Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.9.10 ミュージカル「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」ソワレ公演(三浦・妃海ペア千穐楽):血みどろブラックコメディ


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2020年3月に観に行く予定だった「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」。

 

当時は開幕→中断→上演再開を経て、最後は中止になってしまったので、観ることは叶いませんでした。

 

カンパニー自体がとても小さく、すぐに招集がかけられたからなのか、1年ちょっとで再演が決定。ただし今回も(というか今回の方が)状況的には悪化していたので、無事に観られるのかどうか、当日まで心配でした。観られて本当に良かったですし、この後千穐楽まで無事に上演できたそうなので良かったです!

 

ディズニー映画音楽の神・アラン・メンケン氏が、作曲家活動のわりと初期にこの作品に楽曲を提供したということで興味を持った作品です。

 

劇中、ものすご〜〜く聴き覚えのあるメロディーが歌われて、「どっかで聴いたことあるなぁ」って思ってたら、海宝さんの2ndソロアルバムに入ってる♪Suddenly Seymour♪でした。なるほど、Seymourってこの作品の主人公のことだったんですね…!ちなみに日本語歌詞でも、サビの部分は♪Suddenly Seymour~♪って歌われてたのは違和感120%でした…。

 

上演時間は、休憩を抜いたら2時間弱というとてもコンパクトなミュージカル。登場人物も少なく濃ゆいキャラしか出てこなかったので、「濃く!短く!」な印象でした。

 

あらすじは、例えるなら「アラジン」に大量のブラックユーモアをまぶした感じ。主人公・シーモアは貧しくはないけれど、孤児院育ちで自己肯定感が低く、でも心優しい青年。ヒロインのオードリーは、プリンセスではないけれど、キラキラしててかわいくて、シーモアにとっては高根の花な存在。オードリーⅡは3つどころじゃない、たくさんの願いを叶えてくれる不思議なお花。ただしその代償は「人間の血肉」…と、なんとなく「アラジン」っぽいなぁと思いながら観てました。

 

オチは正直「え????」でしたが、作品のノリのせいかあまり悲劇には感じられなかったかな…。人の命を犠牲にしてまで自分の欲望を果たそうとする人間の恐ろしさを、コミカル&ダーク&カラフルに描いているのは、個人的には結構好みでした。

 

演出がところどころ独特で面白かったです!まさか3Dメガネを使って観劇する日が来るとは…。オードリーがシーモアとの理想の生活を語る場面で、舞台上にスクリーンが下りてきて、そこに映る映像を3Dメガネで観る仕様でした。3Dのクオリティとしてはさほど高くありませんが、劇場で見ると新鮮さがあり、まるでディズニーランドのようでした。

 

さらに客席で声を出せないため、オリン(石井一孝さん演じるクレイジー歯医者)に対する歓声を、「歓声を文字で書いた紙」をお客さんが頭上に掲げて表現する、という新しいタイプの演出が楽しすぎました。本当に一瞬しか使わないからもったいない気もしましたが、あれはあれで楽しかったな〜。舞台上から見たらさぞかしシュールなんでしょうね…。笑

 

今回は客層が良かったのか(?)とにかく客席がものすんんんんごく静かで本当にびっくりしました。三浦シーモア楽日だったので、彼目当ての若い女性ファンが多い印象でしたが、ほとんどがきちんとマナーを守ってたと思います(そもそも1人で来てる人も多かったけど…)唯一場内で話しまくってたのが、どうやら舞台関係者っぽいおっさんだったのはどうなんだ…。

 

簡単にキャスト別感想。

 

シーモア:三浦宏規さん】

・「レ・ミゼラブル」にてマリウスとして観たばかりでしたが、とにかく若くてかわいらしい~!!!という印象です。開演前の影アナウンスから、終演後のカーテンコールでの挨拶まで、とにかくずっとかわいかったです。

 

・作品の毛色が全然違うからだと思いますが、レミゼよりこちらの方が断然リラックスした雰囲気を感じられましたし、シーモアの方がのびのびと演じられてるような。役柄や楽曲(歌唱)もこちらの作品の方が合ってると思います(※個人感)

 

・表情がころころ変わってまるでアニメのキャラのよう。観てるだけで楽しかったですし、シーモアが心の奥底に持つちょっとした闇の部分が顔を覗かせる場面も上手かったです。ときどきものすごい狂気の顔するんですよね…。

 

・開演前の影アナウンスは、どうやら初日も生で話したようなのですが、この日も千穐楽だったからなのか、「急に生でしゃべることになっちゃって…」と話し始めた三浦シーモア。私はこの回が初見だったので、そういうリップサービスなのかと思いきや、どうも本当に初日以来だったそうです。

 

「噛まずに言えたら拍手してね!」って言われたので、アナウンス終了後は全力で拍手しましたよ…!こういう風にキャラクター(役者さん)がお願いだったり注意のアナウンスをすると、少なくとも客席は耳を傾けると思うので、作品によりけりですが取り入れられると良いなと思います。

 

・劇中はかわいそうになるくらい汗だくだくだったので、若さを感じました。新陳代謝が良すぎるんだろうなきっと…。

 

・終演後のカテコは、主演だけどカンパニー最年少だったため、共演者にいじられまくってました。挨拶がちょっと堅くなると「サラリーマンみたい」と言われ、「最近寒いので…」と言うと「今日あったかいよ!」と言われ…。たじたじになる姿が面白かったです。笑

 

【オードリー:妃海風さん】

・2020年は「秒速5センチメートル」と「チョコレートドーナツ」で拝見した妃海さんですが、ミュージカルで観るのはおそらくこの時初めて…?

 

第一声に「え!?!?」ってなりましたが、オードリー役はみんなあんなトーンで話すのでしょうか…。最初はあまりにも作りすぎた声で違和感ありましたが、聞いているうちになんだかクセになり、カーテンコールで普通のトーンで話し始める妃海さんに、逆に「!?」ってなるくらい、オードリーボイスが馴染んでました。笑

 

・オードリーはあんなにふわふわほわほわな女の子なのに、暴力的なオリンと付き合ってたり(しかも暴力振るわれても離れられなかったり…というのは典型的なDVというやつなのでしょうか…)、微妙に冷めたことをボソッとつぶやいたり、キャラクター勝ちみたいな部分があるので、演じてても楽しそうでした。

 

【ムシュニク:阿部裕さん】

・アルコ伯爵ぅ!?!?!?!?(CV:古川ヴォルフ)

 

・2020年公演では岸祐二さんが演じていたムシュニクさん。岸さんのご都合がつかなかったのか、阿部さんにバトンタッチされてました。どことなくかわいらしさを感じるおじさま役が似合います。

 

・ムシュニクさんは一番かわいそうな役どころでした。優しかったのにあんな目に遭うなんて…。

 

【オリン:石井一孝さん】

・人の痛みが自分の快楽になるドSな歯医者オリン。石井さん、素なのか…?というくらいノリノリでした。笑

 

・オリンの顛末は決して笑い事じゃないんですけど、あれは笑っちゃいます…。

 

というわけで、良い意味で「B級」ブラックコメディなミュージカルでした。なーんも考えずに楽しめる作品も大事だよなぁとひしひしと感じたので、再演あったらまた観に行こうと思います!