Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.12.9 「彼女を笑う人がいても」ソワレ公演:自分の正義を貫いて散った命


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木下晴香ちゃん初のストプレご出演!ということで気になった演目でした。

 

事前に読んだあらすじや、冒頭の共同宣言の文体の古さに「これ理解不能なやつかなぁ」とちょっと身構えたんですが、案外わかりやすい話だったので安心して観劇できました。非常に地味な作品でしたが(そして政治批判的な色も強めだなと思ったんですが)社会に生きる人間として、誰もが目を背けてはいけないテーマを取り扱ってたように思います。

 

社会というのは、必ずしも「多数決」で方針が決まるのではなく、一部の権力を持った人間が自分たちの意のままに動かし、力を持たない人たちはただただそれに翻弄されて飲み込まれるだけ。それは今に始まったことではなく、1960年に生きていた人たちにも当てはまることで、ひいて言えば私たちが住む「国」はそういう性質を持っているんだ、ということを突きつけられた気持ちになりました。

 

タイトルにある「彼女」というのは、1960年6月に起こった「安保闘争」で、実際に命を落とした女学生のこと。劇中「彼女」の姿は一切出てこないですし、名前すらも出てこないので「彼女」と呼ばれてるんですが、舞台上に出てこないのに、ものすごい存在感だったのが不思議でした。

 

自分の信念に従って、命を落とすかもしれない覚悟を持って、最期まで折れることのなかった「彼女」。警察の発表では「圧死」ということになっているそうなんですが、実は本当の死因はあやふやなままだそう。そもそも命を懸けてまで安保闘争に身をささげたのは、なんでだったんだろう…。

 

ちなみに1960年と現在(2021年)とを行き来しながら進む物語でしたが、2021年の話はなくても良かった…かも?「大多数は反対しているのに強行される東京オリンピック」というのを、安保闘争に重ねたかったみたいですが…。

 

 観ながら思うことはいろいろありましたが、一度見ただけではなかなかうまく語り切れないので、あとは役者陣の印象を少しだけ記録しておきます。

 

メインの若手3名(瀬戸さん、晴香ちゃん、渡邊さん)は、特に物語前半は、話しているセリフが舞台上だけで完結しているように感じました。ベテラン役者とおぼしき方が出てくると、声が劇場いっぱいに広がって聴こえて安心できたので、これは経験値の差なのかなと。物語的に盛り上がってくる後半部分は3人も悪くなかったと思います。

 

瀬戸さんは105分間出ずっぱりで、水分補給もできてなかったような…?あの膨大なセリフを一体どうやって頭に入れたのか、秘訣が知りたいです(切実)

 

終盤の、自分の社のトップである社長(?)とマンツーマンで持論を戦わせるシーンが素晴らしかったです。1960年の時代設定なのに、内ポケットから小道具の紙を出そうとしてスマホを落としちゃったのはご愛敬。笑

 

晴香ちゃんは、ミュージカルで施している華やかな舞台化粧ではなく、かぎりなく「素」に近い印象のビジュアル。武器である歌もダンスも捨てて、芝居一本で頑張ってるな…というのをその姿から感じ取りました。

 

1960年と2021年との2役の違いがはっきり分かる演じ方が好きでした。セリフ回しはもう少し抑揚が欲しいかなというのと、声量はもっとあっても良さそうです。

 

どうやら晴香ちゃんのお父さんがこの回を観に来ていたらしく、アフタートークの時、「平山温泉って熊本にあるんだっけ?ね、お父さん?」って客席に向かって問いかけてて、それがめちゃくちゃかわいかったです。大人びて見えるからたまに忘れるんですけど、まだ22歳なのよね……(遠い目)

 

渡邊さんはそもそも今回が舞台初挑戦。マチネとソワレの意味もこの前日に知ったそうです。

 

自分の出番がない稽古にも見学に来てたことを、アフタートークの時に司会を担当されてた共演者さんに褒められてましたが、「事務所が行けって言ったから」って言ってて、正直すぎて笑いましたwアフタートークでの盛り上げ方が上手で好感持てました。

 

久々のストプレ、頭使ったな~。でもあの「考える」ことにエネルギー使う感じ、個人的には結構好きです。