Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.9.20 ミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」マチネ公演:スリルと興奮と勢いの良さと


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※物語の決定的なネタバレを含みます。

※一部役者さんについてネガティブな感想を記しています。

 

 

 

上演発表時から「こりゃ面白そうだな~」と思い、最初は1公演だけチケットを取っていました。が、宣伝動画や記事を見て、「もしかしたらすごい好きな作品かもしれん…」という予感がして、緊急事態宣言が発令されてチケットが売り止めになる前に、賭けでもう1公演足してみました。

 

やっぱ自分のことは自分が一番わかってるもんですね。

(チケット足して大正解)

 

全体的な感想。

すんごい面白かった(ここ大事)

いや、ツッコミどころめちゃくちゃあったんですけど、勢いがすごくてもう全部納得しました(単純)かなり好きな部類のミュージカル。ただしオールタイムベストには入らないかな…でもいろんなキャストで観てみたいと思える作品でした。

 

そもそも物語が純粋に楽しめたミュージカルって、結構久々なのでは…。

(「マタ・ハリ」も物語として面白かったんですが、結末を知っていた上にロマンス要素が多めだったので…。本作もロマンスはありつつ、よりダークでサスペンス要素が強くて好きでした)

 

結末は、観る前からなんとなく「ダニエルが愛ゆえにジャックになりかわるとかだろうな」と予測はしていましたが、想像以上のカオスっぷりに「えええええ!?」でした。とにかく勢いがすごかった。

 

時系列があっちこっち飛ぶので、結構ごちゃっとした印象は正直ありました。一応舞台上に「〇年前」って出たり、役者さんが明らかに違うオーラで演じてたりするので、「理解するのを途中で放棄しちゃった…」みたいなことにはならずに済みましたが。

 

冒頭のシーンが最後のシーンに繋がったり、印象的なシーンがあとでもう一回出てくることで「ああ、そういうことだったのか」って繋がるのが、ミステリー小説っぽくて好きでした。

 

楽曲はがっつり「これ!!!!」という曲は初見ではなかったんですが、どの曲もかっこよかったりメロディーが美しかったりと、聴きごたえがありました。

 

本作は元々チェコで作られたミュージカルで、それを韓国でアップグレードしたところものすごい人気になったそう。今回の日本版は、その韓国版を輸入して日本初演として上演してるようです。おそらく今後再演を繰り返していく作品になるんだろうと思います。

 

舞台セットの世界観がめちゃくちゃ好みでした。まさしく、しとしと雨が降ってばかりのロンドン(行ったことないけど)全体的に暗めなセットの中で、時折出てくる「赤」が映えてました。

 


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キャスト別感想。

 

【ダニエル:木村達成さん】

・ダニエルは上演開始23分くらいで登場するので(ご本人談)、正直1幕ではあまり主人公っぽさを感じられなかったんですが、2幕を観ると「あ、ダニエルが主人公なんだな」と思えました。ただ命を落とす結末なので、生き残ってるアンダーソンが最後にまた主役っぽくなるんですけど…。上演開始からしばらくして登場して、観客の意識を引き付けるのってすごく難しいんだろうな。

 

・木村ダニエルは「とにかく明るいサイコ〇ス」。元々陽の雰囲気をまとってる方なので、一見ダークサイドに落ちる感じはないんですが、そういう人が闇に堕ちると普通の人よりもより深く落ちていくんだな…と思いました。

 

・よく考えると、ダニエルって「アメリカでは死体を解剖に使うと違法になるから、イギリスで解剖に使えそうな死体探しに来た」という目的で海を渡ってるので、医学の発展のためとはいえ実際ずっと「やばいやつ」。ただし木村ダニエルの太陽のような明るさについ騙されてしまいます(?)

 

・「エリザベート」のルドルフ役でも思ったんですが、生命力強そうなので「死」という概念から最も遠い存在の印象です。この日の終演後に行われたイベントで達成さんのお話を聞く機会があったんですが、「身近な人が命の危機にさらされたとして、お金を費やすことで助かるならまだしも、自分の命と引き換えに助かるってなったらちょっと考えちゃうな…」とおっしゃっていたので、ご本人が「生きてて超ハッピー!人生楽しい!!」という気持ちを強く持ってそうです(あくまでも推測)

 

・1階席最後列からでもわかる、目ヂカラの強さ。最高。

 

・とあるシーンで狂気を纏った木村ダニエルを見て、めっちゃいい表情するんだなぁ…!!と思いました。ルドルフは闇落ちするとはいえ、木村ルドルフはそこまで狂気を感じる演じ方にはしていなかった(と私は思う)ので。

 

・これまで私が観てきた達成さんのキャラクターは、どちらかというと明るくて朗らかだったり、面白みがあったり、悲しい運命を背負っていても穏やかなイメージだったので(「CALL」のドローン役とか、「銀河鉄道の夜」のジョバンニ役とか)、純度100%の狂気のお芝居は初めてでした。娼婦の死体から臓器を抜き出したときの高笑いや、2幕の後半、ジャックとダニエルが入れ替わって「木村ジャック」になってる時の表情など、観たことのない表情がたくさん見られて良かったです。悪役にも挑戦してほしい~!

 

・歌は、どの曲でもどんなお芝居や動きをしてても安定感があり、歌詞も明瞭に聞こえました。ちなみにイベントでは「自分が観劇してて何歌ってんのかわからないのが一番ストレスです」とご本人がおっしゃっていたので、歌詞の聴こえ方は特に大事にされてるのかなと。歌唱ノンストレスなおかげで物語にしっかり入り込めましたた。

 

・カーテンコールでは各キャラクターのソロ楽曲をメドレーで歌い継いでいたのですが(これ最高でした)、劇中ではなかったオクターブ上げに挑戦していてかっこよかったです…!

 

・今回のダニエル役を観て、「木村ヴォルフめっちゃ観たい~~~~~~~~~」ってなりました。将来的に甲斐ヴォルフとWキャストとか…ありえるのでは!?

(ただ最近の達成さんは、ミュージカル・ストプレ・映像作品問わずなんにでも挑戦してる印象で、個人的にはその姿勢が素晴らしいと思ってるので、ミュージカルのみにとらわれず色んな作品に挑んでいただきたいと思ってます)

 

【アンダーソン:加藤和樹さん】

・実質主役なアンダーソン。加藤さんはなぜかジャック役も兼任していたため、マチソワでアンダーソンからのジャック、なんてこともあったり。それでなくても年中無休で引っ張りだこな役者さんで、あの作品が終わったらこっちの作品とお忙しくされてるので、よく体力が持つな…と思ってます。

 

・加藤アンダーソンは、中の人の持ち味もあってか、苦悩すればするほど、人間としての魅力が増してました。コカインも吸わず、ギャンブルもせず真っ当に仕事をしていた時よりも、今(=この作品の中での現在)の方が色気もあるし、年齢を重ねた深みもあるので、周りが放っておかないんじゃないかな…。だからポリーも、何も聞かずに彼の頼みを聞き入れたんじゃないかと思ったり。

 

・ところでコカインをキメる演技が真に迫りすぎてて心配になりました(真顔)

 

【ジャック:堂珍嘉邦さん】

・たった1人、歌い方も声も「異質」。ものすごくハマり役なのでは…!?ジャックという役柄にぴったりな声をされてると思いました。あとかっこいい!

 

・ケミストリーとして歌ってる時の声や歌い方と全然違うので、本当にケミストリーの人!?ってなりました(小並感)

 

・遠くからじゃよくわからなかったんですが、共演者の方と写ってる写真を見ると、赤いカラコンをされてるようでした。気合の入り方もすごい。

 

・ひょこっと出てきて、ダニエルの心にいたずらしてひょいっと帰っていく、まさに神出鬼没の悪魔のような男でした。

 

【グロリア:May'nさん】

・(彼女のファンの方には申し訳なくも)「うむ…………」という印象でした。ほとんどの楽曲は声のキーが合ってるから別に何とも思わなかったんですが、肝心のソロ楽曲が…裏声との切り替えが…。声の調子が悪かったんでしょうか。

 

・1幕の希望に満ちたお芝居はとても良かったんですが、2幕で心も体もズタボロになってるのに、妙に元気の良い声色なのもちょっと気になりました。発してるセリフは弱々しいのに「グロリア元気じゃん…?」ってテンション(に私は聞こえました)

 

【ポリー:エリアンナさん】

・1幕の冒頭と、2幕の後半、それぞれ少しずつの登場なので、正直めっちゃもったいない。ですが、だからこそインパクトは抜群でした。ダニエルとグロリアの悲恋より、アンダーソンとポリーの悲恋をスピンオフで観たいくらい、彼女の過去や人物背景がにじみ出たお芝居や歌唱だったと思います。

 

【モンロー:田代万里生さん】

・「マタ・ハリ」に続き、悪役…とまではいかないものの、かなりねじまがったキャラクターだった万里生さん。モンローはラドゥより癖があったように感じました。それにしてもこういう役を演じている田代さん、めちゃくちゃ生き生きしててすっごく楽しそう。笑

 

・田代ルキーニを観てみたくなったし、成河モンローも観てみたくなりました。

 

久々に自分好みの作品に出会えて満足な観劇でした!