「太平洋序曲」2回目。
「松下優也さんと立石さんと海宝さんってどんな組み合わせやねん…!」って気になって夜しか眠れなかったので(真顔)なんとしても観たかった回でした。
正直初見で全く刺さらなかった今作ですが、2回目は初見の何倍も楽しめました。好きかと言われると別に好みの作品ではないけど、それでも初見で感じた「なにこれ…」感は多少薄まったと思います。
良かった点として挙げると、まずは座席位置。座席位置で楽しめるか楽しめないかが決まるのはどうかと思うんですが、今回2階席中列どセンター席に座ってみて、この作品の強みの1つが舞台セットであることがよく分かりました。
特筆すべき大掛かりな仕掛けがあるわけではないんですが、動かせるパーテーションみたいなのが襖っぽかったり、木目調の枠や床だったり、場面ごとに奥行きがある背景になったり、月の満ち欠けを表す大きな円が配置されてたり。
さらに2階から観てると、香山が小舟で海に漕ぎ出すシーンでは照明で海の波が表現されていてとっても綺麗でした。絶対に引きで観たほうが楽しめるやん…。もちろん前回座った1階席2列目も、役者さんの細かな表情を観るのであれば良い席と言えますが、いかんせん初見で座る席ではなかったです…。
良かった点その2。プリンシパル3人の組み合わせいいですね…!?今回の組み合わせは、3人が3人とも別の色を持っていて、でも不思議とまとまりがあったように感じました。お互いの良さを引き出している組み合わせだったなぁ(狂言回し役の松下さんに関しては、他2人との絡みが劇中ほとんどないんですけどね…)
後述しますが、海宝さんと立石さんの組み合わせがあれほど良いなんて、観る前はちょっと想像できなかったのでびっくりしました。
それにしても「木の上から小屋の様子見たよソング」(命名:私)は、あんなに長い必要あります…?私が短気なだけかもしれないけど、それにしても長くない…??
(ちなみにソンドハイムさんはあの曲をいたく気に入っていたらしいので、相容れないなぁと思ってしまいました←)
キャスト別感想。
・セリフの緩急の付け方がめちゃくちゃ上手い…!作品全体はのっぺりとした印象なんですが、彼が要所要所でしっかりスパイスを付けてくれていたと思います。
シーンが切り替わる時に何かしら大きめのアクション(仕草)だったり、声を張り上げたり、逆に前方席のお客さんに語りかけるような声になったり、強弱がはっきりしてるので、最後までダレる感じがしませんでした。
・声のトーンが山本さんよりも高めだからか、山本狂言回しよりもオクターブ高いキーで歌ってるところもあり、全体的に聞きやすかったとも思います。
・声だけでなく芝居も大きめなので、「本編の誰にも姿を認識されなくても、表にどんどん出ていくタイプの狂言回し」でした。山本狂言回しは真逆のイメージなんですよね。
・これまで「サンセット大通り」や「ジャック・ザ・リッパー」で拝見してますが、どの役もきちんと手懐けて(?)演じてる印象の役者さん。私の中では【出てくると安心できる人】になりつつあります。「ジャック・ザ・リッパー」再演したら、かずっきーさん(=加藤和樹さん)みたいにアンダーソン兼ジャックを演じてください(わがままヲタクより)
【香山弥左衛門:海宝直人さん】
・ここまで「ふつうのひと」を演じてる海宝さんって、実は初めて見たかもしれません。黒船と交渉してペリーと渡り合うのは「ふつう」じゃないですけど…。これまで演じてた役が結構どれも個性的なので…。「ミス・サイゴン」のクリスはまぁ…一応「ふつうのひと」ではあるか…(悩)
・なんでもない日常を誰よりもこよなく愛する人、という朴訥とした雰囲気でした。尺としては短いんですが、奥様と釣りをしてる表情がかわいらしかったです。うっかりやらかしたことがきっかけで幕府に目をつけられ、まぁ半ば自業自得ではあるんですが、「ふつうのひと」が理不尽なまでに運命の歯車を狂わされてしまう哀しさを感じました。
・奥様の亡骸を見たときの、膝から崩れ落ちて嗚咽を押し殺しながら泣く芝居…あんまり海宝さんのそういうシーンを観たことがなかったからしんどかったです。
・歌い上げる系の楽曲がなかったのはちょっともったいない気もしますが、淡々とした楽曲はシンプルすぎるあまり、声だけで聴かせなくてはいけないのでむしろ難しそうですし、海宝さんはきちんと聴かせられてたのでさすがです(拍手)
・立石さんとの予想外の相性の良さにびっくり。全然予想がつかない組み合わせでしたが、こんなにお芝居も歌声もピタッとハマるとは思いませんでした。
ペリーと交渉するシーン、予想よりはるかに(いい意味で)はちゃめちゃな芝居をする立石万次郎の隣で、ぽかーんと口開けて万次郎を見つめる海宝香山の顔が面白すぎましたw
俳句を詠み合う歌のハーモニーも素晴らしかったです!どちらも柔らかい声質で、2人だけののんびりとした時間が流れる様子が伝わってきました。別作品でまた共演してほしいなぁと思えるくらい、素敵な組み合わせだった。
・ちなみに初見の3人組だと海宝さんが1番年下になるんですが、今回の3人組だと海宝さんが1番年上になるんですよね。役柄的なものもあると思うんですが、自由に動き回る松下狂言回しと立石万次郎に、大黒柱的な役割で構える海宝香山という印象でした。
【ジョン万次郎:立石俊樹さん】
・楽曲や作品的にこちらの方が難しそうなんですが、「エリザベート」のルドルフ役より圧倒的に今作の方が良かった気がするのは気のせいでしょうか。
(「エリザベート」に関してはプレッシャー的なあれこれが大きいのかもしれませんが…)
いい意味で肩肘張らず、のびのびと演じられてる印象でした。自分のポテンシャルを最大限に活かしていて、なによりとても楽しそうに演じている雰囲気を感じました。
・「こんなにコメディの才があるのね!?」と思ったのは、香山とともにペリーに交渉しに行くシーン。ウエンツ万次郎とは全く違った笑わせ方をしてきて、めっちゃ面白かった&驚きもしました。
シーンの終盤には小舟から下りてペリーに向かってわめいてたんですが、立石さん、そこは下りたら海ですwwwww
(ちなみにその後の回では、立石万次郎が舟から降りないように海宝香山が抑えてたってレポを見て爆笑しましたw攻防戦w)
・香山の位が上がったときに裾の長い袴を着てるんですか、その袴を着た香山の後ろを歩く立石万次郎が、「これなにー!?」みたいな感じで裾に触ろうとしていて、海宝香山が「ちょっと何してんの!?」みたいなリアクションしてて笑いましたw
・立石万次郎はとにかくピュア。行く先々の場所、出会う人々に素直に感化されて生きてるんだなと感じました。だからアメリカに行けばアメリカの文化ややり方に染まれるし、香山に出会って侍になればそちらのやり方に染まれる。その「何にでもなれる染まりやすさ」を、最後は幕府に利用されたんだろうな…。
・ずっとずっと目がきらきらしてるので、最後にその光を失うのが哀しすぎました。ちゃんと瞳のきらきらを消せてるのが素晴らしかったです。
メイン3人以外では、将軍と女将を兼任してる朝海さんが、コミカルだったり艶やかだったりで、ご本人は大変そうですが観てるこちらは1回で2度楽しくてありがたいです。
あ