Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

小説「人魚の眠る家」:娘を“生かす”ためならば

人魚の眠る家」:東野圭吾

 

(あらすじ)

「娘の小学校受験が終わったら離婚する」。

そう約束していた播磨和昌と薫子に、突然の悲報が届く。

娘がプールで溺れた―。病院で彼らを待っていたのは、”おそらく脳死”という残酷な現実。一旦は受け入れた2人だったが、娘との別れの直前に翻意。

医師も驚く方法で娘との生活を続けることを決意する。狂気とも言える薫子の愛に、周囲は翻弄されていく。

 

(感想)

同じく東野圭吾さんが書かれた「虚ろな十字架」と同様、とてつもなく重たい内容でした。篠原涼子さん主演で映画化もされていますが、ちょっとこれは…見る勇気がないな…。

 

内容はもちろん、薫子のキャラクターの印象が、前半と後半でがらっと変わるのが衝撃でした。

 

前半は、薫子が下す決断に対して、「突然子供を失いそうになった親なら、きっとそうするのだろう」と彼女に同情するのですが、第三者から見た薫子の様子が、中盤~後半にかけて挿入されます。

 

すると、薫子が娘に施しているさまざまな「リハビリ」がいかに異常で、いくら親の自己満足とはいえ、そこまでするのは倫理的に間違っているのではないかと思ってしまいます。

 

クライマックスで、薫子は警察に向かって言い放ちます。

「今私がここで娘を殺して、私に『殺人罪』が適用されるなら私は嬉しい。それは娘がここまで『生きていた』という何よりの証拠になるから」と。

 

もし私が薫子ならどうするだろうか、彼女と同じような行動をとるんだろうかと、考えさせられる物語でした。

 

2021.6.30 オフ・ブロードウェイ・ミュージカル「The Last 5 years」ソワレ公演:構成は面白いけれど…

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木村達成さん目当てで「The Last 5 Years」を観劇しました。

アナ・ケンドリック主演の映画があるのは知ってましたが、あえて見ないままで挑んでみました。

 

構成が非常にユニークで、なかなか他では真似できないような作りでしたが、私はいまいちハマれなかったです。

 

登場人物は、ジェイミーという男性と、キャシーという女性の2人のみ。このカップルの5年間を、ジェイミー側は恋の始まりから別れまで、順を追って描いていて、キャシー側は別れから恋の始まりまで、時をさかのぼって描く、という構成でした。

 

ちなみに2人の時間軸が一度だけぶつかるシーンがあったんですが、それがちょうど結婚式なんです。どうやったらこんな面白いこと思いつくんだろう…。すごいなぁ。

 

…とはいえ、私がこの作品の面白さを感じたのは正直「そこだけ」で、他は特に面白さを感じないままでした。

 

冒頭、浮かれてるジェイミーを見ても、「いやでも5年後別れるんだし」とか、ラストで浮かれてるキャシーを見ても「いやでも5年後別れるんだし」ってなってしまった…(最悪な客)

 

たとえば最初のシーンでは、ジェイミーは恋が始まる予感に胸踊らせているのに、キャシーは夫婦生活が終わりを告げた悲しみを嘆いているので、それを間髪入れずに同じ舞台上でやられると、一体こちらはどういう気持ちで見たらいいのか、というところに最後まで引っかかってました。どちらかに思いっきり肩入れして観たら良かったのかな。

 

例えばジェイミーをメインにして、映画「テネット」のように、2人を引き裂くきっかけとなる出来事を食い止めようとして奮闘する(で、実はキャシーも時間を飛び回りながら同じことをしようとしてた)みたいな話だったら面白みもあったと思うんですが、本当にただただ5年間が過ぎていく(&戻っていく)だけだったので…。

 

あと楽曲。一曲がすごく長い気がしたんですが気のせいでしょうか。ただでさえ二人芝居なので、ものすごく役者の技量に任されてる演目だなとも思いました。木村さんと村川さん、それぞれとても頑張ってましたが、この日がこのペアの初日ということもあったからなのか、どうも曲が間延びしてる気がして、やや退屈さを感じる場面も正直ありました。

 

あんまり細かく見られてないですが、木村ジェイミー良かったです!今回は歌メインなのでセリフは少ししかなかったけど、やっぱり彼の台詞回し好きだなぁ(大事なことなので何度も書く。笑

 

歌もすごく難しそうでしたが、しっかり感情を乗せて歌えていると思いました。あと英語歌詞の歌い方がうまくてびっくり。後半、とあるシーンで上裸で出てきた木村ジェイミーを見て、あまりの細さにものすごく心配になりました(オカン的視点)しっかり食べて大きくなってね…。

 

村川絵梨さんは、今年の大河ドラマ「青天を衝け」にて、主人公の姉役を演じられていましたが、歌える役者さんと知らなかったので、まず歌のうまさにびっくりでした。ミュージカルの発声にはあんまりなってなかったように思いましたが、声量も十分あり、歌詞が聞き取れないこともありませんでした。なによりすごくかわいらしかったので、村川キャシーを観られて良かったです!

 

再演は…また気になる役者さんが出ていたら観に行こうと思います。

小説「劫尽童女」:まるでマーベル映画の世界観

「劫尽童女」:恩田陸

 

(あらすじ)

父・伊勢崎博士の手で容易ならぬ超能力を与えられた少女・遥。彼ら親子は、属していた秘密組織「ZOO」から逃亡していた。そして、7年を経て、組織の追っ手により、再び戦いの中へ身を投じることに。

激闘で父を失った遥は、やはり特殊能力を持つ犬・アレキサンダーと孤児院に身をひそめるが…。

 

(感想)

これ、なんで買ったんだっけ?としばし考えて、購入した当時は乃木坂46のメンバーの子が表紙になっていたからだ…と思い出しました。笑

 

樋口日奈ちゃんだったかな…私ではなく家族が好きなので、カバーだけプレゼントしましたw)

 

読めない漢字4文字のタイトルに、不思議なタッチのイラストが描かれた表紙。てっきり時代劇とか、妖怪が出てくる怪談モノ和風ファンタジーかと思いきや、超ごりごりのSFかつハードボイルド系の物語だったので、見た目とのギャップにびっくりでした。

 

父から超能力を与えられる子供って、「X-MEN」みたい。まだ「X-MEN」シリーズ観たことないんですけど(おい)

 

主人公・遥がとにかく何でもアリな超能力少女で、その能力ゆえに、子供なのに随分達観した考えの持ち主で、人生諦めモードという感じの子でした。だからかな…あんまり共感もできなかったかも…。

 

実写映画化したらとても面白くなりそうですが、日本映画ではまず無理な気が…(スケールがでかすぎて)

過去の自分からのプレゼント…?

 

先日、郵便局から一通のはがきが届きました。

 

「必ずご本人様が開封してください」と赤く書かれたメッセージと、のりでがっちがちに固められたはがきだったので、「私、なんかやらかしたんかな…」と震える手で開封

 

すると「満期のご案内」という文字とともに、定額預金が満期を迎えるので、〇月〇日になったら自動的に口座に振り込んでおきますね、という案内が書いてありました。

 

「??????????????????」と脳内パニックになる私。

 

よく読むと、どうやら10年前の私がまとまった額のお金を(なぜか)担保定額預金に預けていたそうで、それがほんの少しの利子をつけて戻ってくるとのこと。

 

待ってくれ全く記憶にないんだが(真顔)

 

10年前と言えば私はまだ学生であり、その時代になぜこんな額を、担保定額預金にしていたのか。

(金額はものすごく大きいわけではありませんが、学生の身分であればかなりの大金かと思います)

 

おそらく「すぐに使う予定がないのなら、利子がつくから預けておきなさい」と親に言われるがままに入れたお金なんだと思いますが……。

 

かなり謎ではありますが、過去の自分からのプレゼントとしてありがたく受け取ることにします。

 

さて、何買おうかな~~~~~~~~(最悪)

2021.6.27 ミュージカル「マタ・ハリ」マチネ公演(東京公演千穐楽):命ある限り舞い続ける

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ちゃぴさんが出る!!!という理由だけで観に行こうと思った「マタ・ハリ」。

 

人々を魅了するダンサーがスパイになる、というストーリーも気になりましたが、初演の動画を事前に見たところ、どうもサスペンスというよりラブストーリーっぽかったので、そのへんはあまり期待しておりませんでした。

 

ちなみに歌も、事前にかいつまんで聴いただけでは、「お!?これは!」みたいな楽曲には出会えず。そしてなにげにワイルドホーン作品は今回初でした。本当は2020年に「四月は君の嘘」で観る予定だったんですけど…。

 

この2日前に観た「フェイクスピア」がかなり衝撃的だったこともあり、「マタ・ハリ」はあまり期待せずに観たんですが、想像以上にお話が面白かった…!

 

最後にマタが処刑されるのは知っていたので、バッドエンドになるのはわかってましたが、それでもマタとアルマン、マタとラドゥ、アルマンとラドゥの駆け引きにドキドキさせられっぱなしでした!年末にDVDが出るとのこと、絶対買います…!

 

(Wキャストがどちらも1枚にパッケージされるそうですね。主演のお2人が同じ事務所だからできることなのかなぁ…関係ないか…)

 

リリアホールは、SNSで見るかぎりやたら前評判が悪かったんですが、3階でもとりあえず音響は問題ありませんでした。センターブロックだったからでしょうか…。

 

手すりは確かに邪魔でしたが、舞台上の役者さんにかぶることはほとんどなく、強いて言えば舞台の手前端っこ(客席側)が手すりにかぶってたので、たとえばそこで役者さんがしゃがんでしまうと、手すりの陰に人が消えるって感じでした。

 

(どこのシーンだったか、一度田代ラドゥがその場所でしゃがんでしまい、見事に手すりの陰に消えてしまいました…)

 

楽曲は、♪二人の男♪が強烈なほど耳に残りました。一度聴いただけでサビは絶対に覚えられる、あの昭和歌謡曲のようなメロディアスなナンバー。笑

 

 

演出は全体的に結構好きでした。特に最後にアンナがマタに会いに来るシーン。マタが穏やかな表情で、「今日の客席はどう?」みたいに聞くと、アンナが「それは…」って泣き崩れるんですが、そのセリフきっかけで上から鉄格子のセットが降りてきて、マタとアンナの間に置かれるんです。そこで初めて、マタが留置所に入れられて、死刑判決を受けたこともわかるという、秀逸な演出でした。


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以下、キャスト別感想です。

 

マタ・ハリ(マルガレータ):愛希れいかさん】

・「強い女性」かつ「色気で攻める」というキャラクターは新境地な気がしました。ちゃぴさんは華奢というよりも、きちんと筋肉がついたしなやかな女性らしい身体つきなので、肌色面積が多めな衣装だと、同性でも見ていてすごくドキドキしてしまいました…!寺院の踊りの衣装なんて、オペラグラスで覗くのをためらうレベル。

 

・元々猫っぽいお顔立ちだからかもしれませんが、ちゃぴさんマタは、内面も猫ちゃんみたいでした。マタとして男を落とすときは、徹底して「女の武器」を使って男にすり寄り、ツンデレを使い分けてる感じ。男が自分に興味を持つまではぐいぐい攻めますが、相手が自分に興味や好意を持った途端、ぷいっとどこかに行ってしまう魔性の女性でした。マタの中では、ラドゥもその中の1人…のつもりだったんでしょうね。

 

・一方アルマンに会ってる時は、マタとしての顔を捨ててマルガレータとして接している印象で、顔が「女」ではなく「少女」に戻ってました。マタはかなり壮絶な人生を歩んできたようだったので、早くから「女」として生きることを迫られてたのかもしれません。そしてその反動で、アルマンに対しては乙女のような顔を見せてたのかな…と。

 

ちゃぴさんマタは、この「顔」の使い分けがとてもうまかったように思います。声の雰囲気とか、かなり違ってたように感じました。

 

・ダンス永遠に見たかった~~~~!!!!!DVD買ったら「寺院の踊り」だけめちゃくちゃ再生します。

 

・「イリュージョニスト」の時は、歌が正直微妙でしたが、今回は良かったです。高音部分にいくときの、裏声への切り替えがやや気になるので、そのまま地声でいけるようになるか、切り替えが上手くなるとさらに聴きやすくなりそうです。

 

・この日は配信がありましたが、カーテンコールで「こんなところ(舞台の端)にもカメラあったの!?え!?知らなかった!!!!」って焦ってる姿がかわいかったです。笑

 

【ラドゥ大佐:田代万里生さん】

万里生さんの新しい顔を見た…!気持ち悪すぎる…!(超褒めてます←)いつもにこにこ穏やかな人が演じるヒールは最高ですね…!!

 

・今まで私が万里生さんに持っていたイメージを全部覆してきた田代ラドゥ。この作品を楽しめたのは、ちゃぴさんの魅力以外なら、圧倒的にこの人の歌とお芝居でした。マタを愛してしまった苦悩や悲しみも垣間見えましたが、とにかく徹底したヒールっぷりに、3階席で震えてました…。

 

・イメージ覆った…とはいえ、「エリザベート」のフランツでは「シシィ大好き!!!!」みたいな重たい愛を感じましたし、そういえば芳雄さんのことを異様なまでに「好き好き」言ってるし、重たい愛を表現させたらピカイチなのかもしれません。笑

 

・アイメイクがちょっと独特?万里生さんって目は一重だと思うんですけど、ふとした瞬間に見える目元が、「まぶた全部にアイライン引いたの!?」ってくらい、ぶっといラインが引いてあった気がします。無駄に目ヂカラ強かったのはそのせいなのかな…。

 

・キャラクターとしては、ものすごく「ノートルダムの鐘」のフロローでした。というか、「マタ・ハリ」のお話自体が、カジモド不在の「ノートルダムの鐘」でした。マタがエスメラルダ、アルマンがフィーバス、ラドゥがフロロー。

 

・マタの楽屋でスパイ勧誘してる時に、マタの手の甲にキスしようとして、そのままマイクに音が入るレベルで匂いを吸い込んでて、気持ち悪くて思わずのけぞりました。フロローがエスメラルダのスカーフをくんくんする吸引力と対決してほしい(変態対決)

 

・田代ラドゥは、本人はいたって真面目にマタを想ってそうなのが質(たち)が悪いですね…。多分最後まで(アルマンを殺すまで)、自分が正しいことをしてると心の底から信じてたんだろうと思います。ただアルマンを殺してしまったことは、マタのことは関係なく重荷に感じていそうでした。

 

・♪二人の男♪で「お前(アルマン)もあいつ(マタ)のこと好きなんだろ?」みたいな歌詞があったんですが、たまたまその場面をオペラグラスで観てたら、アルマンへの迫り方がドン引きレベルの気持ち悪さでした(主に表情)。アルマン役の東さんも素で引いてそうな顔してて、一周回ってめちゃくちゃ面白かったですw

 

・アルマン生存説と引き換えにマタを襲うシーンなんて最高に最悪でしたし(普段理知的な人が欲に任せて動いてる感じが怖すぎます)、その後狂ったように歌ってるところに奥さん乱入するのには思わず笑いました…w

 

・お芝居というか、セリフの言い方や立ち居振る舞いが、妙に堺雅人さんを彷彿とさせました。そういえばなんとなーく雰囲気似てるかも…??

 

・ちなみにWキャストの加藤さんは、全く気持ち悪さのないラドゥらしいので、それはそれで気になりますし、気持ち悪さを専売特許にした万里生さん強い…。カーテンコールでも「こんなに『気持ち悪い』って言われたの、人生で初めてで…」とおっしゃっていて、それを他の役者さんたちが誰も否定しなかったのが面白すぎましたw

 

【アルマン:東啓介さん】

・初演から引き続き同役を演じていた東さん。2度目ということもあると思いますが、「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」の時に比べると、断然歌がうまくなってる気がしました。「ジャージー・ボーイズ」で鍛えられたのかな…。万里生さんともしっかり張り合える声量と太さがあって良かったです!

 

・3階席から見てもわかる背の高さで、比較的背が高いちゃぴさんが小さく見えたくらい。リーダー的存在とパイロット、という役どころも納得のたくましさでした。

 

パイロットの時は髪の毛をぴしっと分けていてかっこよかったのに、それ以外の場面では前髪をおろしていて目にかかっちゃってたのが非常にもったいなかったです…!

 

 

DVDは必ず買いますが、これは再演するごとに1度は観に行きたい作品になりました!