Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2021.02.06 ミュージカル「マリー・アントワネット」:世界史の教科書代わりになりそう

2018年公演時に興味を持ったものの、積極的に観に行こう!とはならず、そのままスルーしていた「マリー・アントワネット」。今回が初見でした。


(2018年公演を観ていたら、古川さんのフェルセン伯爵を観ていたかもしれなかったのに…と思いましたが、ハマっていたかはわからないなぁ…と思うと、好きになるタイミングって人それぞれなんだろうな)

 

うーーーーーーーーん。
これは私の中で、全く新しい立ち位置にある作品になりました。

 

作品全体の雰囲気や世界観は比較的好きです。歌も良かったし、演出も最後の1曲以外はそんなに引っかかる部分がありませんでした。舞台セットも衣装も派手で見ごたえがあり、役者陣も総じてうまかったですし、話も非常にわかりやすくできてました。

 

私がもし「ミュージカル全く観たことないよ!」って友達を連れていくなら、間違いなく「レ・ミゼラブル」ではなくこちらを選びます。

 

でも、これをリピートしたいか、今すぐもう1度観たいか、と問われると、そこまでの熱意が湧かない作品でした。

 

なんで「良い作品だけどリピートはない」と思ったのか、自分なりに考えてみましたが、私にとっては、あまりにも全部が「良」で、優等生すぎる作品に感じました。 

 

物語は、まるで世界史の教科書を読んでいるかのようで、筋道立ってて「これどういう話?」とは全くなりませんでした。

 

お金も時間も持て余し、地位も名誉もあるマリー・アントワネットと、明日食べるものにも困っているようなマルグリット・アルノーという、天と地ほどの差がある女性2人が主人公。そのため、お話の軸はどうしても2つできるため、わかりやすくまとめるって結構大変そうなんですが、マリー・アントワネットが絡む事件に、うまい具合にマルグリットを絡ませたり、(完全にフィクションですが)マリーのお世話役をマルグリットが担当したり、2つある軸をときどき交わらせることで、すっきりした見せ方になってました。

 

あとこういうお話だと、マリーかマルグリットのどちらかに肩入れした話になっちゃいそうですが、個人的にはどちらの気持ちも、よくわかりませんでした。比較的中立に描かれた話なのかなと(だからちょっと俯瞰した冷静な目で見ちゃって、気持ちが入らなかった=それほど作品にハマれなかったのかもしれないですけど)

 

楽曲は、さすがクンツェ&リーヴァイコンビで、本当にメロディーが美しい曲が多いですし、物語にすっと馴染む曲ばかりでした。ただし「エリザベート」や「M!」みたいに、「これ!!!!!!!!!!!」と思える曲は正直なくて、唯一家に帰ってからも思い出せたのは♪あなたに続く道♪だけでした。あの歌、あんな最初のほうで歌うんだ!?ってびっくりしましたが。あ、あと古川さんが配信ライブで散々歌ってた♪まさ~か~~~♪は、開始早々歌われてたのですぐわかりました。笑

 

演出はおおむね良かったです(上目線)ところどころ既視感のある演出もありましたけど…フランスのデカい旗がばさーって掲げられた瞬間、♪闇広♪歌うんか??ってなったし、民衆が集まって歌うシーンはレミゼ始まるんか??ってなったし。

 

1つだけ、どーーーしても好きになれなかったのは、ラストに出演者全員で歌う曲の歌詞が、やたらメッセージ性の強いものだったこと。今まで俯瞰して見てたのに、急に「過去から学べるか」やら「どうすれば変えられる?」みたいな投げかけが始まり、「え??」って急速に冷めてしまいました。マリーの処刑が終わった瞬間に幕閉じたっていいんじゃない?くらいに思ってたので、正直あの歌はいらないかな…と思いました。少なくともマルグリットがオルレアン公とエベールに仕返しをして、マリーのことを想うような表情で立ち尽くして終わり、とかでもいいのでは??

 

舞台セットと衣装はとっても好きです!!盆かつ八百屋舞台!!演者さんがめちゃくちゃ大変なやつ!!衣装も、さすがにベルサイユ宮殿の人たちはドレスが重たそうで、マリーの衣装はかつらを合わせたら15キロだったような…(花總さんがご自身のインスタに載せてました)よくそんな重たい装備で、あの舞台を縦横無尽に駆け回るな~とひたすら感心しておりました。花總さんも笹本さんも、元から華奢なのにあれ以上お瘦せになったら大変よ…。

 

以下、キャスト別感想です。 

 

マリー・アントワネット笹本玲奈さん】
・特に笹本さんのせいではないんですが、1幕はとにかくマリーに1ミクロンも共感できなくてむしろ困りました。若干悪意を感じるくらいに「無知」なキャラクターとして描かれてたように思います。舞踏会に乱入したマルグリットに対して、「私は貧乏人の話もちゃんと聞くのよ」みたいなオーラを出しながら、「シャンパンはいかが?」って言っちゃうし(そりゃマルグリット怒るわ…)、フェルセンが何度も警告を出してるのに全っっ然聞く耳持たないですし、民衆が貧困にあえいでると聞いても「私にどうしろっていうの???」とか言っちゃうし、人が自分の言うことに従わなさそうになると「私はフランス王妃なのよ!」とか言っちゃう、完全にやばい人でした。特にドレス選ぶシーンとか、ちょっと引きながら観てました…(笹本マリーの笑顔はかわいかったですけど)

 

・そのため、2幕でいきなり「マリーかわいそう」展開になっても、「まぁ……あなたも結構ひどかったですし……」と思わざるをえなかったのが正直なところです。もちろんあそこまでのひどい仕打ちを受ける必要があったか、と言われると微妙なんですけど、民衆の怒りがそこまで高まるのを黙って見ていただけなのも確かなので、こうなったのも彼女に全く責任がないわけではないよなと。最後に自分で言ってましたが、彼女の罪は「プライドと無知と人の善意を信じすぎたこと」だったんだと思います。

 

・あと「愛される王妃にならなくては!」みたいなセリフか歌詞があった気がしますが、彼女が思う「愛される」はどこか間違っている気がしました。着飾って可愛くいれば、周りでこびへつらってる貴族たちは可愛がってくれるかもしれないけど、それが貧しい民衆に対しても効力を発すると思ってたのならおそらく大間違いで…。

 

・笹本マリーは、無邪気でかわいい1幕から、悲劇に次々見舞われる2幕の落差がすさまじく、特に子供(ルイ・シャルル)と引き離される場面なんて、あまりにもつらくて見ていられませんでした。あまり気位の高さとか凄みみたいなのは感じず、ひたすらキュートなお姫様の印象でした。

 

【マルグリット・アルノーソニンさん】
・「キンキーブーツ」以来でしたが、正直言って、私は彼女が全体的に苦手です…。シアターオーブのせいなのかもしれないですが(キンキーブーツも同じ劇場だったので)、歌い方やセリフの言い方がものすごく乱暴に聞こえて、何を歌ってるかわからないし、何を言ってるかすらわからないみたいなことが比較的多かったです。歌も、ひたすらがなっているようにしか聞こえず、もう少し違う表現の仕方があるんじゃないかなぁ…と思ってしまいました(完全に素人意見ですけど)

 

【フェルセン伯爵:甲斐翔真さん】
・真面目も真面目、大真面目なフェルセン伯爵。劇中何度も「真面目か!?!?!?!?!?」ってなりました。マリーはいったい、フェルセンの何に惹かれたんだろう。顔?(身も蓋もない発言)(実際フェルセンはかなりの美男子だったらしいので)

 

・ところで(これは別に甲斐フェルセンだけの仕草ではないと思いますが)♪あなたに続く道♪で、マリーにキスしようとして「は…!」って相手の立場を意識した表情になり、手の甲へのキスに切り替えるんですが、あからさまにイチャイチャするよりも、プラトニックな愛情表現に弱い私は、あの瞬間座席で1人大興奮してました(悶絶)あんなに\きゃー♡/ってなったの、映画「パシフィック・リム」のラストシーンで、主人公とヒロインがキスじゃなくておでこをこつんってぶつけ合った瞬間以来な気がする(洋画ファンにしか伝わらん例え)

 

・甲斐さんは、本当は「RENT」で観るはずだったんですが、観劇予定だった回が中止になっちゃったため、今回初めてでした。2020年の「デスノート」でミュージカルデビューということで、ミュージカル役者としてはようやく2年目に入ったくらいだと思いますが、3作品目にしてかなり大きな役に抜擢されているので、なかなか順調なキャリアを積んでるなと思います。

 

・見た目の印象は、韓国の俳優さんみたいで、体格も非常に恵まれてるなと。すらっとしているというよりかはがっしりしてるので、フェルセンがアメリカに渡って戦争をして帰ってきた軍人、という設定もぴったりだなと思いました。

 

・歌は、ミュージカルデビューして日が浅いわりには聴きやすかったです。たまにオーケストラに埋もれることもありましたが、声質が太めでしっかりしていて、音程もそこまでぶれず、ちょっと危うかったのは♪遠い稲妻♪の高音部だけだったような…。

 

・おそらく今後どんどん色んな作品のプリンシパルキャストに選ばれそうですし、近いうちに帝劇作品にも出てきそうです(ちなみにインタビュー記事を読んだ限りだと、ご本人は将来トート閣下を演じたいそうですが、個人的にはヴォルフガングを見てみたいかも…!甲斐フェルセンを見てたら、韓国版M!の俳優さんと姿が重なったので)

 

・一方お芝居は、正直まだまだこれからかなと感じました。誠実さと実直さはよく伝わってきたんですが、喜怒哀楽はもっとわかりやすく表情や仕草で出してもいい気がします。最初から最後まで、緊張しているからなのか、それともそういう役作りなのか、ほとんど表情が和らぐことがなく終始険しい顔をしていたので、「フェルセンはマリーのこと、なんで好きなのかな?ていうか本当に好き??」と思ってしまったくらい(確かにフェルセンはマリーに警告ばっかしてましたけど。笑)お芝居のスキルがついたら、きっと次世代のミュージカルプリンス筆頭候補になるのでは。絶対良い役者さんになると思ってます。今後に期待!!!!!

 

【オルレアン公:上原理生さん】
歌がうまい(語彙力)

 

・上原さんの声、手触りの良い高級羽毛布団みたいなんだよなぁ(語彙力)

 

・前任者が吉原さんと聞き、「わ、わかる~~~~~」ってなりました。笑

 

・オルレアン公のソロ、2曲くらいありましたが、圧倒的ヴィランズ感があってめちゃくちゃかっこよかったですし、上原さんが演じる「アラジン」のジャファー、「ノートルダムの鐘」のフロローが見てみたくなりました。

 

ルイ16世:原田優一さん】
・劇中、共感することはなくとも一番同情したキャラクターでした。めっちゃ不憫じゃない??????

 

・王としては、失礼ながらあまり能力は高くなかったんだろうなと思いましたが、本人が歌っていたとおり、鍛冶屋の家に生まれていたら、お金や地位や名誉がなくても、きっと幸せな人生を送れていた人だったんでしょうね…。♪もしも鍛冶屋なら♪って歌が切なすぎて、胸がぎゅっとなりました…。

 

・嫁が白昼堂々不倫してて、それ容認してるってさすがに心が太平洋すぎる(真顔)
でも一家で逃亡しているときに、逃亡先や手段を手配してくれたフェルセンに「目的地まで送っていきます」と助け船を出されるんですが、「いや、もう大丈夫だ。ここまでありがとう」って断固拒否するのが、彼の最初で最期の悪あがきのようで、あそこで「マリーアントワネットの夫」であるというプライドを、ほんのり見せてくるのも良かったです。

 

・あとギロチン開発してるときに、作ってる人(ギロチンさん?)に「刃を斜めにしたらよく切れるかも」とかアドバイスしててうわあああああああ(発狂)皮肉にも、自分の首がそれで落とされるとは知らずに(うわあああああああ)

 

・原田ルイの感想、というよりルイというキャラクターの感想になってしまいましたがまぁいいか(開き直り)

 

【レオナール:駒田一さん】【ローズ・ベルタン:彩吹真央さん】
これ完全にテナルディエ夫妻ですよね????時代の流れに乗っかって生きるのが上手い人たちでした。

 

【ランバル公爵夫人:彩乃かなみさん】
・この人の視点から見た「マリー・アントワネット」の話にも興味があります。すごく美化されちゃいそうですけど。マリーにずっと付き添ってあげたがために、あんな最期になってしまって、この方も不憫だったな…。

 

【ジャック・エベール:上山竜治さん】
・上山ルキーニが見たかった(突然のエリザベート

 

再演があれば、キャストが一新されそうな気がしているので、そのときにまた観てみようかと思います!