※物語の核心をネタバレしております!
2022年に「Q:A Night at the Kabuki」を観たときに「来夏、野田地図新作上演!」との発表があり、気になる役者さんが出るならまた観に行こうと思っていたところ…まさかの再び高橋一生さんが主演!しかも松たか子さんや多部未華子ちゃんも出演!そんなん観るしかない!というわけで、今回も頑張って2公演チケットを確保して観てきました。
「フェイクスピア」も、初見は情報量が多くて大変でしたが、今作はそれ以上だったような気がします。正直「フェイクスピア」ほど腑に落ちた後味がなく、楽しめたのか楽しめなかったのかすらよくわからない状態でした。全体的には「フェイクスピア」の方が好きかなぁ…。
今回も、前半はとんちんかんなセリフやシーンのオンパレード。中盤からなんとなく不穏な空気を感じはじめ、終盤になるとモチーフになっていた事件が形を表す構成は変わりませんでした。
ただし「フェイクスピア」はとんちんかんなパートと「実はこのことについて語ってました」パートの切り替えが、非常に明確かつ鮮やかだったのに対し、今作はじわじわとその全貌を明かすような描き方だったので、「ん?あれ…のこと…かな?」と、はっきりわかるまではモヤモヤとした感情を持ち続けながらの観劇でした。
「フェイクスピア」は、誰が悪人とかではなく、襲い来る運命に立ち向かった人たちを描いていた一方、今作は加害者と被害者がいて、悪意ある人達(なのかな…?彼らだってあれは自分たちの「正義」と信じているはずなので…)に人生を奪われた女の子とその母親を描いているので、より複雑な気持ちになりました。それこそ「まだ終わっていない事件」なので。
正直北朝鮮による拉致事件に関しては、本当に基礎的な部分もきちんと把握できてるか微妙なところで、もっと深くまで知識がないと、この作品の全体すみずみまでを楽しむことは難しそうでした。
実は今回珍しく友人と一緒に観劇したのですが、その友人は新潟で生まれ育ったため、拉致問題についてはわりと身近に感じているとのこと。ということで、比較的前半から拉致問題がこの作品のテーマだと気づいてたようです。やはり「知ってる」「知らない」の差は大きいと痛感しました…。
今回の座席は2階席2列目のセンターブロック。2階から観ると、劇中の「不思議の国」の描き方が秀逸でした。銀色のフラフープみたいなわっかをいくつも繋げて、その中をアリスが通っていくことで「うさぎの穴に落ちていくアリス」を表現していたシーンが1番印象的でした。
今回は友人にオペラグラスを貸していたため、役者さんの細かいお芝居は観られずでしたが、たまには全体を俯瞰して観るのも良いなぁと感じる観劇でした。