Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2024.2.27 宝塚星組 「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~」/レビュー・シンドローム「VIOLETOPIA」ソワレ公演:宝塚のナートゥをご存じか?

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「RRRが宝塚で舞台化!」と聞き、直感で「それはぜひとも観てみたい!」と思ったものの、星組トップスター・礼真琴さんの休養明け復帰作だったこともあり、もちろん映画「RRR」の熱狂的ファンからの注目を浴びていたこともあり、宝塚ファンでもなかなかチケットが取れないとの噂だった今作。ものすごく運よくイープラス貸切公演に当選したので、生で観ることができました…!


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A席が当たったのですが、2階席ながら目の前が通路のほぼドセンターの席。宝塚ファンではない私が、こんな素晴らしい席に座っていても良いのだろうか…とそわそわしておりました。

 

ものすんごく期待値を上げて挑みましたが、期待を全く裏切らない素晴らしい舞台化でした…!もちろん「あ、あのシーンはないかぁ」と思う部分があったり、こういう演出でも観たかったな…と思うシーンもありましたが、あの3時間の大作を、よくここまで凝縮して落とし込んだなという感動がものすごく大きかったです。

 

映画→舞台に翻案した人が素晴らしいのはもちろん、役者さんたちも本当に素晴らしかったです。宝塚事情は詳しくありませんが、きっと礼さん・舞空さん・暁さんがいる星組だから成立したんだろうなと率直に感じました。


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以下、箇条書きで感想メモ。残したい記憶がありすぎて長いです。

 

・元になる映画は暴力あり、血もあり、筋骨隆々な男たちあり(なお、もれなく上裸)なので、「さすがに宝塚でやるのはどうなんだろうか?」と思ってたんですが、そういったエッセンスを排しても問題なく成立しており、ビジュアルはめちゃくちゃ宝塚化していたものの、底に流れる精神(?)はしっかり「RRR」でした。

 

・映画から抜くところ、残すところの配分が絶妙すぎた…!

 

例えば映画の冒頭、ビームとラーマそれぞれの紹介シーンがわりと尺を使って流れるんですが(ビームが虎と戦うシーン&ラーマが暴徒の中から1人だけを執念深く捕まえようとするシーン)、これらはそれぞれ宝塚ならではの「歌とダンス」に変更されていました。歌詞で2人の想いや信念が歌われていたので、映画と同じシーンがなくとも、この2人がどういうキャラクターなのかはきちんと把握できました。

 

ちなみに礼ビームが歌い踊る背後には、大きな虎の顔が背景としてどーんと構えてたので、映画のイメージを崩さぬようにという配慮が見えた一方、シュールさにちょっと笑ってしまいましたw

 

・映画を観ていてグッときたセリフも、ほとんど日本語字幕表記のまま残してくれてたのも良かったです。

 

囚われたマッリと再会したビームが、「白人も子供を産むんだよな?なぜ人の痛みがわからないんだ」と嘆くセリフや、シータから、ラーマがなぜ敵であるイギリスの軍隊でトップまで上り詰めたのかを聞いたビームが言う「俺は森で生まれ、無知だった」など。もちろん「ナートゥをご存じか?」も…!

 

・開演直後、礼さんが影アナウンスであいさつ(?)をしてる間に、映画冒頭で流れるのと同じ、ボイスパーカッションを使った独特な曲(?)が歌われてて(さすがに早口すぎる気がしたので、録音した音源を倍速で流してるとかなのかな…)「いやそこから再現するんかーい!」と、心の中で盛大に突っ込んでましたw

 

さらに幕が開き、マッリが総督夫人にボディペイントを施すシーンからスタートしましたが、マッリが「この方、映画のスクリーンの中から連れてきたんか」ってくらいの完全再現。姿形から歌声までマッリそのもので、この時点ですでに大満足でした。インドの歌独特の節回し(声を揺らす感じの歌い方)までそっくりだった…すごすぎる…。

 

・ビーム目線で進む物語と宣伝されていましたが、それは建前上、トップスターを立てるための説明だったのかな?と思うくらい、ラーマにもしっかりと見せ場がありましたし、正直映画とそれほど変わらず「ビームとラーマ」の話になってました。

 

・イギリス人がラーマに修理依頼をするモノ:映画だとバイクで、宝塚ではライフル。

ジェニーの乗り物:映画だと車で、宝塚ではバイク。

いい感じに小規模になってるw

 

♪ナートゥ・ナートゥ♪は本当に本当に圧巻でした…!尺はおそらく映画より短くなってたと思いますが、あの歌とダンスをそのまんま舞台上で再現してました。

 

ジェニーが「もっと踊って!」みたいに、ビームとラーマのサスペンダーぺちん!ってやるのとか、イギリス人女子たちが可憐なドレスを着たままナートゥダンスを踊りまくるなど、全部そのまんま舞台に持ってきてくれてました。

 

映画では、おそらく歌はアテレコのはずなので、あの過酷なダンスをしながらブレずに歌うジェンヌさんたち、超人すぎます(呆然)

 

・個人的にナートゥのシーンよりも感動したのが、ビームとラーマの出会いのシーン。さすがに映画のような「橋の上をバイクと馬で走って、ロープでぶら下がって握手!」ではなかったですし、少年の救い方は何がどうなってああなったのかは若干わかりづらかったんですが、ちゃんと♪Dosti♪が歌われてたことにびっくりしました。映画と同じくらいの力強さで歌われててかっこよかったです!

 

・さすがに「猛獣を含む動物たちを引き連れて、総督邸にトラックで突っ込む」シーンや「ビームが地下牢からラーマを救い出し、肩車アタックする」シーンは全カット。それぞれ戦士として、自らの拳や武器(弓矢と槍)で戦う設定に変更されていました。舞台で再現するにはあまりに荒唐無稽なシーンの、別案へのすり替え方が無理なくできてたと思います。

 

・血や性的な場面がご法度な宝塚なので、ラーマの過去はどうするんだろうか…と思っていたところ、映画版のラーマの過去を500倍希釈したあっさりめな過去に変更されておりました。

 

お父さんはイギリス軍に殺されますが直接そのシーンはやらないですし、お母さんと弟が銃殺されたことも、ラーマ自身の口から語られてました。「大切な人たちをイギリス軍に奪われたこと」が伝われば、十分説得力があるからいいかと思いつつ、映画で見たあの衝撃は、やはり映画ならではだよなぁとも思ったり。

 

・というわけで(?)ビームが鞭打ち刑を受けるシーンも、鋲がついた鞭の登場はなし。でも礼ビームが歌う♪コムラム・ビーム♪が本当に素晴らしくて(日本語だったから伝わりやすいというのもあったかもしれませんが)、歌唱後にあった周りのインド人たちの怒りの芝居も含め、映画版よりも感動しました。

 

エンディングも、映画と同じ歌を歌いながら、なんと2階席にまでジェンヌさんたちがやってきたので、通路が目の前だった私は面食らっておりました。私の前で踊ってたのは多分エドワードさん(総督のお付きの人…?)で、斜め前に総督夫人がいらしたんですが、この娘役さんが本当に最高で…!劇中のキャラをしっかり保つため、ずっと仏頂面で歌い踊り、仏頂面のまま我々観客にお手振りをしてくれましたw最高すぎる!

 

・メインキャスト3名がとにかく素晴らしかったです!

 

礼さんは「そりゃトップスターになりますよね」という、宝塚ド素人の私が観たって歌・ダンス・芝居が三拍子そろったとんでもない役者さんであることが分かりました。もちろんかっこいいんですが、映画のビームがそうであったように、どこか心を許したくなるような愛嬌やかわいらしさがあり、トップスターでありながらすごく親しみも持てる役者さんの印象です。ミュージカルを観るようになってから、宝塚のいろんなOGさんを観てきましたが、礼さんも退団後はぜひ舞台の世界に居続けてほしいなぁ…。勝手な印象ですが、コメディ作品とかすごく上手そうです。

 

暁さんは、礼さんとは雰囲気の違うイケメンさん。顔は小さく造形が整いすぎていて、背は高いし、スタイル抜群で脚は長い。ビジュアルが「スターになるべき人」という印象でした。あの方にウィンクなんてされた日にゃ即落ち間違いなしですな(謎)暁さんがトップスターになった星組さんの作品も、いつか観てみたいものです。

 

舞空さんは、顔のサイズが子供の握りこぶし大のサイズしかなくて(あの面積に顔のパーツが全部おさまってるの奇跡すぎん?)、この方もトップ娘役になるべくしてなったんだろうと思いました。ふにゃんとした笑顔がかわいらしく、圧倒的にかわいい系の娘役さん(雪組で見た朝月希和さんはキレイめな方だった印象です)歌が上手だと聞いていたので、ジェニーが後半まで全然歌わなくて謎にひやひやしました(?)舞空さんも外部の舞台でいつか観てみたい役者さんの一人です。


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・ショーに関しては、正直ちょっと「?」でした。なんとも感想が持ちづらい世界観だったなぁ。というか、圧倒的に「RRR」が良すぎて…。すみません、ショーの印象はちょっと薄かった…。

 

廃墟と化した劇場で繰り広げられる、ひとときの夢、みたいな印象を受けたんですが、もはやその解釈が合ってるのかすらよくわからんレベルです。

 

強いていうならば、男装して踊る舞空さんと、ギンギラドレスを着て女性として歌う暁さんが最高でした(小並感)