてました…。笑

 

・GWに何度か観る予定が、中止になってしまったのでこの回だけになってしまったのが残念でした。配信でもう一度観たので、そちらでまた感想書きます。

 

【ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世さん】

・香寿さんとは真逆の涼風男爵夫人。涼風夫人はあたたかみを感じず、ヴォルフの才能にしか興味がなくて、そこしか見ていないし愛してもいない。なので最初から一貫して結構冷たい印象でした。ヴォルフの道しるべになりつつ、ある時点になったら突き放す感じだったので、キャラクターとして一貫性があるとすれば、涼風夫人なのかなと思いました。

 

 

【アマデ:設楽乃愛ちゃん】

・ヴォルフは自ら(才能)の器でしかなく、自分の手となり足となってるだけの人間としか思ってないような冷酷さを感じてゾワゾワしました。特に小箱を取り上げたヴォルフに対して、静かに、かつ冷ややかに返却を求めて手を差し出した、あの動作だけで恐ろしさを感じました。

 

・視線も「まだ子供なのに…」と怖くなってしまうほど、ひんやりしていました。ヴォルフを演じる役者さんは、かなり熱のこもったお芝居をアマデにぶつけてくるのに、それを飄々とした顔で受け止めるのがすごい…。

 

・♪影を逃れて♪の後半は、設楽アマデの表情に注目してみました。インクが出ないことに気づいて焦る→遠くを見つめる流れで、このままだと自分には未来がない、才能の泉が枯渇してしまうことに気づいたような表情でした。

 

・ヴォルフにとってつらいことや悲しいことがあっても、アマデは淡々と作曲してるシーンがたくさんあり、きっとそういう出来事すら「才能のエサ」になってるんだろうと思うと、天才が天才たる由縁みたいなのが分かるような気がしました。何があっても筆が止まらない、なんでも創作の糧になってしまう、たとえ自分がそのことを悲しんでいたとしても、という感じなんでしょうね…。