Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2023.12.28 ミュージカル「ベートーヴェン」ソワレ公演:海宝カスパールの(早すぎる)大千穐楽回

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ベートーヴェン」2回目&海宝カスパールのだいぶ早すぎる大千穐楽回でした。

 

正直初見で全くといっていいほど刺さらなかったので、この豪華キャストの共演を目に焼き付けるか~くらいの意識で観ました。

 

ずっと憧れていた日生劇場GC階にやっと座れて、少々上手側に寄ってはいたものの本当に観やすかったです。

 

前回が舞台近くの座席で全景を捉えられてなかったこともあり、内容も楽曲も1回通して観て聴いてるからか、初見よりは確実に楽しめました。

 

ただこれ再演やるとしても、誰が出るか&演出がちょっとでも変わるかで観に行くか判断するかなぁ。正直キャストに関しては「初演以外の人」でしっかり集めるの、結構厳しいのでは…と思ってます。集客という意味でも、歌唱クオリティという意味でも。

 

特にトニ役は花總さん以外で、そこまで嫌味にならず表現できる人が全く思いつかない。花總さんだと謎の説得力が出せてるので…。

 

楽しめたとはいえ、2回目を観てもやっぱり「この話、わざわざベートーヴェンを主役に立ててやる必要ある?」という、初見と全く同じ感想ではありました。「ベートーヴェンだからこそ」みたいな要素があんまりなくて、本当にただのメロドラマになってしまっていたなと。

 

終盤、トニが夫に何もかも、子供さえも奪われてしまうかもしれないってなったときに、ルードヴィヒはものすごくあっさり身を引いて「これが僕の愛だ」みたいなことを歌うんですが(記憶違いだったらごめんなさい)、それあえて自分で「愛だ」って言うのはなんだか格好悪い気が…。

 

1幕にあった「カスパールとヨハンナの出会い方」がこのシーンに繋がってたのは良かったな…。そのエピソードを聞いたルードヴィヒはカスパールをバカにしてたのに、2幕で結局カスパールと全く同じ行動を起こしてることにも、2回目の観劇で気づけて個人的には好きな伏線でした。

 

というわけで、2回観ても物語と楽曲にはあまりピンとこなかったんですが、役者陣の歌のみならずお芝居がめちゃくちゃ良かった~~~~~!彼らの歌とお芝居だけで、作品自体は好きになれなくても観て良かったとは思えました。

(でも海宝さんが出てるのに配信買わなかったくらいには刺さってないです←)

 

お芝居は2か所印象的だったシーンがありました。

 

1つ目は花總トニの♪千のナイフ♪歌唱シーン。トニは本当に本当に「こんなに共感できないことある!?」ってくらい彼女のことが全然わからなくて、行動理念にもあまり一貫性が感じられなくて(*個人感)キャラクターとして好きになれなかったんです。

 

でもそうしたネガティブなイメージをキャラクターに対して持っていたとしても、花總さんの涙ながらの絶唱には心を動かさざるを得ませんでした。

 

♪子供たちに会えなくなることが何よりつらい♪的な歌詞を、本当にこの世のどんなことよりもつらいことかのように、涙をぽろぽろと流しながら歌う花總トニ。なんとしても救ってあげなきゃと思わせるくらい弱々しさを感じて、思わずちょっともらい泣きしました。

 

2つ目は、2幕のルードヴィヒとカスパールの仲直りシーン。海宝カスパールが井上ルードヴィヒに言う、「来るのが…遅くなって……ごめんね…」でだんだん涙声になるのと、その後兄を思いっきり抱きしめてあげて、泣きながら背中を力強くさすってあげる海宝カスパールで私の涙腺が決壊しました(号泣)あれは泣かないという選択肢がない(号泣

 

2人とも今生の別れレベルではちゃめちゃ泣いてたので「海宝さんの大千穐楽とはいえそんなに…!?」とびっくりした気持ちもありましたが、お芝居する側としては気持ちが一層グッと入り込むシーンなんだろうな…。歌の技術が素晴らしいお2人ですが、お芝居でものすごく心を打たれました。

 

ちなみに1幕にあるカスパールの短めソロ曲の後、毎回井上ルードヴィヒがアドリブでカスパールに声かけてるんですが、前回は「いい声だな~爽やかで甘くて…いい声だ~」(海宝カスパール:そ、そんなことないよぅ)だったのが、今回は海宝カスパールの大千穐楽だったということもあってか、「いい声だな~もっと聴いていたかった…」って言ってくれてて、芳雄さんのアドリブのうまさに泣きました。

 

逆に「いやわからんが!?」ってなったのはベッティーナの行動。しかも初回よりさらに「なんで??」ってなってしまいました。

 

というのも、彼女は自分の兄(フランツ)の不貞は知っていて、それをトニには知らせずフランツに「もうあの女優(不◯相手)と会うのはやめてほしい」と個人的に頼み込んでるんです。

 

でもトニとルードヴィヒとの関係は、知ったとたん兄に密告して、それが引き金となってあんなことやこんなことが起きてしまうという…

(トニが言う「ベッティーナが裏切ったの…」は「いや自業自得では…」ってなりますけど…)

 

同じ行動をしたとしても&義理の姉とは仲良くしていても、やはり血のつながった家族とそうじゃない人では対応を変えてしまうんだろうか…。個人的には身内がそんなことしてる方が嫌悪感強くなりそうなんですけど…実際そうなったことがないから何とも…(一生経験したくないけど)(真顔)

 

海宝カスパール大千穐楽回につき、最後の芳雄さん&花總さんカテコのときに舞台袖から登場して挨拶していた海宝さん。

 

挨拶の詳細はあんまり覚えてないんですが、

・芳雄さんが「わが愛しの弟」で舞台袖から呼び込んでました。

・めちゃくちゃ恐縮しながら芳雄さんと花總さんの間に収まる海宝さん。

・芳雄さんに促されて客席の拍手を盛り上げる→合図して締めて「おおお~~~!」と驚く海宝さん。

・海宝さん「一足先に大千穐楽を迎えまして…」

芳雄さん「早いよ」

花總さん「ホント早すぎるよねぇ」(笑)

芳雄さん「ほら、早すぎるから(花總さんが)笑ってるじゃん」

 

・芳雄さん「じゃあ挨拶してる間に落ちてる楽譜拾っておくから」

(床にしゃがみこむ芳雄さん)

海宝さん「そ、それは僕の仕事なので…!」(一緒に拾おうとする海宝さん)

(微笑みながら一緒にしゃがみこもうとして、芳雄さんに「やらなくていいです!!」って制止される花總さん)

 

・芳雄さん「僕の曲2、3曲あげるって言ったのにもらってくれなくて。年明けにこの辺り(=シアタークリエ)で歌うんでしょ?」

・花總さん「やっと(海宝さんと)共演できたのに全然一緒のシーンがなくて、会えるのが最後のカーテンコールで向かい合うときだけだったんです。ぜひまた共演しましょう~!」

 

で、海宝さん退場後。

 

芳雄さん「そういえば東京千穐楽だった人もいるんです。フランツ役の佐藤…下の名前なんだっけ、覚えられなくて」(すっとぼけ)

花總さん「隆紀だよ~隆紀っぽくないけどw」

 

その場にいないのにいじられまくるシュガーさんが面白すぎました。笑


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以下、キャスト別感想です。

 

とはいえ、正直キンスキー公とフィッツオークに関しては、ただただ「なんか嫌な感じの人」という印象しかなく、ヨハンナも歌やお芝居がどうと書けるほどの出番がなかったので、吉野さん・渡辺さん・実咲さんに関してはメモしておりません。3人ともまた別の作品で観られたらいいな…。

 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン井上芳雄さん】

・この役をシングルキャストで演じてるの、正気の沙汰じゃあないッ(岸辺露伴構文)

 

・ずっと歌ってる。これでもかってくらい歌ってる。出番がないシーンはもちろんありますが、全編の3分の2は出ずっぱりでした。映像やラジオなど他のお仕事もあるのに、一体どんだけ体力があるのやら…クローンが5人くらいいるのか、本当にただただ(いい意味で)バケモノなのか。

 

芳雄さん出演作をそんなにたくさん観てるわけではないですが、絶対に「あ、今日ちょっと不調なのかな?」みたいなことがなく、あんなに年に何作品も出て体調を崩されることもほとんどなく(もちろんものすごくケアされてるはずですが)、あの体力と喉の強さがあるからこそ、たくさんオファーも来るんだろうなと思いました。とはいえ、彼も(多分)人間なので、休んでほしいな…とは思います。

 

・普段の芳雄さんは、フレンドリーさはありつつ、ちょっと人を寄せ付けないオーラもあるなと勝手に思ってるので、ルードヴィヒはそういう意味でもわりと合ってるんじゃないかなと思いました。あの髪型が似合っちゃうのも地味にすごい気がします。

 

・ただ今回はあんまり印象に残る感じもなく…。今の時点でこの役をシングルでこなせるのは、日本では芳雄さんしかいないなぁという感想が1番でした。

 

アントニー・ブレンターノ:花總まりさん】

・なんというか…社会的地位が若干下がっただけでほぼシシィ(エリザベート)みたいな役柄だったので、花總さんの「新境地」ではなかったものの、こういう役柄を演じたら天下一品だなと改めて感じました。

 

とにかくどの衣装を着てもお姫様のようなキラキラオーラを放っていて、花總さん自身はわりと小柄なのに、どうしてあんなに出てきただけで存在感が放てるんだろうと、「エリザベート」のときから不思議に思ってます。これこそ「持って生まれた才能」としか思えない…。

 

・歌唱に関してはキーが合っていたのか、個人的には「エリザベート」の時よりも良かったと思いました。この方、こんなに力強く歌えたっけ?とうれしい驚きがありました。(「リトル・プリンス」の歌唱も良かったので、単純に「エリザベート」の楽曲のキーがやや苦手なのかな…と思ってます)

 

千のナイフ♪は感情と歌唱の安定感を保つバランスが絶妙で、前回観たときよりも格段に感情が伝わってきました。

 

・ルードヴィヒとのシーンも良かったですが、個人的には佐藤フランツとの言い合いの歌唱シーンがとても好みでした。「エリザベート」のときと相手(役者)は同じなのに、2人の空気感がまるで違っていて、プロだし作品が違うから当たり前なんですが、純粋にすごいなと感動しました。

 

【カスパール・ヴァン・ベートーヴェン:海宝直人さん】

・最近こういう「3番手ポジション」はなかなか回ってこなかったと思うので、観てるこちらとしてもすごく新鮮ではありました。出番は少なすぎたけど(大声)

 

・実生活でも「弟」だからなのか、「弟感」を出すのがすごくうまかった(?)です。もちろんお兄ちゃんとお姉ちゃんだと若干違うとは思いますが…。

(海宝さんにはお姉さんと弟さんがいらっしゃいます)

 

・芳雄さんとのデュエットがすごい!みたいに言われてましたが、個人的には全然物足りなかったです(ド直球感想)あれだったらいつぞやの芳雄さんコンサートでの♪For Good♪の方が聴きごたえありました。

(また共演するかコンサートにゲストで出てデュエットしてください~~~~!!!!!)

 

・1幕はともかく、2幕はトータル4分・1シーンのみの出演にもかかわらず、登場してあそこまで一気に感情のボルテージを上げられるのは、これもまたプロだから当たり前なのかもしれないですが、本当にすごいなと思いました。これは出番が少ないからこそわかったことかもしれません(でもさすがに少なすぎるってば)(大声)

 

・再演があるかわかりませんが、海宝さんor小野田さんor2人で次のルードヴィヒ役なのかなと思いました。ただし2人とも、あのルードヴィヒヘアスタイルが似合いそうにないのがなぁ…(余計な心配)

 

【ベッティーナ・ブレンターノ:木下晴香ちゃん】

・晴香ちゃんも、再演があればトニ役候補なのかしら…と思いながら観てました。

 

そして晴香ちゃんがいくらかわいく可憐に演じてくれても、トニと同じくらいベッティーナはよくわからんかった…

(基本的にこの作品の女性陣の思考回路がよくわからんかった…)

 

・衣装はあどけなさを表すためなのか、なんだか野暮ったいドレスが多かったですが、晴香ちゃんは背丈があるので何着ても似合いますし、男性陣との身長差もちょうど良いんですよね。そして歌は言わずもがな素晴らしかったです!

 

【フランツ・ブレンターノ:佐藤隆紀さん】

・今作を観て一番良かったこと:シュガーさんが意外と悪役もうまかったこと。

 

レ・ミゼラブル」でバルジャンを演じているとはいえ、バルジャンって根っから悪い人ではないですし、シュガーさん自身が温和なイメージがありますし、私が知らないだけで悪役演じたことあるのかもしれないですが、少なくとも私は初だったので…。

 

・みなさん歌唱力抜群でしたが、ずば抜けて迫力があったのはやっぱりシュガーさんでした。サカケンさんフランツは残念ながら観られてないんですが、シュガーさんフランツはとにかく声での圧のかけ方がえぐかったです。歌い方としては「エリザベート」のフランツではなく、「レ・ミゼラブル」のバルジャン。相手を委縮させるような歌い方は客席で聴いてても怖かったので、あれを近くで聴いたらものすごい圧を感じるんだろうな…。

 

・トニをいまいましげに見つめる表情や、心底軽蔑したようなそぶりを見せるお芝居など、本当に「エリザベート」のフランツどこいった…?レベルで別人でした。これはぜひとも、他作品でも悪役をやってほしいなぁ

 

MAはマリー・アントワネットの旦那さん(国王)役じゃなくて、吉原さんや上原理生さんがやってた役(役名ど忘れ)を演じてほしいですし、「モーツァルト!」のコロレド猊下でも観てみたいです。