「この世界の片隅に」は2018年のTBSドラマと映画、2つの映像化を見ていて、いい作品ではあるけれど、どうしたって悲しくなるし何回も見るものではないなぁと思ってたので、ミュージカル化が発表されたときは正直「え、ミュージカルになるの?」としか思えず。海宝さんが出演するならWキャストで1回ずつは観るか、くらいの低めのテンションで臨みました。
実際観てもこの気持ちはあまり変わらず、1回の観劇でも十分だったかなと。いい作品ですし、あらゆる形で語られるべき話かもしませんが…。
個人的にはドラマが1番良かったです。そりゃ3ヶ月かけて丁寧にじっくり描くので、3時間にすべてを収めなきゃいけないミュージカルとは比べちゃダメな気もしますが…。
役者さんはみなさんポテンシャルの高い方ばかりで、見ごたえがありました。そしてアンサンブルキャストに川口竜也さんがいらっしゃってびっくり。「レ・ミゼラブル」「ノートルダムの鐘」ではプリンシパルキャストでしたが、あそこまでのベテラン役者さんになっても、アンサンブルさんを引き受けることもあるんだなぁ。
ドラマと映画でこの作品に触れたことがあったので個人的には問題なかったんですが、構成がかなり微妙だったかも…?1幕は手を失った状態の今のすずさんと、過去の回想がいったりきたりするので、ミュージカルで初めてこの作品に触れた人は「?」になる気がしました。冒頭だけ現代シーンにして、あとは普通に過去から順に描いていけば良かったのでは…?
あと1幕が昼ドラの修羅場みたいな場面で終わったの、あれでいいんか?(真顔)
楽曲はどこかノスタルジックで曲のジャンルもさまざま。何より日本語で紡がれる歌詞がとても美しかったです。はじめから日本語で制作される強みを感じました。
ただしメロディが残るのはメインテーマくらいでした(※個人感)あと隣組の歌がやたら長くてまだやるんか…ってなっちゃったし、少なくとも2幕にあの曲を使うのは、コミカルなメロディとシリアスな場面のギャップを狙ったのかもしれませんが、個人的にはあんまり好みではなかったです。
大原櫻子ちゃんのすずさん、映画のすずさんにそっくり!広島弁でのーんびり話すトーンと、感情むき出しの強い歌声のギャップが印象的でした。
元々ポップスシンガーなだけあって、歌うときの節回しなのか、声の操り方にいい意味で「大原節」を感じて、唯一無二のすずさんを作ってるなと。戦時中の格好をしてても、ビジュアルがとっても華やかな方なので(顔がちっちゃくて目がおっきくてキラキラしとる…!)、若干垢抜けすぎてる感はあったかもしれません。
周作さんに遠回しにデート誘われたときの「しみじみニヤニヤしとるんじゃ〜!」の言い方と、妹のすみちゃんとのほっこりした会話での、ほんわかした雰囲気のお芝居が特に好きでした。かわいすぎてこっちまでニコニコしちゃう…!
周作役の海宝さん、華やかな役もこういった朴訥とした役も似合うよなぁ…。出番はそこそこ、ソロはなしという、ファンとしては微妙な感じではありましたが、お芝居がしっかり見られたのは良かったです。あんなに歌わない役、朗読劇を除いたら「道」以来では?
周作さんは基本的に何を考えてるかわからんポーカーフェイスキャラですが、海宝周作は徐々にすずさんを見つめる瞳に熱がこもっていってて、「レ・ミゼラブル」のマリウスみたいにわかりやすく恋に落ちるのもいいけど、秘めた想いをふつふつと高ぶらせていくのもいいですよね(誰)
平日マチネが12時45分にも関わらず、8時に出社して12時にあがって爆速で日生劇場に駆けつけた理由が、せっかくだから四季退団後の小林唯さんと海宝さんの共演を見たかったからなんですけど(長文)、彼も歌は少なかったものの、さすが四季でいくつものプリンシパルを担った役者さんといえるパフォーマンスでした。
絵を書くことに夢中になってるすずさんを愛おしそうに見つめて、すずさんが自分の方を向きそうになるとぷいっとそっぽ向いちゃう姿に悶絶(やめなさい)
平野綾さんのリンさんもめちゃくちゃ良かった…!すずさんとあまり変わらない年齢(という設定)なのに、すでに世の中の酸いも甘いも噛み分けてしまった早熟な女の子、という雰囲気が、色気と混じってすごい魅力的に見えました。あんな子が自分の旦那の元カノです〜って出てこられたらそりゃ病みますわ(真顔)
音月桂さんの径子さん!2幕の1番つらいシーン、あれを1日2回も演じてるなんて信じられません。悲痛な叫びのあと、到底お芝居とは思えない嗚咽を漏らす声に思わずもらい泣きしました。