モーツァルトにオペラを提供した、ロレンツォ・ダ・ポンテという詩人の生涯を音楽劇にした初演作品。
初見だからってこともあるかもしれませんが、いまひとつ作品に乗り切れない自分がいました。全体的にあまりにも「そつのない作品」というのが第一印象でした。
クセのある演出は一切なく、非常に王道で誰でも楽しめそうな作品に感じましたし、物語として普通に面白かったんですが、突出して面白かったわけではなく、2回目を観る予定はあったものの、「2回目も楽しみ!」という気持ちにはいまいちなりませんでした…。
その【乗り切れなかった要因】を考えてみると、いくつか思い当たる節が。
1つ目、楽曲が全然頭に残らなかったこと。
終演後、口ずさめるメロディが全くなかったです。劇中で聴いてるぶんには素敵な楽曲ばかりでしたし、海宝さんの超絶歌唱力を全開にしてくれる楽曲もあったので、そういう点では満足でした。
この作品があくまでも「音楽劇」であり、「ミュージカル」ではないから、あえて楽曲の印象を強めていないのかな?と思ったのですが、この2つの違いが実はあんまりわかってなくて…。
今作はそれこそオペラのように、拍手する間もなく音楽やセリフが続いていく印象がありました。だからなのか、中盤は少しダレてるようにも感じられてしまい、2幕は特に「え、これいつ終わる…?」と思いながら観ておりました。
ミュージカルを観始めてから常々思ってますが、私は物語がどれだけト◯チキだろうと、音楽が自分の好みに合っていれば「最高の作品」と感じる感性の持ち主なんだよなぁ(唐突な自己分析)
2つ目は、それこそモーツァルトを主役にした「モーツァルト!」があまりにも好きすぎて、その作品と比べてしまったこと。
もちろん今作は「モーツァルト!」と同じ時代を描いてますし、モーツァルトを物語のキーパーソンとして扱う以上仕方ないのですが、どうにもかぶる部分がありました。比べちゃいけないよなと思いつつ、劇中のモーツァルトの人生の流れに合わせて「M!」が脳内上演されておりました。
逆に好きだったのは、ダ・ポンテとモーツァルトの別れのシーン。かたや今でも名を残している偉大な作曲家、かたやその影に隠れてしまい、一般的には名前をほとんど知られていない詩人。天才同士だった彼らをここまで分けた要素は一体何だったのか。
「もう貴族の時代は終わった。僕は民衆のために作曲したい」というモーツァルトに対し、「自分はもう一度宮廷で仕事をするまで諦めない」と食い下がるダ・ポンテ。宮廷作曲家の座に未練がなくなったモーツァルトをダ・ポンテは「負け犬」呼ばわりしますが、「自分が作りたいと思ったものを全力で作る。そのためには富も名声も捨てる」というモーツァルトの生き方を、ダ・ポンテは本当はうらやましく思ってたのかもしれません。
でも細く長く、あがき続けながら生きたダ・ポンテは、最終的に80歳超まで生きたらしく、奥さんと仲睦まじく暮らしたようなので、何が【幸せ】かなんてわからないよなぁとも思いました。「モーツァルト!」を観た時も思ったんですが、モーツァルトって幸せだったんだろうか…?
ところであまりこういうことを言うのもどうかと思いますが、もっとブロマンスっぽく仕立てても良かったのでは?ダ・ポンテとモーツァルトのコンビは、悪くはないもののすごく印象に残るわけでもなかったので…。
以下、キャスト別感想メモ。
【ダ・ポンテ:海宝直人さん】
・\よっ!イタリアの伊達男!/女とあらば誰にでも(既婚者でも)手を出すという、シンプルにく●野郎なんですが、あまりにも堂々としてるので、むしろなんか愛せちゃうキャラに仕上がってました。
「王家の紋章」の俺様キャラは、公演序盤はあんまりハマってなかったので(※個人感)今回も…と思ってましたが、それは全くなかったです。なんなら黒髪ロングヘアも全然違和感なかったのはなんでだろう…。メンフィスみたいにストレートじゃないからかしら…。
・手先(指)の操り方で女を落としてますねありゃ(指先の動きの色気がえっっっっっぐかったです)
・素のご本人様がホントのところどうなのかはさておき、イメージとしてはわりと「清廉潔白オーラ」の持ち主なので、こういう役柄を演じてもそこまでものすんごい生々しさを感じることもないのは強み…なのかもしれません。エロさとしては「イヴ・サンローラン」の方がヤバかった記憶があります(あれなんだったんだろうな…w)
・膝から崩れ落ちる海宝直人〜〜〜!!!!!終盤、ダ・ポンテがナンシーに(文字通り)拾われ、そこまで必死にヨーロッパを横断してきた張り詰めた気持ちが途切れた結果、モーツァルトの死を初めて悼んでわんわん泣くシーン。ああいう芝居って結構珍しい気がします。歌ばかり注目されがちだけど、お芝居も素敵ですよね…。
【モーツァルト:平間壮一さん】
・平間さんがキャスティングされてるのに、ほぼ踊らせないってどういうことですか!?!?(大声)
作曲しつつバリバリ踊っちゃうモーツァルトがいたっていいのでは!?!?というわけで、平間さんのファンの皆さま的にはこの役どうだったんだろうと思わずにいられませんでした。愛嬌のあるキャラクターで良かったですが、平間さんだからこそ!という役でもなかった気がして…。
・終始赤いコートに白タイツ姿なんですが、「目隠し演奏」をしていた幼い頃からシルエットが変わらないんだろうなと想像できる、かわいらしいモーツァルトでした。コンスタンツェに一途だったので、「モーツァルト!」のヴォルフガングは見習ってください(真顔)
・無駄に顔がいい相葉サリエリ先生。突如バルタン星人のような笑い声を発するのはやめてください相葉サリエリ先生(めっちゃ笑いましたw)
・ばっちさんは久々に観た気がしますが、やっぱり圧倒的主人公ボイスでした。