Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.03.21 ミュージカル「サンセット大通り」:結末から始まりへ

※物語のオチ(?)を盛大にネタバレしているので、知りたくない方は読まないでください〜!

 

 

 

「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」の余韻に浸る間もあまり無いまま、同じ日のソワレは「サンセット大通り」を観ました。アンドリュー・ロイド・ウェバー作品のはしご…!笑

 

後ろめたさはありましたが、この日に観ないともう次にいつ観られるか…という感じだったので…。


f:id:der_letzte_tanz:20210407004123j:image

 

今回3度目の再演。私はもちろん初観劇でした。

 

「THE GREATEST MUSICAL CONCERT」の時に、柿澤さんがタイトルナンバーを歌ってて、それがかなり印象的だったのと(♪汚れた靴を舐めろ~♪ってすごい歌詞だな…って思った記憶がw)、ALW作品なので一度は観ておこうと思い、チケットを確保しました。

 

あらすじはなんとなーーーーーく知ってはいましたが、いきなり話の結末部分から始まるのが非常に斬新な作品でした。

(とは言え、元になった映画は相当昔からあるので、斬新というか私が知らなかっただけなんですけどね!)

 

主人公はかつてサイレント映画の大スターだったノーマ・デスモンド。そしてとあることがきっかけで彼女に射殺されてしまった若き脚本家ジョー・ギリス。

 

ジョーが、自らが沈んだプールから上がってきて、事の成り行きを観客に向けて語り始める…というシーンから始まるのですが、この演出が個人的にすごく好きでした。

純粋に「なぜジョー は殺されたのか?」がとても気になる始まり方で、この作品が持つきらびやかでどこか不気味な世界に引き込まれていきました。

 

あと場面転換で暗転している間、変な風の音がずっとしてたのも演出…??気味が悪くて素敵でした。

 

ものすごく面白い物語!というわけでもなく、登場するキャラクターたちへの感情移入もしづらかったんですが、個々の役者さんの技量が高くて非常に見応えがありました。

 

セットや大道具もすごく豪華で、舞台上に車が走るのを初めて見てびっくりしたり(とはいえ「ホイッスル・ダウン〜」のセットもすごく大がかりだったのと、舞台上に大型バイクが走っているのは直前に見てましたがw)

ちなみに演出家の方がTwitterで、「あの車はゴルフカートを改造したものだから、足の長い俳優さんは乗るのが大変そうだった」って書いてました。笑 

 

舞台中央にある大きな階段が、回転するだけでノーマの家の階段になったり、撮影所の階段になったりと、シーンごとに表情を変えるのも面白かったです。

 

ノーマ役とジョー役はペア固定…というのを観劇後に知りました。てっきりシャッフルしてるものかと勘違い。

私が見たのは安蘭けいさんのノーマと松下優也さんのジョー。ちなみにもう片方のペアは濱田めぐみさんノーマと平方元基さんジョー。こちらのペアも気になります…!

 

【ノーマ・デスモンド:安蘭けいさん】 

・安蘭さんは今回初めて拝見しました。元宝塚のトップ男役とのことで、とにかく何をお召しになってもめちゃくちゃ素敵!ぴっ たりしたドレスを着てる時に分かる美しいスタイルに目が釘付けになりました。

 

・「…落ち目の女優さんには全然見えんなぁ…」と途中までは思ってたんですが、中盤にさしかかると、安蘭ノーマの「自分の世界に周りの人を引きずり込む感じ」が顕著にわかって、1幕終わりに私は「安蘭ノーマ怖い…………」と震えていました。笑 

 

・でもある意味ノーマはめちゃくちゃ幸せ者な気がします。ジョーのあの一言までは、彼女は自分のためだけの世界、自分が永遠の主役である世界に、マックスのおかげで生きてこられたと思うので。クライマックスで、ノーマは完全に常軌を逸した行動を取りますが、「大衆に見られながら演技をする」という、長年味わうことの出来なかった大きな喜びに溢れた表情をしていて、すごく幸せそうに見えました。

(そしてその代償として、周りを不幸に陥れるという…)

 

・演じていてエネルギーを使い果たしそうな役ですが、アフタートークで安蘭さんは「演じててすごく楽しいんですよ~!」とおっしゃっていました。あの役を楽しめるってすごいなぁ…。

 

【ジョー・ギリス:松下優也さん】 

・松下さんも、顔と名前は知ってましたが、舞台で見るのは初めてでした。ジョーはほぼ 出ずっぱりと言ってもいいくらい出番が多く、歌もセリフもたくさん。ノーマと同じく、演じるのはとても難しそうですが、やりがいもありそうな役だなと思いました。 

 

・松下ジョーは、ノーマのことを金づるとしか思ってなさそうな割に、頭の片隅にいつもノーマがいて、いざとなると彼女に手を差し伸べてしまう、愚かな優しさの持ち主だなと感じました。比較的ジョーが主導権を握っているようにも思えたので、あの束縛生活から抜け出そうと思えばいつでも振り切ってしまえそうなのに、彼はその選択をしなかった…というか出来なかったんだろうな…。

 

・最後の最後でやっと抜け出す決断をしたかと思いきや、ノーマに対してあの言葉をぶつけてしまい、それがノーマの狂気の引き金を引いてしまってあんなことに…。「50 歳であることは悲劇なんかじゃない。自分を25歳だと思っていなければ」って、すごくインパクのある台詞でした。正論なんですが、例えば私が50歳になったとして、その言葉を若い男性に言われたら、多分私もブチ切れます。笑

 

・でも松下ジョーは、ノーマに撃たれて死んだことをあまり恨んでも悔やんでもいなさそうな気がします。「まぁ人生こんなもんだよね~」とか言いつつ、あの世で朗らかに笑ってそう…。

と言うのも、アフタートークでの松下さんがあまりにもおとぼけキャラで、そちらの印象が強かったので。笑

 

・松下さんは台詞の言い回しや声はとても聴きやすくて、歌も上手かったです(「わ」が「ヴァ」に聞こえるのはすごく気になったけど…)

 

・来世もしかっこよくて超歌うまミュージカル俳優さんに生まれ変われたら(笑)ジョーは是非とも演じてみたい役です。あとジョー役は色んな俳優さんが演じているのを見てみたいなぁ。誰が演じても違う色が出そうな役柄に思えました。

 

再演ごとに色んなノーマとジョーを観てみたい作品です。