Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.10.10 ミュージカル「ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~」:その気持ちは、まるで電気

有名作品かつ評判も良いので、一度くらいは観てみたいな~と思っていた「ビリー・エリオット」。

 

作品自体にものすごく興味があったわけでもなく、楽曲は事前にいくつか聞いてみたものの、特にピンとくるものはなく、出演されている俳優さんにも特に気になる人はおらず……ということで、「ミュージカル好きを名乗るなら観ておきたい」という、半ば強迫観念みたいな気持ちで観てきました。


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*台風が接近していたか通り過ぎた後かで、当日はほんっとうにひどい雨でした…。

 

完全に子役がメインの作品は、今回初めて観ました。

劇団四季の「ライオンキング」は、1幕はすべて子役が主人公とヒロインを演じていますが、この作品は全幕を通してビリーが主人公なので、どうなるんだろうなぁと。元々子供が苦手なのと、正直あまり子役のお芝居が好きではないので…よくあるはきはきしたセリフの言い方とか…。

 

座席は1階席後方の最上手。

初見だったので、2幕で少しオペラグラスを使った以外は全体を観て楽しみました。(この頃の私の座席、最上手とか最下手ばかりでした……)

 

全体の感想としては、特に好きにもなれないけど、嫌いでもないです、みたいなちょっとぼんやりした印象でした。周りの人が号泣してると気持ちがさーーっと冷める、私の悪い癖が出てしまいましたね…。本当に1回も泣けなかった…。ビリーの母親からの手紙のシーンとか、ウィルキンソン先生との別れとか、露骨に「泣かせるぞー!」みたいな感じであまり受けつけませんでした。

 

あとオリジナル版では、おそらくイギリスのド田舎の方言の英語を使っているんだと思いますが、日本版もみんな訛ってたので(関西弁っぽい?)、最初に聞いたときはちょっと面食らってしまいました。

 

フラッシュダンス」と同じく、とにかくダンスの熱量がものすごい作品ではあって、私は「フラッシュダンス」もそーーーんなにハマらなかったので、ダンスメインの作品はあまり好みでないのかもしれないです(「キャッツ」もハマらなかったし、パフォーマンスメインの「ピピン」も「…?」でしたし)

 

ただ「ビリー・エリオット」は、実際の歴史も絡めて描かれていたので、ストを行う大人たちの葛藤の物語(つまりビリーの話じゃないところ)は結構楽しめました。

 

主人公はビリーだけど、私はなぜかビリーのお兄ちゃんのトニーや、ビリーの友達のマイケル、さらにウィルキンソン先生の娘のデビーがやたら気にかかってしまい、ビリーの物語にはあまり感情移入ができませんでした。特にトニーは、私自身が第1子の長女だからということもあるのか、どうもビリーよりも彼の気持ちがわかってしまうような気がしました。

 

トニーは、もちろん自分の労働環境を変えたい一心で、仲間とともにストを頑張ってきたと思いますが、その根底には「お父さんの役に立ちたい」みたいな、ある種の承認欲求があったんじゃないかなと(勝手に)思いました。

 

母親が亡くなって悲しんでいる人物は、劇中ではビリーやビリーのお父さんが取り上げられるけど、トニーだってもちろん悲しいわけで、その悲しみをストに走る原動力にしているんじゃないかなと。

 

だからお父さんがストから離れて、炭鉱をつぶすための工事?に携わる姿を見た時、トニーはどれほど悲しかったことか…。セリフでも「ストに参加しようと思ったのは、お父さんがぼくに戦うことを教えてくれたからだ!!」みたいなニュアンスのことを言ってましたが、そんなお父さんに認めてもらうために必死に頑張ってたんじゃなかろうか…と思います。中井さんが演じるトニー、めちゃくちゃ熱いけどものすごく繊細でもあって、素敵なキャラでした。

 

マイケルくんは、「キンキーブーツ」のローラの幼少期みたいでした。興味本位でお母さんやお姉ちゃんの服をとっかえひっかえ着てみる遊びをして、「ありのままの自分を見せて何が悪いの!?」と、ある意味子供らしいあっけらかんとした素直さが良かったです。

 

マイケルがビリーのほっぺたにちゅーするシーンもあり、そのときはビリーが「俺はバレエやってるけど、おかまじゃないんだぞ!」みたいなこと言ってましたが、ラストシーンではビリーがマイケルにお別れのほっぺちゅーをするシーンがあり、ほっこりしました。めっちゃかわいかった。

 

デビーは、見ていて1番かわいそうなキャラクターでした。母親であるウィルキンソン先生は、才能がない自分の子どもではなく、才能あふれるビリーに付きっきりになってて、母親の視線がそっぽを向くたびに、半分怒鳴ってるようなデデビーの「ママ!!!!!!」の叫びが切なかったです。しかもほとんど相手にされないという…。(結構そういうシーンが何回もあった気がしましたが、あれはウィルキンソン先生は決して完璧な人なんかじゃない、ってことを表してるのでしょうか…?)

 

シーンとして好きだったのは、1幕ラスト、父親からオーディションに行くことを禁じられたビリーが、怒りにまかせてものすごいエネルギーを爆発させながら踊るシーン。

1幕は「バレエ教室でのレッスン風景」と「ストをする労働者と警官たちの闘い」を並行して描くシーンが多くて面白かったんですが、ここでも怒り狂うビリーの踊りに、警官たちの動きが加わってとても見応えがありました。

 

このシーンまでは、ビリーが等身大の子供にしか見えなかったのに、雄叫びをあげて踊るビリーが急に大きく力強く見えたのにもびっくり。利田太一くんのビリーは、歌はやや不安定なところもあり、ときどき何を言ってるかちょっとよくわからないシーンもありましたが、本当に素晴らしかったです。私が子役を「ちょっと苦手だな…」と思ってしまうのは、彼らの素晴らしい才能を見て、「自分は同じ年頃のときどんなだったか」を思い出して、自己嫌悪に陥るからかもしれません。嫉妬…みたいなものですかね…。

 

ストに関わる大人たちが、ビリーに夢を賭けてみようと、彼に寄付するシーンも好きでした。置かれている状況に対して、ひたすらに怒り反抗してきた人々が、その気持ちをビリーへの応援の気持ちに変化させる、ポジティブな良いシーンでした。

 

個人的に「ものすごくハマる!」という作品では正直ありませんでしたが、こうやって振り返ってみると、大人の役者には出せないであろう子どもたちのパワフルな歌やダンス、お芝居に力をもらえたなと感じました。再演されたらまた必ず1回は観に行こう~。