Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2022.4.5 ミュージカル「next to normal」マチネ公演:「普通」の隣だっていいじゃないか

数年前、「TENTH」というタイトルのコンサートがあり、そこで「next to normal」のダイジェスト版が上演されていました。海宝さんが出演されていたので気にはなったんですが、当時はスルーしておりました。

 

今回その「next to normal」がフルバージョンで上演され、海宝さんがまた出演されるとのことで観劇しました。


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*物語の核心となるネタバレをこの後すぐに記載しています。知りたくない方はUターンお願いいたします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大まかなあらすじとしては、息子を亡くして精神を病んでしまった母・ダイアナ、それを支えようとする夫・ダン、そして亡き兄よりも存在を軽んじられていると苛立つ娘・ナタリー。と、その様子をいつもそばから眺めている亡くなった息子・ゲイブ。このグッドマン家4人が、深い悲しみからなんとか立ち直って「普通」になろうともがく話でした。

 

※以下、初見の雑記メモ+海宝ゲイブの感想です。

 

正直観ていてハッピーな気持ちにはなりません。こじんまりとした範囲内での物語なのでずっと閉塞感に満ちています。

 

でも誰もが身近な「家庭内のお話」だからこそ、今は健全なメンタルで生きているけれど、この先自分や家族、親しい人が耐え難い悲しみを感じたときに、絶対にダイアナみたいにならないかと言われたら、【絶対】はないですし、「normal」と「crazy」は本当は紙切れ1枚分もないほどの差だと思いますし、大体「normal」を定義できる人なんて、実はこの世に1人もいないんじゃないか、誰も「normal」を知らずに「自分はnormalである」と思って生きてるんじゃないかなと、とりとめもなくいろいろなことを考えました。

 

1回だけだと細かいところまでは把握できなかったですし、あれは果たしてハッピーエンドだったのか、はたまたバッドエンドだったのか、そのどちらでもないのかすらわかりませんでした。

 

赤・紫・青といった色がとても印象的な作品で、ラストにダンとゲイブが赤い服装になり、ダイアナとナタリーは青い衣装をまとっていたのは何かしら意味があるんだろうかとふと思ったり。

 

母親を疎ましく思ってるはずのナタリーの言動が、ところどころダイアナとシンクロしちゃうのはちょっと怖かったです。でも最後にナタリーが「いつか自分も母親のように狂う時が来るかもしれない」と吐露したとき、ヘンリーがしっかり受け止めてくれたから大丈夫だと信じたいなぁ…。

 

ダンは観ていて一番つらいキャラでした。いっそダイアナのように狂えた方が楽なのかもしれないと、彼を見てると思ってしまいました。だからやっぱりゲイブが見えた瞬間から(=ゲイブの名を呼んだ瞬間から)ダンは「normal」であることをやめたのかもしれません。

 

海宝さんのゲイブ、めちゃくちゃ怖かったです。海宝さんのアルバムに収録されている♪I’m Alive♪の歌詞には、前々から違和感を抱いていたので、今回謎が解けてすっきりしたんですが、死んだように生きる家族の頭上で、誰よりも生き生きと、生命力を爆発させながら歌う海宝ゲイブが心底恐ろしかったです。

 

1幕前半で、ゲイブがすでにこの世にいないとわかってからは、ゲイブがダイアナという名の檻に閉じ込められた化け物にしか見えませんでした。本当は彼だってその檻から出たいはずなんですが、ダイアナの気持ちが出口に蓋をしているようにも思えましたし、ダイアナが作った檻の中ではゲイブが主導権を握ることができるので、彼にとっても居心地のいい場所なんだろうなと感じました。

 

ゲイブがダイアナを自分がいる世界へ導こうと誘惑するシーンは、完全に「エリザベート」にしか見えなくて、海宝トートじゃん…!!!!!!ってなりました(唐突)

 

そういえばクリエってあんなに音響悪かったっけ…。音がわんわんしちゃって歌詞があんまり聞き取れなかったのは残念でした…。