Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.7.25 ミュージカル「レ・ミゼラブル」ソワレ公演:愛溢れる東京公演前楽

2021年ラストのレミゼは、なんと帝劇公演の前楽日でした。

 

申し込んだ時点で、前楽であることに全く気づかず、生田エポと熊谷コゼットが共演する回を、自分のスケジュールに合う日程で観たいということで確保しました(よく取れたな…)

 

それにしても今期は結局4回も観ちゃったレミゼ。私の中では「普通に好き」レベルの作品ですが、何度観ても良い作品であることは変わらないなと、改めて思いました。

 

今回はなぜかわからないんですが、「あ、レミゼってめちゃくちゃ愛に溢れた作品なんだ」っていうのをひしひしと実感する回でした。これまで観てきて、そんなことにも気づかない私がどうかしてると思うんですけど!

 

愛を感じたシーンとしては2つ。

 

1つは、テナルディエたちがバルジャン宅に盗みに入ろうとするのを、エポニーヌが体を張って食い止める場面。「エポニーヌはバルジャンとコゼットの住む家に危害を加えさせないことで、マリウスを悲しませないようにしてるんだろうな」という、そのシーンの意味やエポニーヌの気持ち・意図はしっかりわかってた、はずなんです。

 

でも、たった1人で相手にできるような人数じゃないにもかかわらず、自分の身の危険を顧みずにとっさに悲鳴を上げてまで対抗しようとするエポニーヌを見て、そのあまりにも深すぎるマリウスへの愛にじーんときてしまいました。

 

2つ目はバリケードで撃たれたマリウスを、バルジャンが下水道に引っ張っていくシーン。このシーンも、バルジャンがマリウスを助けるのはコゼットのためで、それは重々わかってたつもりです。

 

でもバルジャンがマリウスを助けるシーンなのに、背景にくっきりとコゼットの姿が浮かんだのは今回が初めてでした。佐藤バルジャンは、基本的に非常に温厚でやさしい人物ですが、コゼットを傷つける人・言葉・環境には人一倍敏感、かつ大きな怒りを抱く人なんだなというのが随所に表れていて、四六時中コゼットのことを考えていそうな感じだったので、そのあふれ出すコゼットへの愛情を、なぜかこのシーンでものすごく感じました。

 

そしてコゼットとマリウスは、いろいろな人の深い愛情にくるまれた者同士で、たくさんの犠牲の上に成り立っているカップルであることも実感しました。もちろんこれからの2人は幸せになれるんだとは思いますが、いろんな人の想いを背負って生きていくのは、なかなか大変そうだなとも思ったり。

 


f:id:der_letzte_tanz:20211118092626j:image

 

以下、キャスト別感想です。

 

ジャン・バルジャン佐藤隆紀さん】

2019年公演で1度だけ観たのですが、おそらく佐藤さんの喉の調子があまり良くない時期で、正直「これは…」と思う部分がたくさんありました。そしてご本人もそのことをすごく悔やんでたようで、並々ならぬ想いで2021年版に挑んだようです。

(ご本人のTwitterで何となく察しました)

 

私が今期3回も吉原バルジャンを観てしまったので、比較してしまうとやはりパワー不足は否めない気がしたのと、ハイトーンがばしっと出る感じもなかったです。

(♪逃ーげ↑ーーーた↑ーーーー♪は結構中途半端な音程になってたのと、♪にーよんろくごーさ↑↑↑ん♪もぎりぎり出てるっぽかったので)

 

でもセリフを話すように歌うので、レミゼを見てて初めて「ストレートプレイっぽい」と感じました。もちろん朗々と歌う場面もありますが、そういったところよりもふと口をついて出てくるつぶやきのような歌が印象的でした。

 

冒頭~司教様との出会いまでは、2019年版の吉原バルジャンが乗り移ったんか!?ってくらい荒々しく、こんな佐藤さん初めて観たなと感じました。野性味と、ただただ怒りだけが原動力となって動くバルジャン。

 

その荒々しいキャラをベースに残しつつ、司教様→ファンテーヌ→コゼットと、バルジャンにとってターニングポイントになる人たちに出会い、角が取れて丸く穏やかになる感じでした。

 

面白いなと思ったのは、コゼットを引き取るシーンで、テナルディエ夫妻に対してあからさまな侮蔑と怒りの感情を出していたこと。あと終盤、バルジャンがコゼットをマリウスに託す場面で、マリウスの手を強めに握って、なかば叫ぶように「頼むよ!!」と言っていたこと。やさしさの中にたまに見せる鋭い顔や声が良かったです。

 

「佐藤バルジャンならでは…!」と思ったのは、♪対決♪で最後にジャベールを思いっきり殴るシーン。佐藤バルジャンは殴ったあとに、自分のこぶしをハッとした表情で見つめて「…勢いで殴っちゃった…やっちゃった…」みたいな顔するのがかわいかったです。笑

 

個人的には、歌としての満足度を追求するならやっぱり吉原バルジャンかな…。物語をメインに楽しむなら佐藤バルジャンかもしれません。福井バルジャンは今期見られてないので、どうだったのか気になるところです。

 

【ジャベール:川口竜也さん】

とにかく歌声が良き…!!!!!本当にいつ聴いても素晴らしい声をしていらっしゃいます。キャラクターとしては、やっぱり「自らがんじがらめになりに行って破滅する」って感じが、2019年版の時と印象があまり変わらなかったです。

 

ちなみに2019年公演では、演出家の方針で佐藤バルジャンとは1回も組めなかったそうです。というのも、その年に初めてバルジャンを担当することになった佐藤さんと、何度もジャベールを演じている川口さんの、実年齢の差やこれまでのキャリアの違いから、2人が組むとすごくアンバランスなんじゃないかという危惧があったそう。確かに2019年の時の佐藤バルジャンを思い起こしてみると、何となくその方針にした理由がわかる気がします。

 

今回の川口ジャベールで印象的だったのは、バルジャンと最後に対峙するシーン。「ジャベールがバルジャンを最後に見逃したのは、バルジャンが瀕死のマリウスを背負ってたから」というのが、とても強く感じられるお芝居でした。

 

バルジャンがマリウスをジャベールに見せるまでは、ジャベールはバルジャンを捕まえる気満々ですし、むしろ殺意すら感じたんですが、瀕死のマリウスを見た瞬間、目に見えて動揺していて、彼が直前に見たであろう学生たちの死体、そしてガブローシュの亡骸がフラッシュバックしたんだな、と思いました。

 

「バルジャンを捕まえる」という自分の使命よりも、名もなき学生1人の命を優先したジャベール。ただジャベールは、1幕ラストで♪摘み取れ学生 どうせ死ぬのだ♪と歌ってるくらいなので、もともとは治安を乱す学生たちのことはよく思ってなかったはず。それなのにいざ「今にも消えゆく命」を目の前にしたら、そちらを助ける選択をしていました。最後の最後で、自分が貫いてきた正義を、やさしさ(ジャベールから言えば弱さかもしれないですが)で裏切る形になってしまった。そのことがいたたまれなくて、自らの命を投げ出してしまったように感じました。

 

胸をドンドンたたく仕草って、伊礼ジャベの専売特許なのかと思ってたんですけど、今回はバルジャンwith死にかけてるマリウスと対峙するシーンで、川口ジャベールも胸をドンドンとたたいて、必死に自分を律してる印象を受けました。

 

個人的にジャベールって1番わけわかんないキャラクターだなとずーーーーっと思ってたんですが、同じキャラクターなのに演じる役者さんによって微妙に背負ってる背景が違っている風に感じるので、実は1番興味深いキャラクターなんだなと、2021年版でやっとわかった気がします。

(そしてやっぱり海宝さんにはジャベールを演じてほしいなぁ…)

 

【ファンテーヌ:和音美桜さん】

和音ファンテーヌの良さは、歌ってる間にほんの少し声色を変えることで、オペラグラスで表情を見なくとも感情の揺れがはっきり伝わることだと思っています。二宮愛さんのファンテーヌも、最期の場面でそれがすごくうまかった記憶があるんですが、和音ファンテーヌは登場から最期まで「芝居歌」になっていて感情を揺さぶられます。

 

上手に歌いながら声でも芝居するって、本当にすごく大変だと思いますし、どっちもやろうとするとどっちつかずになることが多くなりそうですが、技術と表現力のバランスがしっかりとれてる印象でした。

 

そして観ている間、まったくもってナンネールお姉ちゃん(モーツァルト!)の面影がなかったのもすごい。もちろん衣装やメイクが違いますし、境遇も全く異なるキャラクターなので当たり前かもしれないですが、それでも出してる声質が全然違ってたもんなぁ。ファンテーヌは現時点では和音さんが1番好きです。

 

【コゼット:熊谷彩春ちゃん

愛らしさナンバーワンな熊谷コゼット。生来の育ちの良さがそのまま役として表れています。特に佐藤バルジャンとの(血はつながっていないけれど)「親子感」はかなり出ていて、相性が良いなと思いました。言い方が悪いですが、コゼットにちょっと執着しているような感じを受ける佐藤バルジャンが育てたら、どこか浮世離れしたふわっとした熊谷コゼットが育つのは必然だなと。

 

春ちゃんはこのまましばらくお嬢様系キャラでいくのでしょうか。いつか全然違ったキャラでも見てみたいです。あと「アナスタシア」のアーニャ役でぜひ…!絶対似合うと思う…!

 

【マリウス:内藤大希さん】

3期目とは思えないレベルのなよなよっぷり。私が仮にバルジャンだったら、意地でも天に召されずコゼットを守り抜こうとするだろうな…と思うくらい「こいつにコゼットは渡せん…!」と思ってしまうマリウスでした。笑

 

革命に参加したらむしろ足手まといになりそうでしたが、コゼットのことを話すときは異様に目がぎらぎらして見えたので、明らかに「革命<恋愛」なマリウス(マリウスとしては大正解)

 

歌は今期3人の中では一番安定してたように聴こえましたが、今年はじめに観た「パレード」の時の方が上手だった印象です。ただ♪カフェソング♪は彼の歌い方が一番好きでした。あの曲は、自分だけが生き残ってしまった申し訳なさもありますが、一番は仲間たちを失った悲しみが大きいはず。内藤マリウスは、その悲しみを最大限に伝えようとする歌い方だったと思います。

 

【エポニーヌ:生田絵梨花ちゃん】

前回観たときの「無理やりスレた感じを出そうとしてる」というのは幾分なくなったかなと…自然体で演じられていたと思います。いくちゃんが自然に声を出すと、多分コゼットになっちゃうんですけど、そちらの方がよほど聴きやすかったですし、そもそもキャラや出してる声のキーが変わってるので、そのまま素直に出したら良いのにな…と思ってます。声も表情も、もっと感情を乗せてほしいな。エポニーヌを経たいくちゃんコンスタンツェも観てみたいです。

 

【アンジョルラス:小野田龍之介さん】

小野田アンジョは、給仕バイトがとにかく面白すぎて、最終的にその印象のまま終わってしまいました…w

 

お盆に乗せたシャンパングラスを倒し、お盆をシャンパンまみれにしてしまう

→自分の服にかかったシャンパンを他の給仕さんに拭いてもらう

→お盆にぶちまけたシャンパンをそのまま飲む

→さらにオードブルの大皿を持って、オードブルの1つを手に掴み、マダムテナをしつこく追い回す

→テナが落とした銀皿をハンドルみたいにして遊ぶ

→最後は謎のダンスをひとしきり踊って去っていく。

 

笑ってはいけないレ・ミゼラブル2021(めちゃくちゃ笑った)

 

【テナルディエ夫妻:駒田一さん・谷口ゆうなさん】

テナルディエを歌で選ぶなら、駒田さんかな~と、今回観て感じました。六角テナも観たかった…!谷口さんは、普通にお話するとものすごくかわいらしい方でびっくり(カテコ挨拶で素のしゃべりを初めて聞きました)

 

 

さてさて、2023年(予定)のレミゼはどんなキャスティングになるのでしょうか。

バルジャンはそろそろ吉原さん・福井さんのどちらかが抜けそうな気がしてます。ジャベールは多分そのまま、ファンテーヌは知念さん・二宮さんあたりは抜けるのでは…。濱めぐさんも続投しなさそうです。エポはふうかちゃんが抜けるかな~それとも今期と同じ3人でもう1回あるかな…。マリウスは内藤さんが抜けて新キャスト入ると思いますし、コゼットも彩春ちゃん3期目はなさそうです。アンジョは相葉さん・小野田さんが抜けそうですが、木内さんは今期からなので、小野田さんはそのままの可能性も…?テナルディエ夫妻は今期新しく2人入りましたし、あまり変わりなさそう。

 

海宝さんがカムバックするなら、4年後か6年後かな~(遠い目)