Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

ドラマ「インビジブル」:素材が良くて調理法が残念な一品

www.tbs.co.jp

 

*全然褒めてない感想。このドラマがお好きだった方はUターン必須です。

*ネタバレもしてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高橋一生柴咲コウ、再共演!」という宣伝文句に惹かれたのが、ドラマ「インビジブル」を見ようと思ったきっかけでした。

 

一生さん&コウちゃんと言えば、大河ドラマ「おんな城主直虎」で、女城主とその側近を演じ、お互い憎まれ口をたたきつつ実はめちゃくちゃ信頼しあっているという、最高のコンビを見せてくれたお2人。ドラマ史に残る政次(一生さん)の壮絶な最期も印象的で、あのお芝居の化学反応がまた見られるのか…と、第一報を聞いたときはわくわくしておりました。

 

ところがその後、ポスタービジュアルが発表され、共演者が発表され、予告編が発表されるにつれ、「…なんか嫌な予感しかしない」(真顔)とわくわくよりも不安が勝っていき…。1話を見た時点で、「あ、やっぱりなんか思ったものと違ってた」と予感が的中してしまいました。

 

金曜22時で凸凹感のあるバディもの、といえば、私が大ハマりした「MIU404」。今回のドラマも、あのような雰囲気の作品にしたかったんだろうとなんとなく感じましたが、以下2点で決定的に差がついてしまったのでは、と思います。

 

まず1点目。誰がどう見ても明らかですが、あまりにも脚本が弱すぎました。

 

大筋はありながらも1話完結で、回を重ねるごとに志村とキリコの不思議な絆が強まっていく…のだと思っていたのですが、最終回に向かうにつれ、むしろ「志村と猿渡」「キリコとキリヒト」のやり取りが増え、志村とキリコのやり取りは減っていったように思います。

 

また「猿渡が黒幕でした」というのも、いまいち意外性に欠けていたのはなぜだろう…。「実は犬飼課長が生きてました~!悪者でした~~~!」という方が面白そうだったり(こら)

 

「悪役」になったきっかけが特になく、生まれながらのサイコ〇スで「志村の苦しむ顔がいとおしくて、もっと見たいから生かしておいた」という、ただただ生粋のド変態だった猿渡のキャラはまぁまぁ好きでした(たまにある「昔虐待されてて愛されることを知らなくて…」とか「最愛の恋人を亡くして…」とか、「悪くなることへの理由」をつけた悪役はよくあるので)

 

とりあえず全体的に詰めが甘いとしか言いようのないお話の作り方だったな…。

 

そして2点目はキャスティング。個人的には脚本よりもこっちが気になりました。

 

とにかく「主役2人ありき」というか、あの2人以外の役者さんたちが正直色んな意味で微妙。(誰とは言いませんが)役者としての力量があまりない人、役者としての経験は豊富なのにあまり活躍の場がなかった人、ゲスト出演も「?」と思う人がおり(特に2話)、もうちょっとどうにかならなかったのかなぁと思います。メイン2人が頑張れば頑張るほど、周りとの空気感の差が生まれてしまい、特に警察署内のシーンが学〇会のように見えてしまいました。

 

あとこれは役者さんのせいではないですが、亡くなった兄の同僚、しかも先輩を「たかちゃ~ん♡」と呼ぶあの子は一体何だったんだろうか(真顔)あの妙に媚びたようなお芝居のせいか、彼女が誘拐され理不尽に殺されそうになる話でも、特に何も思わなかったんですが(真顔)そのあたりの背景や過去も全く描けてなかったよな…(安野さんが殺される回想シーンは100回くらい流れてたけど)

 

キリヒト役も、彼は技量のある役者さんだと思いますが、「MIU404」で菅田将暉さんがいきなり登場したあのインパクトには到底及ばず、キャラとしても妙に「シスコン」な感じを醸し出していたため、もう少し薄気味悪さがあったも良かったように思います。

 

これだけ文句を言いつつ、なんだかんだ最後まで見られたのは、やっぱり一生さんとコウちゃんのおかげ。

 

一生さんは、映像作品で主役をやるなら正直「岸辺露伴は動かない」とか、より硬派な作品の方が合ってそうな気はするのですが、相手のセリフや反応による「受け」のお芝居が本当にうまいと思いました。9話でバディを組むことになった猿渡のことを、裏切りものだと確信しているのか、まだ信じていいものか、迷いのあるようなお芝居が特に好きでした。

 

コウちゃんは役によって劇的にお芝居が変わる人ではなく、自分の個性に役を引き寄せる役者さんだと思っているのですが、キリコは茶目っ気もあってかわいらしい部分もありつつ、常に隙を見せない壁も感じさせるのが上手でした。金髪めっちゃ似合ってるし、どんなとんちんかんな衣装着ても全部似合っちゃうのもすごい(尊敬のまなざし)

 

メインの2人と大まかな設定はそのままに、脚本とキャスティングをまるっと変えて作り直したいドラマでした。

2021.10.2 劇団四季「アナと雪の女王」マチネ公演:凍りつく世界を観るなら2階から

 

劇団四季アナと雪の女王」2度目の観劇。

 

この日のキャストの3分の2くらいは、初日に登板されていた方々でした。一度は初日公演の組み合わせで観たいなと思ってたので嬉しかったです!

 

この日の席は2階前方。全体的な満足度は、前回1階席で観劇した時よりも、今回の方が高かったです。もちろん初見の感動は初見でしか味わえませんが、この作品は総合的に観ると、2階席からの方が素晴らしいと感じました。

 

というのも、1階からだとほとんど見えないのですが、実は床を使った演出がかなり多め。特にエルサの精神が不安定になると、彼女の足元がみるみるうちに凍っていくという、キャラクターの心情の描写を助ける演出がほどこされていました。あの「床」の演出も含めて1つの作品だとすると、圧倒的に2階席がおすすめです。

 

2階席前方であれば、「役者さんたちの細かい表情までじっくり観たい!」というわけでもない限りは、オペラグラスもいらないと思いますし、アンサンブルさんが作る各場面のフォーメーションもキレイに見えました。引きで観るからこその絵画のようなシーンがたくさんあったので(例:エルサの戴冠式シーン)、今後もし「アナ雪観たい!」という友人を連れていくとしたら、絶対2階席にしようと思いました。

 

作品自体の感想は…うーん、初見と特に変わらず、でした。なぜあまりリピートしたいと思えないのか…。本当に素晴らしいと思うんですけど、「刺さるか、刺さらないか」で言うと正直そこまで刺さってないです…。

 

あ、2幕冒頭に出てくるオーケンさんのお店に、「スターウォーズ」シリーズのポーグのあみぐるみと、メリーポピンズが持っている鳥の頭がついた傘があったのを発見できたのは嬉しかったです。笑


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以下、キャスト別感想。

 

【エルサ:岡本瑞恵さん】

・キャラクター像としては、個人的には三井エルサの方が好きかな…と思いましたが、これは贔屓目もあると思うので。岡本エルサは「さすが」の一言に尽きる、という印象でした。特に歌声での説得力や力強さは、この時点では岡本エルサに軍配が上がると感じましたし、初演初日キャストに選ばれたのも十分納得のパフォーマンスでした。

 

・1幕ラストの♪ありのままで♪は、文字通りどんどん「自分らしく」力を解放していく岡本エルサの歌声と表情に、客席のボルテージも上がっていくのを肌で感じました。ラストの♪すこーしも寒くないわーーー!♪(マントばさぁ!&暗転)で、とんでもない熱量の拍手と「我々はいったい何を目にしたんだ…!?」というような興奮状態の客席のざわめきがすごく印象的でした。いやー…あの曲は歌い損じたら本当にやばいんだろうなぁ…(ネガティブ思考)

 

・♪ありのままで♪1番のサビの最後の♪すこーしも寒くないわ♪で、にこっとしながら小首をかしげた岡本エルサ、好きです(告白)

 

・岡本エルサは、ひたすら「孤独」だなと思いました。戴冠式でたくさんの人に囲まれているのに、彼女の周りには透明なバリアがあって、アナと話すときも一見嬉しそうには見えるんですが、決して心からの安寧は得られていなくて、観ているこちら側の胸がときどきぎゅっとなるエルサでした。2幕で氷の城に籠っている時も、人目を気にせず力を解放できて少しはほっとできていそうなのに、あまりそうは見えませんでした。

 

・で、やっぱり私、岡村美南さんエルサが観てみたいのですが、どうでしょうか…。初演オーディションにも候補でいらっしゃったし…。

 

【アナ:三平果歩さん】

・初見の回よりも、役がより身体に馴染んでいた印象でした。あと前回は確か初日からずっと連投されてたので、今回の方が元気に感じました(気のせいかも)

 

・ときどき声にドスがきいてたのはご愛嬌?やんちゃというかちょっとヤンキーっぽさもありました。笑

 

・ハンスと初めてキスするシーン、めちゃくちゃガッツポーズしてたのには爆笑でしたw前回もあんなことしてたっけ…。

 

・アナ役で観てみたい四季の役者さん、私の中では結構いらっしゃるんですが、今後どの役者さんがキャスティングされるのか、かなり楽しみです♪

 

【クリストフ:神永東吾さん】

・全編にわたってややポーカーフェイス気味な神永クリストフ。アナと出会ったばかりの時は良いと思うんですが、肝心なアナへの愛があまり感じられないのはなぜ……。ちなみにスヴェンへの愛は感じました。笑

 

・三平さんとは兄妹役とかの方が似合いそう…と思ったのですが、そういえば「リトルマーメイド」でもプリンセス&プリンスで共演されてましたね…!

 

【オラフ:小林英恵さん】

・すご~~~~く気になっていた小林オラフ。あまりにも可愛すぎていとおしすぎて、2階から飛び降りてハグしに行こうかと思いました(おやめくださいお客様)

 

・山田オラフはばっちり映画版オラフでしたが、小林オラフはピュアな男の子でまた全然印象が違ってました。でもちゃんと「オラフ」でした。個性とキャラのバランス感が素晴らしかったです。

 

・♪あこがれの夏♪は女性用にキー変わってた…のかな?違和感なかったのでそのまま…??

 

・パペットの表情とのシンクロもぴったりで、どれだけ練習を積めばあのレベルまで到達するんだろうと感動しました。

 

・ちなみにおさげ髪にして白いポンポンのついたヘアゴムを付けてて、個人的にはそこもきゅんとしました♡これも女性ならでは!?なのでしょうか。

 

【ハンス:杉浦洸さん】

・「ザ・いい声」な杉浦ハンス。ただし前回観た時よりもうさん臭さが100倍増しで、今回はしっかり「あ~これは最後に裏切りますね~」と感じられました。以前とは雰囲気が変わってたなぁ…。

 

・♪とびら開けて♪の間奏部分で突如\あちょぉぉぉぉ!!!!!/とか叫び出したので、何事かと思いました。笑

 

【その他のキャスト】

・阿部オーケンの♪ヒュッゲ♪前のアドリブ?が面白くて、

「うわぁぁぁぁぁぁぁたくさんの人間~~~!12、3万人いる~~~~~!」

「1階席のみんなー!トイレから戻ってきてくれてありがとう〜!」

「2階席のみんな〜!手がカサカサになるまで消毒してくれてありがとう〜!」

「天井で浮遊してるみんな〜!早く成仏して〜!」

爆笑でしたwあれ毎回考えるのしんどいだろうな…。

 

・松本奈緒さんのバルダがめちゃくちゃ「母性」に溢れてて、完全に親バカママでした。\うちのクリストフのどこがいけないの!?!?!?/の後に膝から崩れ落ちちゃうの、お茶目すぎてかわいい(拝)

 

・ヤングアナ役の三上さくらちゃん、とっても良かったです!子役を見てるとたまに感じるあざとさが少なく、ナチュラルなお芝居に感じました。まだ緊張が取れないのか、やや仏頂面になってしまっている部分もありましたが、話し方や歌い方が自然な子供らしさで、見ているこちらも自然にかわいいなぁと思えました。

 

2021.9.25 ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」ソワレ公演:『ジャック』は一体誰だったのか

回目の「ジャック・ザ・リッパー」。

今回はWキャストをまるっともう片方の方々に変えた組み合わせでの観劇でした。

 


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*物語についてのネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

展開やオチがわかっているのに、あの怒涛の1幕ラストの曲で「かっこええええ!!」と興奮し、2幕の♪俺がジャックだ♪でわくわくして、カオスたっぷりなクライマックスであっけにとられる…という、初見と全く変わらないリアクションをしてしまいました。笑

 

決してハッピーな作品ではないですが、後を引きずるような暗さや重さはないですし(*個人感)謎の中毒性があって何度でも観たくなります。当日券あればもっとリピートしたのになぁ……(緊急事態宣言よ………)

 

この回は土曜日のソワレだったんですが、2階席は信じられないくらいガラガラでした。コロナ禍が始まった2020年3月に観た「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」も、同じく日生劇場の2階席でしたが、正直その時よりも今回の方が空席目立ってました。

 

私はA席の2階席後方センターブロックでしたが、なぜかそのブロックだけはほぼ満席で、S席センターブロックにはおそらく10~15人くらい、サブセンターブロックにいたってはおそらく5人程度というガラガラっぷり。売り止めになっていたはずなので客席50%は収容されていたと思うんですが、ということは1階席はほぼ埋まってたのかな?状況的に仕方ないにせよ、あまりの空席っぷりにもったいないなと思いました。

 

そして前回は気づかなかったんですが、上演時間めちゃくちゃ短くないですか…?17時に開演して、休憩20分挟んで19時35分くらいに終わってました。1幕はきっかり1時間くらい、2幕も75分くらいなので、あの超スピーディーな展開にも納得です。

 

2階席から観たからか、舞台に奥行きや立体感をより感じられたので、前回よりも「ロンドンの街」っぽいなと思いました。橋のセットの奥からジャックが登場するとき、奥の階段から登ってくるシルエットがよく見えたので、不気味さも増してました。

 

ところで物語の結末について。私は素直に受け取って「ジャック=ダニエル」で解釈してたんですが、「アンダーソンはコカイン中毒で脳までやられてるからひょっとして…」という説を聞いて震えました…。そういえば「自分の名前さえわからない」みたいに歌ってたな…。(ジャック=特定の誰か、というよりも、誰の心にも棲みつく悪とぼんやり捉えるのが一番かなと最終的に思いました)

 

以下、Wキャストのみの感想。

 

【ダニエル:小野賢章さん】

・名前は存じておりましたが、なにせ洋画は字幕派なため「ハリーポッター」の吹き替えはほとんど見たことがなく、小野さんが声優であることは知ってる程度の知識で観ました。さすが声のお仕事を長年されているだけあって、声のトーンを自在に上げ下げすることで、ダニエルの感情の動きを表してました。2階席後方から観てても思わず「今どんな表情してるんだろう?」と、オペラグラスで思わず追いかけたくなるような、見事な声のお芝居でした。

 

・歌もお上手ですね!?と思ってたら、2017年版ロミジュリでマーキューシオ役だったとな…!なるほど!!でも雰囲気ベンヴォーリオっぽくない!?

 

・ご本人が醸し出す雰囲気がおっとり&優しめ&天然っぽかったので、医師としての研究にまっしぐらで世間知らずな印象を受けました(なので特に1幕はしっくりきました)娼婦であるグロリアに一目ぼれして、彼女がどんな仕事ををしていたとしても関係ない!僕がアメリカに連れて帰って幸せにするんだ!って宣言する流れに納得がいきました。木村ダニエルは「今まで何度も恋してきたけど、本気になったのはグロリアが初めて」で、小野ダニエルは「本当に人生初の恋」なんだろうな。

 

・温和だからこそ、実は自分が殺人を犯していたときの哀しさは、小野ダニエルの方が浮き彫りになってたように思います。木村ダニエルはジャックとの親和性(???)が高くて、グロリアのために狂ったというよりも、グロリアでさえ殺人を正当化する理由にして殺人を犯す快楽に走った感じもあったので。小野ダニエルは「ごめんなさいごめんなさい」って連呼して泣き笑いしながら殺してそう(それはそれで怖い)

 

・ちなみに小野ダニエルの髪型にはあまり納得いかず…。もふもふパーマ。最後まで気になってしまいました。

 

【アンダーソン:松下優也さん】

・「サンセット大通り」以来の松下さん。苦悩するごとに色気が増していく加藤アンダーソンに比べると、そもそも生きることすらめんどくさそうなうえに、誰にも期待しない・信じないみたいな諦念を持って生きてるアンダーソンでした。生きながらにして死んでる…という印象。おそらくポリーと別れてからそうなっちゃったのでは。

 

・とにかくずーーーーっとテンションが低いので(声を荒げるシーンも低めテンションを保ちつつの叫びでした)、エンドレスハイテンションな田代モンローとの対比がはっきりしてて面白かったです。

 

・冒頭、事件報告書を燃やすシーン。加藤アンダーソンは事件報告書をライターで燃やす→その火でタバコに火をつける、でしたが、松下アンダーソンはまずタバコに火をつける→事件報告書をライターで燃やす、という逆の流れでした。

(ちなみにお芝居か本気かわからないですが、手が震えたのかタバコ落としてました)

 

・唯一ポリーと再会したときは、ちょっともじもじしたりして一気に少年のようになってたのが印象的でした。そりゃポリーが放っておかないし、なんでもお願い聞いちゃうわけだわ…(号泣)(今回2幕のポリーのソロで泣きました)

 

・歌は堂珍ジャックに似て、少しポップス曲を歌うような感じで異質さを感じました。(そういえば堂珍ジャックと松下アンダーソンの回って存在しなかったような…?)劇中もカーテンコールのメドレー歌唱も、最後をオクターブ上げしててめちゃくちゃかっこよかったです。

 

・松下さん、生執事初代セバスチャンですし、ジャック役も!!!!!!!!!!!どうですか!!!!!!!!!再演でやりませんか!!!!!!!!!!!!!!絶対かっこいいと思うんですよ!!!!!!!!(近所中に響き渡る大声)

 

【ジャック:加藤和樹さん】

めっちゃ楽しそうだな。

…というのが、加藤ジャックを観ている間の感想の9割を占めています。笑

 

・加藤さん出演作は「ファントム」くらいしか観ていないのですが、過去の出演作を調べる限り悲劇に見舞われる役柄が多く、今回もアンダーソンは悲劇に見舞われる男ですが、ジャックは悲劇をばらまく男なので、加藤さんにしては珍しいキャラクターなのかもしれません。それにしても本当に楽しそうだったなぁ。笑

 

・堂珍ジャックが結構ごりごりにメイクしてたので、加藤ジャックももう少しメイク濃ゆくて良いのでは?と思いましたが、堂珍ジャックがどこか浮世離れした「死神」っぽかったのに対し、加藤ジャックはより人間味があり「殺人鬼」だなという印象でした。ただしダニエルのみならず、アンダーソンやモンローまでを巻き込んで、全員の運命を手のひらで転がしてる感じは加藤ジャックの方が強かったと思います。例えるなら「デスノート」の死神・リュークのように「人間っておもしろいなぁ」と思ってそうなジャックでした。

 

・歌は、歌詞が聞き取りやすかったのは加藤ジャック、歌声によるジャックのキャラクター表現としては堂珍ジャックが好きです。

 

・加藤ジャックも松下アンダーソンに負けじとオクターブ上げしててかっこよかったです!

 

というわけで、予想以上にたっぷり楽しんだ「ジャック・ザ・リッパー」でした!

2021.9.20 ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」マチネ公演:スリルと興奮と勢いの良さと


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※物語の決定的なネタバレを含みます。

※一部役者さんについてネガティブな感想を記しています。

 

 

 

上演発表時から「こりゃ面白そうだな~」と思い、最初は1公演だけチケットを取っていました。が、宣伝動画や記事を見て、「もしかしたらすごい好きな作品かもしれん…」という予感がして、緊急事態宣言が発令されてチケットが売り止めになる前に、賭けでもう1公演足してみました。

 

やっぱ自分のことは自分が一番わかってるもんですね。

(チケット足して大正解)

 

全体的な感想。

すんごい面白かった(ここ大事)

いや、ツッコミどころめちゃくちゃあったんですけど、勢いがすごくてもう全部納得しました(単純)かなり好きな部類のミュージカル。ただしオールタイムベストには入らないかな…でもいろんなキャストで観てみたいと思える作品でした。

 

そもそも物語が純粋に楽しめたミュージカルって、結構久々なのでは…。

(「マタ・ハリ」も物語として面白かったんですが、結末を知っていた上にロマンス要素が多めだったので…。本作もロマンスはありつつ、よりダークでサスペンス要素が強くて好きでした)

 

結末は、観る前からなんとなく「ダニエルが愛ゆえにジャックになりかわるとかだろうな」と予測はしていましたが、想像以上のカオスっぷりに「えええええ!?」でした。とにかく勢いがすごかった。

 

時系列があっちこっち飛ぶので、結構ごちゃっとした印象は正直ありました。一応舞台上に「〇年前」って出たり、役者さんが明らかに違うオーラで演じてたりするので、「理解するのを途中で放棄しちゃった…」みたいなことにはならずに済みましたが。

 

冒頭のシーンが最後のシーンに繋がったり、印象的なシーンがあとでもう一回出てくることで「ああ、そういうことだったのか」って繋がるのが、ミステリー小説っぽくて好きでした。

 

楽曲はがっつり「これ!!!!」という曲は初見ではなかったんですが、どの曲もかっこよかったりメロディーが美しかったりと、聴きごたえがありました。

 

本作は元々チェコで作られたミュージカルで、それを韓国でアップグレードしたところものすごい人気になったそう。今回の日本版は、その韓国版を輸入して日本初演として上演してるようです。おそらく今後再演を繰り返していく作品になるんだろうと思います。

 

舞台セットの世界観がめちゃくちゃ好みでした。まさしく、しとしと雨が降ってばかりのロンドン(行ったことないけど)全体的に暗めなセットの中で、時折出てくる「赤」が映えてました。

 


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キャスト別感想。

 

【ダニエル:木村達成さん】

・ダニエルは上演開始23分くらいで登場するので(ご本人談)、正直1幕ではあまり主人公っぽさを感じられなかったんですが、2幕を観ると「あ、ダニエルが主人公なんだな」と思えました。ただ命を落とす結末なので、生き残ってるアンダーソンが最後にまた主役っぽくなるんですけど…。上演開始からしばらくして登場して、観客の意識を引き付けるのってすごく難しいんだろうな。

 

・木村ダニエルは「とにかく明るいサイコ〇ス」。元々陽の雰囲気をまとってる方なので、一見ダークサイドに落ちる感じはないんですが、そういう人が闇に堕ちると普通の人よりもより深く落ちていくんだな…と思いました。

 

・よく考えると、ダニエルって「アメリカでは死体を解剖に使うと違法になるから、イギリスで解剖に使えそうな死体探しに来た」という目的で海を渡ってるので、医学の発展のためとはいえ実際ずっと「やばいやつ」。ただし木村ダニエルの太陽のような明るさについ騙されてしまいます(?)

 

・「エリザベート」のルドルフ役でも思ったんですが、生命力強そうなので「死」という概念から最も遠い存在の印象です。この日の終演後に行われたイベントで達成さんのお話を聞く機会があったんですが、「身近な人が命の危機にさらされたとして、お金を費やすことで助かるならまだしも、自分の命と引き換えに助かるってなったらちょっと考えちゃうな…」とおっしゃっていたので、ご本人が「生きてて超ハッピー!人生楽しい!!」という気持ちを強く持ってそうです(あくまでも推測)

 

・1階席最後列からでもわかる、目ヂカラの強さ。最高。

 

・とあるシーンで狂気を纏った木村ダニエルを見て、めっちゃいい表情するんだなぁ…!!と思いました。ルドルフは闇落ちするとはいえ、木村ルドルフはそこまで狂気を感じる演じ方にはしていなかった(と私は思う)ので。

 

・これまで私が観てきた達成さんのキャラクターは、どちらかというと明るくて朗らかだったり、面白みがあったり、悲しい運命を背負っていても穏やかなイメージだったので(「CALL」のドローン役とか、「銀河鉄道の夜」のジョバンニ役とか)、純度100%の狂気のお芝居は初めてでした。娼婦の死体から臓器を抜き出したときの高笑いや、2幕の後半、ジャックとダニエルが入れ替わって「木村ジャック」になってる時の表情など、観たことのない表情がたくさん見られて良かったです。悪役にも挑戦してほしい~!

 

・歌は、どの曲でもどんなお芝居や動きをしてても安定感があり、歌詞も明瞭に聞こえました。ちなみにイベントでは「自分が観劇してて何歌ってんのかわからないのが一番ストレスです」とご本人がおっしゃっていたので、歌詞の聴こえ方は特に大事にされてるのかなと。歌唱ノンストレスなおかげで物語にしっかり入り込めましたた。

 

・カーテンコールでは各キャラクターのソロ楽曲をメドレーで歌い継いでいたのですが(これ最高でした)、劇中ではなかったオクターブ上げに挑戦していてかっこよかったです…!

 

・今回のダニエル役を観て、「木村ヴォルフめっちゃ観たい~~~~~~~~~」ってなりました。将来的に甲斐ヴォルフとWキャストとか…ありえるのでは!?

(ただ最近の達成さんは、ミュージカル・ストプレ・映像作品問わずなんにでも挑戦してる印象で、個人的にはその姿勢が素晴らしいと思ってるので、ミュージカルのみにとらわれず色んな作品に挑んでいただきたいと思ってます)

 

【アンダーソン:加藤和樹さん】

・実質主役なアンダーソン。加藤さんはなぜかジャック役も兼任していたため、マチソワでアンダーソンからのジャック、なんてこともあったり。それでなくても年中無休で引っ張りだこな役者さんで、あの作品が終わったらこっちの作品とお忙しくされてるので、よく体力が持つな…と思ってます。

 

・加藤アンダーソンは、中の人の持ち味もあってか、苦悩すればするほど、人間としての魅力が増してました。コカインも吸わず、ギャンブルもせず真っ当に仕事をしていた時よりも、今(=この作品の中での現在)の方が色気もあるし、年齢を重ねた深みもあるので、周りが放っておかないんじゃないかな…。だからポリーも、何も聞かずに彼の頼みを聞き入れたんじゃないかと思ったり。

 

・ところでコカインをキメる演技が真に迫りすぎてて心配になりました(真顔)

 

【ジャック:堂珍嘉邦さん】

・たった1人、歌い方も声も「異質」。ものすごくハマり役なのでは…!?ジャックという役柄にぴったりな声をされてると思いました。あとかっこいい!

 

・ケミストリーとして歌ってる時の声や歌い方と全然違うので、本当にケミストリーの人!?ってなりました(小並感)

 

・遠くからじゃよくわからなかったんですが、共演者の方と写ってる写真を見ると、赤いカラコンをされてるようでした。気合の入り方もすごい。

 

・ひょこっと出てきて、ダニエルの心にいたずらしてひょいっと帰っていく、まさに神出鬼没の悪魔のような男でした。

 

【グロリア:May'nさん】

・(彼女のファンの方には申し訳なくも)「うむ…………」という印象でした。ほとんどの楽曲は声のキーが合ってるから別に何とも思わなかったんですが、肝心のソロ楽曲が…裏声との切り替えが…。声の調子が悪かったんでしょうか。

 

・1幕の希望に満ちたお芝居はとても良かったんですが、2幕で心も体もズタボロになってるのに、妙に元気の良い声色なのもちょっと気になりました。発してるセリフは弱々しいのに「グロリア元気じゃん…?」ってテンション(に私は聞こえました)

 

【ポリー:エリアンナさん】

・1幕の冒頭と、2幕の後半、それぞれ少しずつの登場なので、正直めっちゃもったいない。ですが、だからこそインパクトは抜群でした。ダニエルとグロリアの悲恋より、アンダーソンとポリーの悲恋をスピンオフで観たいくらい、彼女の過去や人物背景がにじみ出たお芝居や歌唱だったと思います。

 

【モンロー:田代万里生さん】

・「マタ・ハリ」に続き、悪役…とまではいかないものの、かなりねじまがったキャラクターだった万里生さん。モンローはラドゥより癖があったように感じました。それにしてもこういう役を演じている田代さん、めちゃくちゃ生き生きしててすっごく楽しそう。笑

 

・田代ルキーニを観てみたくなったし、成河モンローも観てみたくなりました。

 

久々に自分好みの作品に出会えて満足な観劇でした!

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」(2022年):スピルバーグ監督の「愛」

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」

 

監督:スティーヴン・スピルバーグ

出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、デビィット・アルヴァレス、ジョシュ・アンドレ・リベラ、コリー・ストール、リタ・モレノ、マイク・フェスト、他

 

<あらすじ>

ニューヨークのウエスト・サイドには、夢や自由を求めて世界中から多くの人々が集まっていた。しかし、差別や偏見による社会への不満を 抱えた若者たちは、やがて仲間と集団を作り激しく敵対し合っていく。ある日、“ジェッツ”と呼ばれるチームの元リーダーのトニーは、対立 する“シャークス”のリーダーの妹マリアと出会い、瞬く間に恋に落ちる。この禁断の愛は、多くの人々の運命を変える悲劇の始まりだった...。 

https://filmarks.com/movies/81473

 

<感想>

事前に1961年のオリジナル(?)版を鑑賞。さすがに古さを感じつつも、楽曲の素晴らしさが印象深い作品でした。

 

そんな往年の名作を、巨匠・スピルバーグ監督がリメイクした今回の映画。細かい設定はところどころ変わっていましたが、予想よりもはるかにオリジナルに沿っていて、一応新作のはずなんですが、懐かしさを感じさせる作りになっていました。スピルバーグ監督からオリジナル版への尊敬の念と愛を、スクリーン越しにびしびし感じました。

 

一方で1961年版を見ていて、あまり納得のいかなかったシーンや流れがわかりやすい描写になっていた印象もあり、そういった意味では「新しさ」を感じました。


例えば♪America♪の歌唱シーン。

1961年版は、夜に屋上で歌っていたと思いますが、今回は真っ昼間の街の中でいろんな人たちを巻き込んでのミュージカルシーンになっており、見応えたっぷりでした。このシーンに限って言えば、完全にスピルバーグ監督版に軍配(そもそも1961版はなんで夜のシーンにしてたんだろう…)


また設定がきちんと追加されて良かったのは、マリアの許嫁であるチノのキャラクター。1961年版では単に「物語を進める役割・コマ」でしたが、今回は人物描写が丁寧にされていて、終盤に大きな悲劇を起こしてしまう彼の行動にも納得できました。トニーへの嫉妬だけでなく、ベルナルドの死への報復という意味がより強まった印象でした。


1961年版でも今回の映画でも変わらなかったのは、トニー&マリアよりもベルナルド&アニータが素敵だな…と思ってしまうところ。

 

個人的に、ベルナルドは1961年版のジョージ・チャキリスが好みでしたが、今回のアニータ役のアリアナ・デボーズは、歌もダンスもずば抜けて素晴らしかったです。


一方、キャスト陣の中ではやや残念な部分も。

 

今作でトニーを演じたアンセル・エルゴートは、「ベイビードライバー」などで素敵なお芝居をされていて、良い役者さんではありますが、とある疑惑を暴露されており、本人からそのことについて言及がないまま本作が公開された…という経緯がありました。女性絡みのスキャンダルだったため、見ているとそのことがどうしても頭をよぎってしまい、残念な気持ちになったのが正直なところです。

 

そこを除けば、作品全体として100%楽しめました!いつか舞台でも観てみたいな…。(2020年春にステージアラウンド東京で上演される予定だったのに、全公演中止になってしまったので…)