Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2020.03.21 ミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」:信じる心が「神」を呼ぶ?

2 月末に中止寸前だった(とは知らずに見ていた)「天保十二年のシェイクスピア」を観劇してから、およそ 3 週間。突如現れた新型ウイルスで、世界がひっくり返っている最中に「ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド」を観劇しました。


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会場の入り口にはサーモスタットが置かれ、入場時にアルコールを手に吹きかけられ、マスクは着用必須になっていました。まさかこんな異様な光景で観劇することになるとは…。 

 

座席は2階席のA列(最前)で、決して悪い席ではなかったんですが、私の両隣はガラ空き。右隣4人、通路を明けて左隣3人分は空席でした。真後ろには2人座っていましたが、2階席は全体的に6~7割程度しか埋まっておらず、1階席も前方センターブロックが半分も埋まってなくてショックでした。

 

満席の状態で観ると、前の人の頭と舞台がかぶるとか、隣の人が挙動不審で困るとか、いろいろ不満が出る時もありますが、正直今回はぽつんと1人で座ってるのがとても寂しく悲しい気持ちになりました。

 

空いてる席には本来座るべき人たちがいて、でもきっと観劇を泣く泣く諦めた方々なのだろうと思ったら、自分が観劇できるのは嬉しいけれど、観られなかった方たちの気持ちを考えると複雑な気持ちと、後ろめたさを感じました。

 

そんな複雑な気持ちのまま幕が上がったため、正直今から観劇する気分になれそうにないなぁ…と思っていましたが、幕開け1曲目の♪Valuts of Heaven♪の、力強く晴れ晴れとした演者さんたちの歌声に、思わず涙が出ました。

 

と、同時に、私はやっぱりミュージカルが大大大好きで、これからもっとたくさん色んな作品を見るために、はちゃめちゃ元気に生きてやるーーーーー!!!!!!!!と決意を新たに(?)したのでした。

 

きっと演じる側も、自分たちのお仕事に大いに関わることなので、不安な日々を送っていたことと思います。でもそんなことを微塵も感じさせない歌声のおかげで、しばし嫌な日常を忘れて世界観に入り込むことができました。本当にありがたいことです…。

 

物語は事前に公式サイトのあらすじを読み、楽曲は2曲くらいは聴いた上で観劇しました。

 

思ったよりも内面的なお話になっていて、セットは非常に複雑かつ大掛かりだけれど、物語の舞台自体はとある町から1歩も出ることなく進められていました。そういえば結局ザ・マンは、劇中納屋から一歩も出なかったなぁ…。

 

一度見ただけではなかなか消化しきれなかったのが正直なところです。もし2回観ることができたら、もっと自分の中で落とし込んで理解できそうでした。

 

劇中、スワローの弟が「神様が本当にいるならとっくに世の中を良くしてくれているはずなのに」みたいなニュアンスのセリフを言いますが、最後まで見ると結局のところ「神様が本当にいるかどうか」よりも、「誰かが誰かを信じる心」が神様を生み出すんじゃないかと思いました。「鰯の頭も信心から」って言うし←

 

ザ・マンとスワローの関係を見ていると、「信じるから愛する」のか、「愛するから信じるのか」、鶏が先か卵が先か問題みたいだなぁ…とも思ったり(例えがアレすぎるw)


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以下、簡単にキャスト別感想です。 

 

【男(ザ・マン):三浦春馬さん】

・脱獄してスワローたちの住む町にやって来たザ・マン。三浦さんは、舞台作品では「キンキーブーツ」のローラでしかことなかったため、ザ・マンは全く違った役どころで「こんな演技も出来るのか…!」とかなりびっくりでした。

 

・脱獄してやっとの思いでたどり着いた先で、純真な心で自分のことをキリストと信じ込むスワローや子供たちに出会い、その透明でまっすぐな心に彼自身が揺れてもがいて浄化されていくような姿を、非常に繊細に演じられていました。ビジュアルは、ちょっと若いジャン・バルジャン(囚人時代)っぽかったかも?

 

アンドリュー・ロイド・ウェバーが作り出すとてつもなく難解なメロディーを、溢れんばかりの感情を込めた上で、声もしっかりコントロールして歌っていて素晴らしかったです。

 

・この作品が、私が三浦さんを舞台上で観た最後の作品になりました。多彩な才能を持った俳優さんでしたし、個人的には映像作品よりも舞台で輝く姿が印象的だったので、今後たくさんのミュージカルで観てみたいと思っていましたが…。本当に残念です。

 

 

【スワロー:生田絵梨花ちゃん】 

・「グレート・コメット〜」以降、この時点でのいくちゃんの舞台出演は全部観ることができていました。さすがに今回は無理か…と覚悟していましたが、奇跡的に見られて本当に良かったです…!「キレイ」以来3か月ぶりに見た舞台上のいくちゃんは、やっぱり可愛くてキラキラしてました。本当にいつ見ても可愛らしい~妹にしたい〜!笑

 

・「キレイ」のケガレ役も似合っていましたが、今回のスワローも、子供たちをまとめるしっかり者のお姉ちゃんな一方、大人たちに紛れると子供扱いされる…という、大人と子供の狭間にいる不安定な少女の役がとてもハマっていました。いくちゃんは意外と、影があったり、悲劇性が強い役のほうが似合ってるような気がします(「モーツァルト!」のコンスタンツェ見てみたかったなぁ)

 

・ザ・マンのことをまっすぐに信じて愛して、清らかな声で歌いかける姿はさながら天使のようでした♪

 

その他の印象的な役者さん。

まずはキャンディ役の鈴木瑛美子さん!なんと今回が初ミュージカルとのこと。嘘でしょ!?!?!?!?!?!?!?

とにかくめちゃくちゃ歌が上手でした。ソウルフルな歌声がかっこよすぎて、劇中1番好きだったのがキャンディとエイモスのデュエット曲でした。

顔立ちもはっきりしてて美人さんで舞台映えするなぁと思いましたし、レミゼのエポニーヌとかやってみてほしいなと。今後注目していきたい役者さんです。

 

エイモス役の東さん。

股下何メートルだよってくらい足が長い。うらやましい…足の長さ分けてほしい …(短足の切実な願い)スタイルが抜群でとにかくかっこよかったです!

 

スワローのパパ役の福井さん。

あんまり歌唱パートがなくて、正直もったい ない気はしました。でも若い役者さんが多い中、福井さんがいらっしゃることで、作品に安定感が増してた気がしました。

 

またいつか観られる日は来るのでしょうか…。なかなか哲学的(?)な話だったので、もっと落ち着いた状況になってじっくり観てみたいなぁ…。