Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.10.25 ミュージカル「ローマの休日」:おてんばプリンセスのひと夏の恋

作品自体に興味はあるけど、失礼ながら正直あまり心惹かれないキャスティングだったため、気軽に観られそうなB席を確保して、1度だけ観てきました。

 

帝劇のB席はやっぱり良いですね…。今回1番後ろの席でしたが、この時期はまだ両隣空席のままで、そのおかげで前の席にも人がおらず、サブセンターだったので見晴らしも最高でした。満席じゃないと利益が出ないのだろうと思いつつ、観劇環境としてはかなり良かったです。

 

ローマの休日」はDVDを持っていて、まだ2度くらいしか見てないんですが、個人的に好きな作品です。身分違いの2人が、ローマ各所を巡りながら1日限りの恋を育んでいく過程は、ラブストーリーが苦手な私でも楽しめたのと、オードリー・ヘップバーンがとにかく天使のようでほんっとうにかわいいんです。


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さて、ミュージカル版の感想です。

 

全体的に、難しいことを考えずに楽しめる王道ミュージカルでした。そしてミュージカル初心者にもしっかりおすすめできる作品だなと、個人的には感じました。少なくとも再演したら、また観たいなと思える演目になりました。

 

おおむね映画に忠実に作られている印象で、階段で食べるジェラートも、かの有名な「真実の口」も、祈りの壁も、暴走するベスパも、全部見事に再現されてました。

 

一番好みだった要素は舞台セットで、冒頭とラストに出てくる王女との謁見の間の大きな階段(これは広場の大階段にも流用されてました)とか、王女の寝室とか、こじんまりとしたジョーのお部屋とか。街並みのセットも、簡易的ではありますが、細かい部分でかなりこだわって作られてそうだなと。機会があれば、ぜひ近くでまじまじと見てみたいセットが多かったです。

 

楽曲は、がつんとインパクトのあるものはなかったかな…と思ったものの、主題曲(♪こ~の~~ロ~~~マで~~~~~~♪)はかなり耳に残りました。好みか、と言われると特にそうでもなかったんですが、それこそ往年の名作映画のエンディングで流れてそうな雰囲気の楽曲だったので、作品にはぴったりでした。あとどれも聴いていてすんなり耳に入ってくる心地よさがあったので、口ずさもうとは思わないけど、これだけきっちり作品に馴染んでたら大成功だと思います。

 

ところで誰も悪い人が出てこないミュージカルって、もしかして初めてなのでは…!?ハッピーエンドではないものの、誰も死なないし(これ大事!)、爽やかな読後感(読後じゃなくて観劇後ですけど)だったし、ひょっとするとディズニー作品以上におとぎ話のような雰囲気があったのでは。

 

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キャスト別感想です。 

 

【アン王女/アーニャ:土屋太鳳ちゃん】

・キャストが発表されたとき、正直「え!?なんで???」と思ってしまいました。歌のイメージが全くなく、どちらかというと身体能力の高いイメージだったので…。しかも初ミュージカルで帝国劇場のド真ん中に立つなんて、考えただけでも恐ろしすぎて、私なら全力で固辞すると思います(立つ機会がそもそもないですけど←)

というわけで、土屋アンの回を取ったものの、あんまり期待しないでいました。キャラクター的には朝夏さんよりは合っていそうな気がしたので、冒険してみても良いか~という気持ちでした。

(朝夏さんはあまりにも大人っぽすぎて全くイメージわかなかったです…)

 

・そんな土屋アンの歌。一朝一夕でどうにかなるものでもない(ですし、一朝一夕でどうにかなっちゃったらミュージカル俳優さんの立場がなくなる)ので仕方ないにせよ、やっぱりかなり不安定でした。

 

そもそもハコに対する声量が圧倒的に足りてない上に、公演期間の終盤だったからなのか、声のスタミナが途中で切れてしまったり、息がうまく継げてなくて音を外してしまったり、声が裏返ったり、高音は苦しそうに出してたり。アン王女が歌うシーンになると、こちらも自然と緊張して身構えてしまい、彼女の歌声に何度かずっこけそうになってしまったのが正直なところです…。

 

それでも、私が想像していたよりもずっとずっと善戦していましたし、声質は結構ミュージカルに向いていそうな感じだったので、訓練を重ねていけばぐんぐん伸びていくのではと思いました。

 

・そんな歌唱力を補って余りあるお芝居。太鳳ちゃんのお芝居は、もちろんテレビや映画で何度か見たことがありました。特に映画「8年越しの花嫁」での彼女のお芝居には、衝撃を通り越してやや恐怖を感じたほどに素晴らしかったです。

 

今回も、王家に生まれた皇位継承者としての気品と、刺激的な体験を追い求める等身大の女の子としての無邪気さを、素晴らしいバランスで演じていました。親近感が湧くようなフレンドリーさを醸し出しつつ、ところどころの仕草や表情で、彼女が市井の人ではないことがしっかり伝わってきました。

 

・1幕はかなり声を高めに出していて、一歩間違うと完全にぶりっ子キャラになりそうなところを、上手い具合にコントロールしてる印象でした。幼いな~とは思ったけど、鼻につくあざとさは特になかったです。ひたすらにかわいらしかった…。お付きのばあやに過密スケジュールを伝えられて、情緒不安定になるシーンはコミカルで面白かったです。笑

 

・2幕のラスト、ローマでのいろいろな体験を経た後、宮殿に帰ってきて、王女として自らの責務を全うすると決意したときの声色が、1幕とは全然違っていてびっくり。たった1日だけだったけれど、ジョーやアーヴィング、ローマの人たちと触れ合った経験が、アンに王女としての自覚を芽生えさせたことが明確に伝わってきました。

 

・一生懸命取り組んできたことは十分すぎるほどに伝わったので、いつかアン王女役に再チャレンジしてくれたら、また絶対に観たいなと感じました。

(ところでそういう意味では、完全にTVから出てきた女優さんですが、葵わかなちゃんは上手だったよな…と。声量はまだまだな部分もありますが、少なくとも音を外したり声が裏返ったりって、私が見た限りではなかったですし、あまり話にも聞かなかったような)

 

【ジョー・ブラッドレー:加藤和樹さん】

・「ファントム」以来、2度目の加藤さん。加藤さんは幸せになる役柄を演じているイメージがあまりなく、憂いを帯びた表情がよく似合う俳優さん、という印象でしたが、加藤ジョーはかなりはっちゃけてました。「…か、加藤さん!?」とびっくりするシーンがちらほら。笑

たまたま自宅に連れ帰った女の子がアン王女だと気づいて、彼女への独占インタビューが高値で売れることを知った場面なんて、あんなすごいテンションのお芝居もするのか…と。笑

 

・大人の男性の色気を振りまきつつ、ところどころで小学生男子か!?みたいな行動するので、ギャップが大きくて面白かったです。爆睡するアンを起こそうとしてわざとドアをばんばん開け閉めしたり、寝てるアンをお姫様抱っこして別のベッドに移そうとしたものの、抱きかかえる方向を間違えて1人で静かに「きーーーっ!」ってなったり(一応アンを起こすまいとするその気づかいが可愛いw)

 

・身分違いと知りながら、アンに徐々に想いを寄せていく表情はやっぱり切なかった…!お別れのシーンで、ジョーから離れていこうとするアンの両手を、「行かないで」と言いたげに、ほんの少し自分の方に寄せる仕草が…!!!!!めちゃくちゃ良かったです…!!!!!あんなことされたら離れられなくなるやん…!!!!!(大興奮)

 

・ところで加藤さんと太鳳ちゃんの身長差がすさまじくあったため、キスシーンになると太鳳ちゃんが思いっきりつま先立ちで背伸びをして、加藤さんは膝をちょこんと折って身をかがめていたので、ロマンチックなシーンなのに、2人とも大変そうだな〜と、現実的な心配をしていました。さすがに身長差がすごすぎて萌えには至らなかった…。笑

 

・ビジュアル面でも、太鳳ちゃんはきれいですがどちらかというと童顔ですし、加藤さんは年齢のわりに落ち着いた印象の役者さんなので、年齢のギャップも感じました。お芝居の相性はとても良さそうでしたが。

 

・カーテンコールで、藤森さんが太鳳ちゃんの手を取ろうとするのを加藤さんが遮り、加藤さんが藤森さんの手をとって、そのままぎゅーってハグしてました。この回、加藤さん&藤森さんの組み合わせが、東京公演では最後だったようです。

ちなみにそのまんま太鳳ちゃんを置いて捌けようとして、太鳳ちゃん慌てたそぶりを見せると、加藤さんが「冗談だよ~」みたいな仕草をして太鳳ちゃんの手を取り、3人仲良く捌けてました。かわいい…。

 

・ちなみに加藤さん、Twitterをちょくちょく見てますが、気遣いができて、誰とでも仲良くできる紳士なイメージです。あとあのビジュアルで料理上手とか、反則が過ぎませんかね(真顔)

 

【アーヴィング:藤森慎吾さん】

彼にこの役をキャスティングした人、天才では??オーディションを受けたのか、オファーがあったのかは不明ですが、こんなにはまり役とは。

 

・芸人さんでミュージカル出演、というと「レ・ミゼラブル」の斎藤さん(トレンディエンジェル)や、「ファントム」のエハラマサヒロさん、直近だと「メイビー・ハッピー・エンディング」の斎藤さん(ジャングルポケット)がいらっしゃいますが、藤森さんも芸人さんとは思えないほど、役者として馴染んでました。トレードマークのメガネがないこともあるけど、多分言われなければぱっと見全然気づかないかと。

 

・声質がやや独特で、ハスキーでしたがセリフはしっかり聞き取れました。歌はそもそも歌う場面がそこまで多くなかったですが、太鳳ちゃんと同じく声が細くて、発声が舞台向きになっていなかった印象です(なので歌うととたんに何を歌ってるのかわからなくなるという…)ですが、台詞回しはさすがに上手でしたし、本当にキャラクターがぴったりでした。もしストレートプレイ版「エリザベート」があれば、ぜひとも彼にルキーニを演じてほしいくらい。

 

・終演後のアナウンスはさすが芸人さん、幕が閉まったあとも存分に楽しませてくれました!