上演が発表された時、キャストのことよりも「演出が……」という部分で話題になっていたような気がする「プロデューサーズ」。
当初はあまり観るつもりはなかったんですが、BWでたくさんの賞を獲っていると評判の作品でしたし、木下晴香ちゃんが出てるし、木村達成さんも出てるし、なんだかんだ芳雄さんも好きになってきた頃でしたし(最初苦手だったんですけどね)。
あんまり期待しないで観に行ったんですが、全体的な感想としては、純粋に楽しかったです。F田さん演出のミュージカルは初めてだったんですが、これはオリジナル版がそもそも超絶はちゃめちゃなので、おそらくそれ以上にめちゃくちゃにはならなかったのでしょう(という勝手な想像)(あとBW作品って演出それほど変えられないイメージあります)
強いて言うのであれば、フランツ役の佐藤二朗さんが、話すたびにセリフかアドリブかよくわからないぼやきを入れてましたが、(面白かったかどうかは別として)あの程度であれば、私はあまり気になりませんでした。
あと下ネタはお芝居で、というよりも言葉で発するものが多かったので、こちらも思ったよりひどいとは感じませんでした。あれなら「天保十二年のシェイクスピア」の方がよほど過激だったような。どちらかというと、ヒトラーネタは大丈夫なのか…と思いましたが、元からあるなら仕方ないか。ドイツで上演したらどうなるんだろうって考えたけど、我ながら恐ろしいアイデアです←
あとミュージカルネタが至る所に散りばめられていて、それを見つけるのも面白かったです。冒頭、マックスが出てくるシーンでは、グリザベラっぽい人とか「ニュージーズ」の主人公っぽい人がいたし、途中のオーディションシーンにはミストフェリーズっぽい人がいて、ロジャーに「猫屋敷に帰れ!」みたいなこと言われてて笑ったし、ラストシーンのネオンサインの中には、例えば42ndストリートが「47th ストリート」ってパロディに置き換わってたり…。もっといろんな作品に詳しければ、そのあたりも楽しめそうでした。
同時期に上演が始まった「RENT」では、出演者・スタッフ内でコロナ感染者のクラスターが発生してしまい、ちょうどこの前日に残りの公演の中止が決まったばかりだったので、余計「上演出来ていること」へのありがたさを改めて感じました。
この年の7月中旬くらいから、曲がりなりにも色んな公演が上演できていましたが、またいつどうなるか全く分からない状況の中、これだけ底抜けに明るい作品が観られたのも良かったです。いい意味でバカバカしくて、何も考えずに笑える作品を、あえて「この時期」に上演する意義を感じました。
(確かコロナ禍になる前には上演が決まってたと思うので、本当に単なる偶然なんですけどね)
曲は特に印象に残るものがなく…。♪なってやる~プロデューサー!♪みたいな曲は多少耳に残りましたが。ただセリフから歌に入るのが、とてもナチュラルな楽曲が多かった印象でした。
以下、キャスト別感想です。
【マックス:井上芳雄さん】
・芳雄さん、自分のラジオでもおっしゃってましたが、芳雄さんが下ネタを発しても、それほど下世話に感じないのはなぜでしょうか…。笑
・金と女のことしか考えてないような、自己中最低男のはずなんですが、芳雄さんが演じると、どこか紳士かつお上品なキャラクターにも見えてくるのがとても不思議。おそらく素で持ち合わせている品格みたいなものが、うまく生かされているんだと思います。BW版(もしくは映画版?)だと、背が低めの大柄な役者さんが演じているそうなので、そのへんのビジュアルの違いも印象に影響していそうですけど。
・歌、踊り、お芝居のみならず、ボケたりツッコんだり、佐藤二朗さんのアドリブを回収したり(笑)、初ミュージカルの吉沢レオを引っ張っていったりと、ある意味1人で何役もやらなきゃいけないようなキャラクターで大変そうでした。ほとんど出ずっぱりでしたし。でもどれも完璧にこなしていて、この役は多分現時点で芳雄さんにしかできないんじゃないかなと思いました。
・終盤、レオに裏切られて刑務所で歌うソロ曲が、完全に「井上芳雄ワンマンショー」でした。圧巻。たださすがの芳雄さんでも、オーブの音響の悪さには少々勝てない部分があったようで、ときどきなんて歌ってるか聴きとれませんでした(私の聴覚の問題かもしれないですけど)
・この作品は、というかマックス役は、よっぽど上手い人がやらないと破綻するか、完全に内輪だけで楽しんで客席置いてけぼりになる気がしますが、そんな惨事にならなかったのは、芳雄さんがきちんと軸になってうまく回してたからだと思います。
・全公演中止になってしまった「RENT」に向けたアドリブのセリフも良かったです。ホールドミー・タッチミーから小切手を受け取った後、彼女を追い出すときに「RENT」を引き合いに出すんですが、「またいつかお会いしましょう!Seasons of Love!」みたいなニュアンスのセリフを言ってて、粋だなぁと。「RENT」の件はおそらくセリフに元からあるんですが、そのあとのセリフはアドリブっぽかったので。
・トート閣下続投してくださいね…(唐突)(愛希シシィとの組み合わせ、もう1回でいいから観たいんです…)
【レオ:吉沢亮さん】
・本当に初ミュージカルなんですか!?!?!?!?!?!?!?
…って言いたくなるくらい、あのメンツに囲まれて歌って踊っても、あんまり違和感なく馴染んでいた吉沢レオ。「ローマの休日」の太鳳ちゃんを見て「初ミュージカルだから仕方ないよね~」とか思っていたので、こんなにポテンシャル高いと逆にビビってしまう…。ポテンシャルの高さは顔面偏差値だけかと思っていました(超失礼)
でもよくよく考えたらアミューズ所属ですし、事務所の若手俳優が定期的に開催しているハンサムライブに何度も出ていらっしゃったのは知っていましたし、歌・踊りに関しては、少なくとも素人ではなかったんですよね。でもミュージカルはまたいろいろ違うと思うので、あのクオリティまで持っていったのは、単純にすごいと思います。
・映画「キングダム」でしか見たことなかったんですが、コメディもできるんですね。ふとした瞬間、ちょっと素に戻っちゃってるかな?と思う表情がありましたが、恐らく大河ドラマの撮影も同時進行してたんじゃないかな…。そりゃ人間ができる仕事のキャパシティ超えてますよ…。
・あの端正な顔を崩しまくった百面相に、色とりどりの奇声(笑)、ヒステリーを起こしたときの人間離れしたヤバい動きなどなど、ずいぶん振り切ったお芝居をされるので、かなり驚きでした。
・惜しむらくは(これはもう彼自身でどうにかなるものではないので、本当は言いたくないのですが)身長が…………(ヒールを履いた晴香ちゃんよりも小さくて………)他の役者さんと一緒にいると、どうも埋もれ気味になってしまっていたのがやや難点でしょうか。というか、ミュージカル俳優さんたちが全体的にデカいんですけどね。
【ウーラ:木下晴香ちゃん】
・これまで演じてきた役柄とは真逆のイメージのキャラクターなので、ずいぶん思いきった挑戦をするんだな~と、発表時から思っていたんですが、めちゃくちゃ上手く演じてました。彼女は将来のミュージカル界を担う女優さんになるな~と、改めて感じました。
・常にカタコト、頭からっぽのブロンド美女って、本当になんも考えないで演じると、下品すぎて少なくとも同性からはあまり支持されないキャラクターになると思うんですが、木下ウーラはいちいち仕草や表情がセクシーではあるものの、同時に愛嬌もあってかわいらしかったですし、出てくるたびに\ウーラかわいい/ってうちわ振りたかったです(ヲタク思考)
・どちらかというとグラマラス、というよりかはスレンダーなスタイルなので、健康的なセクシーさを感じました(BW版の女優さんはもっと豊満なスタイルのようだったので)あと芳雄さんと同じく、生まれ持った気品みたいなもののおかげで、下品になってないっていうのもありそうです。
・歌がまたまたパワーアップしてて、今の彼女の歌唱力で実写版「アラジン」の♪Speechless♪歌ってほしいです。
【ロジャー・デ・ブリ:吉野圭吾さん】
・濃ゆいキャラの吉野さん第2弾(第1弾は「ロカビリー☆ジャック」の悪魔)
・舞台出てくるだけで謎の圧を感じたんですが、あれも一種の才能ですよね…。
・ド派手なメイクと女装姿に、なんの違和感もないのおかしくない??違和感仕事して!!!!!!!
・キャスト別のPR動画を見た時に、吉野ロジャーに負けないくらいの顔圧でびっくりしちゃったんですが、舞台上で見たらすっっっごく素敵で…!本当にどんな役柄を演じても上手だな~って思います。特に彼のお芝居が好きなんですが、今回はそれほど良さを感じられるような場面がなくて、その点ではちょっと残念ではありました。
【ホールドミー・タッチミー:春風ひとみさん】
・マックスのスポンサーになってるおばあちゃんがわらわらいるシーン、呆然と見守るしかなかった…。春風さんはかわいらしかったです(いろいろ際どかったですけどw)
【フランツ・リープキン:佐藤二朗さん】
・これだけがっつりミュージカル俳優がいる中で、一体どんな立ち回りをされるんだろう…と思いましたが、そんなことで自分のカラーを失うような人ではありませんでした。笑
・予想以上に歌えて踊れてたことにびっくり。ただ彼が持っている独自のキャラクターとしては、こういう演目にしか出られないだろうな…間違ってもレ〇ゼとかには出られないだろうし、出ちゃダメでしょうね…。
もしこの先再演があれば、1回は観てみようかな。ただただ笑って楽しめるミュージカルも、たまには良いものです。