2回目の「ジャック・ザ・リッパー」。
今回はWキャストをまるっともう片方の方々に変えた組み合わせでの観劇でした。
*物語についてのネタバレを含みます。
展開やオチがわかっているのに、あの怒涛の1幕ラストの曲で「かっこええええ!!」と興奮し、2幕の♪俺がジャックだ♪でわくわくして、カオスたっぷりなクライマックスであっけにとられる…という、初見と全く変わらないリアクションをしてしまいました。笑
決してハッピーな作品ではないですが、後を引きずるような暗さや重さはないですし(*個人感)謎の中毒性があって何度でも観たくなります。当日券あればもっとリピートしたのになぁ……(緊急事態宣言よ………)
この回は土曜日のソワレだったんですが、2階席は信じられないくらいガラガラでした。コロナ禍が始まった2020年3月に観た「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」も、同じく日生劇場の2階席でしたが、正直その時よりも今回の方が空席目立ってました。
私はA席の2階席後方センターブロックでしたが、なぜかそのブロックだけはほぼ満席で、S席センターブロックにはおそらく10~15人くらい、サブセンターブロックにいたってはおそらく5人程度というガラガラっぷり。売り止めになっていたはずなので客席50%は収容されていたと思うんですが、ということは1階席はほぼ埋まってたのかな?状況的に仕方ないにせよ、あまりの空席っぷりにもったいないなと思いました。
そして前回は気づかなかったんですが、上演時間めちゃくちゃ短くないですか…?17時に開演して、休憩20分挟んで19時35分くらいに終わってました。1幕はきっかり1時間くらい、2幕も75分くらいなので、あの超スピーディーな展開にも納得です。
2階席から観たからか、舞台に奥行きや立体感をより感じられたので、前回よりも「ロンドンの街」っぽいなと思いました。橋のセットの奥からジャックが登場するとき、奥の階段から登ってくるシルエットがよく見えたので、不気味さも増してました。
ところで物語の結末について。私は素直に受け取って「ジャック=ダニエル」で解釈してたんですが、「アンダーソンはコカイン中毒で脳までやられてるからひょっとして…」という説を聞いて震えました…。そういえば「自分の名前さえわからない」みたいに歌ってたな…。(ジャック=特定の誰か、というよりも、誰の心にも棲みつく悪とぼんやり捉えるのが一番かなと最終的に思いました)
以下、Wキャストのみの感想。
【ダニエル:小野賢章さん】
・名前は存じておりましたが、なにせ洋画は字幕派なため「ハリーポッター」の吹き替えはほとんど見たことがなく、小野さんが声優であることは知ってる程度の知識で観ました。さすが声のお仕事を長年されているだけあって、声のトーンを自在に上げ下げすることで、ダニエルの感情の動きを表してました。2階席後方から観てても思わず「今どんな表情してるんだろう?」と、オペラグラスで思わず追いかけたくなるような、見事な声のお芝居でした。
・歌もお上手ですね!?と思ってたら、2017年版ロミジュリでマーキューシオ役だったとな…!なるほど!!でも雰囲気ベンヴォーリオっぽくない!?
・ご本人が醸し出す雰囲気がおっとり&優しめ&天然っぽかったので、医師としての研究にまっしぐらで世間知らずな印象を受けました(なので特に1幕はしっくりきました)娼婦であるグロリアに一目ぼれして、彼女がどんな仕事ををしていたとしても関係ない!僕がアメリカに連れて帰って幸せにするんだ!って宣言する流れに納得がいきました。木村ダニエルは「今まで何度も恋してきたけど、本気になったのはグロリアが初めて」で、小野ダニエルは「本当に人生初の恋」なんだろうな。
・温和だからこそ、実は自分が殺人を犯していたときの哀しさは、小野ダニエルの方が浮き彫りになってたように思います。木村ダニエルはジャックとの親和性(???)が高くて、グロリアのために狂ったというよりも、グロリアでさえ殺人を正当化する理由にして殺人を犯す快楽に走った感じもあったので。小野ダニエルは「ごめんなさいごめんなさい」って連呼して泣き笑いしながら殺してそう(それはそれで怖い)
・ちなみに小野ダニエルの髪型にはあまり納得いかず…。もふもふパーマ。最後まで気になってしまいました。
【アンダーソン:松下優也さん】
・「サンセット大通り」以来の松下さん。苦悩するごとに色気が増していく加藤アンダーソンに比べると、そもそも生きることすらめんどくさそうなうえに、誰にも期待しない・信じないみたいな諦念を持って生きてるアンダーソンでした。生きながらにして死んでる…という印象。おそらくポリーと別れてからそうなっちゃったのでは。
・とにかくずーーーーっとテンションが低いので(声を荒げるシーンも低めテンションを保ちつつの叫びでした)、エンドレスハイテンションな田代モンローとの対比がはっきりしてて面白かったです。
・冒頭、事件報告書を燃やすシーン。加藤アンダーソンは事件報告書をライターで燃やす→その火でタバコに火をつける、でしたが、松下アンダーソンはまずタバコに火をつける→事件報告書をライターで燃やす、という逆の流れでした。
(ちなみにお芝居か本気かわからないですが、手が震えたのかタバコ落としてました)
・唯一ポリーと再会したときは、ちょっともじもじしたりして一気に少年のようになってたのが印象的でした。そりゃポリーが放っておかないし、なんでもお願い聞いちゃうわけだわ…(号泣)(今回2幕のポリーのソロで泣きました)
・歌は堂珍ジャックに似て、少しポップス曲を歌うような感じで異質さを感じました。(そういえば堂珍ジャックと松下アンダーソンの回って存在しなかったような…?)劇中もカーテンコールのメドレー歌唱も、最後をオクターブ上げしててめちゃくちゃかっこよかったです。
・松下さん、生執事初代セバスチャンですし、ジャック役も!!!!!!!!!!!どうですか!!!!!!!!!再演でやりませんか!!!!!!!!!!!!!!絶対かっこいいと思うんですよ!!!!!!!!(近所中に響き渡る大声)
【ジャック:加藤和樹さん】
・めっちゃ楽しそうだな。
…というのが、加藤ジャックを観ている間の感想の9割を占めています。笑
・加藤さん出演作は「ファントム」くらいしか観ていないのですが、過去の出演作を調べる限り悲劇に見舞われる役柄が多く、今回もアンダーソンは悲劇に見舞われる男ですが、ジャックは悲劇をばらまく男なので、加藤さんにしては珍しいキャラクターなのかもしれません。それにしても本当に楽しそうだったなぁ。笑
・堂珍ジャックが結構ごりごりにメイクしてたので、加藤ジャックももう少しメイク濃ゆくて良いのでは?と思いましたが、堂珍ジャックがどこか浮世離れした「死神」っぽかったのに対し、加藤ジャックはより人間味があり「殺人鬼」だなという印象でした。ただしダニエルのみならず、アンダーソンやモンローまでを巻き込んで、全員の運命を手のひらで転がしてる感じは加藤ジャックの方が強かったと思います。例えるなら「デスノート」の死神・リュークのように「人間っておもしろいなぁ」と思ってそうなジャックでした。
・歌は、歌詞が聞き取りやすかったのは加藤ジャック、歌声によるジャックのキャラクター表現としては堂珍ジャックが好きです。
・加藤ジャックも松下アンダーソンに負けじとオクターブ上げしててかっこよかったです!
というわけで、予想以上にたっぷり楽しんだ「ジャック・ザ・リッパー」でした!