Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.02.26 絢爛豪華 祝祭音楽劇「天保十二年のシェイクスピア」:滑り込みセーフ観劇(だったと後から知る)

2度目の「天保十二年のシェイクスピア」。


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私としては珍しく友人(高橋一生さんファン)を引き連れての観劇でした。

ちなみに友人は、宝塚は2度ほど観劇済み。ミュージカルは全く観たことがないとのこと。

 

一足先にこの作品を観ていた私は、始まる前にとにかく下ネタが多めなことと、その描写がわりと過激なことは伝えておきました。

 

が、肝心な三世次(一生さん)の登場シーンも、がっつりそんな感じのシーンがあることを伝え忘れており、♪いくはいかな~~~い♪とか歌いつつ、遊女に対して腰振ってる一生さんを見て、友人がショックでぶっ倒れないか心配でした←

 

幕間で「…ちょっと混乱してきた…」と遠い目をしてたので、大丈夫かな~と思いましたが、いろいろあーだこーだ説明したところ、なんとなく納得して面白さを少し理解してもらえたようでした。終演後には楽しかった~!!って言ってくれてたのと、もう1回観たい!と言ってもらえたので結果オーライ!!

 

(上演時間も長く、内容的にもそれなりに演劇のことを知ってる人じゃないと楽しめなさそうだったので、これは観劇初心者を連れて行ったらダメだな~とも思いました)

 

そして観劇した翌日の公演が、コロナウイルスの影響で大千秋楽になってしまい、残り2公演だった東京公演と、大阪公演のすべてが中止になるという前代未聞の事態に。

つまり私と友人が観劇した回は、図らずも前楽だったということで、本当にギリギリセーフでした。友人はこの作品を観るのを心底楽しみにしていたため、一緒に観劇できて本当に良かったです。

 

後日公式サイトに、大千秋楽での一生さんの挨拶が載っていました。

昨日まで楽しんでいた作品が、突然終わりを迎える。状況が状況なだけに仕方ないのですが、一生さんの挨拶にもあるように「有事の際に真っ先に切られるのは娯楽だけど、その娯楽は人の心を豊かにするもの。決して無くなってはいけない」と私もひしひしと感じました。

 

 

今回は全体の印象や、劇中印象的だった場面など、メモ書きレベルの感想です。

 

 

・不思議なことに、たった2度、それも2週間空けて聴いたのに、劇中歌のメロディをかなり覚えてました。記憶がすぐ飛ぶ私としてはとても珍しいです。笑

(仕事中、脳内で王次が♪おんなぁ〜!おんなぁ〜!♪と歌うのはやめてほしいですがw)

 

・あとセリフ回しが全体的にとてもリズミカルなことに気づきました。ものすごく生々しいセリフのはずなのに、なんとなく耳ざわりよく聞こえるのは、聞いてて心地の良いリズムで言葉が発されているからなのでは…と思います。

Blu-rayを購入したあと、定期的に見たくなるのもこのせいだと思ってます。笑)

 

・東京公演もそろそろ終盤だったためか、カンパニー全体の熱気がより高まってる気がしました。特に一生さんと浦井さん、それぞれのキャラクターのぶっ飛び具合が、2週間前に比べるとレベルアップしてました。2人ともぶっ飛んでたな~。

 

・一生三世次は、より不気味さが増し、それと比例するように哀れさも増していました。三世次は誰がどう見ても【悪】なんですが、一筋縄ではいかないとても多面的な悪。彼が顔だけでなく、中身も醜くなってしまった理由は、必ずしも彼自身が持って生まれたものだけでなく、周りが彼にした仕打ちだったり態度だったりで、三世次の半分は「世間に作られた悪」なのではないかなぁ…と感じさせられました。そしてそう観客に思わせるお芝居ができる一生さんは、やっぱりすごい役者さんなのではないか…。

 

・一生三世次、やや声がお疲れだったのか、語尾をがなるように歌ったり話したりする印象が強かったです。前回はあんなに乱暴な歌い方してなかったような気がする…とはいえ一生さんの場合、それすらもお芝居の計算のうち、ということもあるので何とも言えないですが。

 

・日常で使いたい三世次のセリフ

「今年はあほうの当たり年かねぇ!?!?!?!?!?」

 

・三世次の客席降りシーン、前回は空席に座ったあとものすごくふざけていたのに(笑)この日はすっごくおとなしく舞台をじーーーーっと見ていました。おかげでおさちとお里のやり取りがしっかり見られたので、もしかしたらその辺に配慮したのかな…?前回は舞台上のお芝居そっちのけで、みんな三世次に注目していたので。笑

その後、お文に促されて舞台上に戻るときは、舞台上手側の最前席の人が持っていたパンフレットをひったくり、ぱらぱら~と中身を見て、王次のページでぎょっとした顔をしてましたw

 

・2幕でどんどん出世して、それに応じてクズっぷりも増していく三世次が、清々しくてすごく好きです。おさちに自分を殺させようとして、それができないなら自分と一緒になれと三世次が迫るシーン。階段にさかさまに寝っ転がった後に暗転して退場…なんですが、暗転したあとも三世次が嘲るように笑い続けててめちゃくちゃ怖かったです(震)

 

・三世次が清滝に自分の旅籠を建てた時に、暖簾から満面の笑みで出てくるシーン。三世次が登場するシーンの中で唯一の癒しでした。あの場面だけ笑顔にまったく邪気がなくて、三世次が可愛く見えました(一生さんすごい)

 

・三世次のセリフは、特に言葉遊びが洒落ていたように思います。シェイクスピアの戯曲のセリフは「わざわざそんな言い方しなくても…」みたいな遠回しな表現がたくさんありますが、この作品ではそれが活かされてるな~~と思いました。

 

 

・クライマックス、おさちが三世次に鏡を見せるシーンが大好きすぎる件。

「自分で自分を殺すなんてそんなドジ、俺が踏むわけないだろう」と高を括ってた三世次が、愛するおさちに自分で自分を殺すように仕向けられる展開。

おさちが自ら命を絶って悲しむ人間らしさを見せる三世次。

三世次が今まで直接手を下した人たち、直接手は下してないけれど結果的に三世次が殺したと言える人たちが苦しむ三世次を見下ろすだけでなく、客席が鏡に映って観客全員で三世次の最期を見届ける演出。

全部に私の「好き」が詰まっていました。

そういえば藤田さん、「ジャージー・ボーイズ」の時も鏡に客席を写す演出していましたが、ああいう客席を巻き込んだ演出が得意なのでしょうか。

 

・今回は2階席の最前列ど真ん中の席で、(手すりがやや邪魔でしたが)それはそれはものすんごい見やすい席でした。三世次の屋根上での最期が、文字通り目の前で繰り広げられていて最高でした。舞台とは少し距離があるので、オペラグラスでのぞいていたら、三世次のギラギラした瞳と目が合った気がして、恐怖で身が縮みました。あの目、忘れられないなぁ…。

 

・三世次は本っっっっっっっっっっっっっっっっっっっ当~~~~~~に「私が見てみたい高橋一生」の具現化でしかなかったです。お忙しいのに舞台に出てくれてありがとうございます。そしてチケットをちゃんと確保できた私の運もありがとう←

 

・そいえば歴代の三世次役は唐沢寿明さんや上川隆也さんが演じていたそうで、それはそれでめっちゃ見たい…!!!!!!!!!!!DVDがあるそうなので、いつか見られたらなぁ…。

 

・浦井王次は、今回なぜか登場時に拍手が起こってテンションが上がったのか(?)、ソロナンバーの間の一挙手一投足がはっちゃけすぎてて、見てる間「王次ー!」ではなく「浦井さんwwちょっと待ちなさいww」ってなりました。諸々の動きが完全にアウトでしたぜ王次…。

 

・全体的に血みどろな作品ですが、王次、というか浦井さんがほぼ1人で清涼剤の役割を果たしていました(お光もキャラ変すると癒しでしかなかったけど…w)というわけで、王次が出てくるとホッとできました。まぁ登場シーンの半分は下ネタ絡みでしたが(真顔)

 

・「生きるべきか、死ぬべきか」の翻訳を、ただ延々と言うだけのあのシーン大好きですw日本最古の翻訳が予想の斜め上で笑いすぎて泣きましたw

 

・物語の軸となる、お文とお里の仁義なき女の戦いは、ドロドロしてるけどかっこ良かったです。私はどちらかというと、土井ケイトさんが演じるお里のほうが好きでした。

 

・隊長…!!木場さん…!!御年70歳なんてとても思えません!!!!!!!!この作品は、とにかく濃ゆいキャラクターに濃ゆい場面の連続なので、ともすればバラバラになりそうなんですが、木場さんは前演出でも隊長を演じていたらしく、作品をきっちりまとめ、カオスな世界の素敵な案内人でした。もし再演があれば、また是非出てほしいです…!

(ちなみに1年後、ドラマで一生さんの父親役を演じるとは思いもよりませんでした。笑)

 

・本筋との繋がりが未だによく分からない(笑)佐吉と浮舟のパートも何気に好きでした。木内さんのロミオと、彩春ちゃんのジュリエットが見てみたい…。

 

 

初めて見たときはやや呆気にとられた作品でしたが、2回観劇して大好きな作品になりました。今回あまりにも悲しすぎる幕切れになってしまったので、同じキャスト…は難しいと思いますが(特に一生さんは難しそう…)いつか絶対に再演をお願いしたいです!!!