Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2019.11.21 ミュージカル「ファントム」: 一歩足を踏み入れればそこは別世界

 

上演が発表されたときから楽しみにしていた「ファントム」。「オペラ座の怪人」には共感できないわ~とか思ってるのに、なぜか楽しみでした。笑

2019年版は、これまでもエリックを演じた経験を持つ城田さんが、「ファントム」では世界初の主演 兼 演出。演出を作りながら役者としての仕事もこなす、というのはなかなか大変そうですが、役者としての経験が豊富な城田さんが作り出す「ファントム」の世界、一体どんな感じなんだろう~と期待しながら劇場に向かいました。


過去の公演はもちろん未見のため、演出の比較はできませんでした。ただ「オペラ座の怪人」が持つダークな印象をひっくり返すような、きらびやかで色彩豊かな装飾や、開演前のロビーでのパフォーマンス、ディズニーランドのアトラクションを思わせるような世界観ぴったりのアナウンス、客席通路を存分に使った演出などなど。城田さんが「お客様を楽しませたい!」と工夫を凝らしたのだろうなぁ…と思える部分がたくさんありました。

(ロビーパフォーマンスは、出演者の皆さんにとっては大変だろうなと思いました。舞台上で演じるだけでなく、観客とのふれあいも含まれてくるので)

 

私は開演前ぎりぎりに入ったため、ロビーパフォーマンスは見られないだろうなぁ…と思ってたんですが、そんな時間にもまだやってたことにびっくり。開演直前はすぐ横を少年エリック役の大前くんが通って、「ぼんじゅーる!」とあいさつしてくれました。めっちゃかわいかった…(拝)


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作品の全体的な印象としては、ベースは「オペラ座の怪人」ではあるけれど、同時に思い出したのは「ノートルダムの鐘」でした。

 

オペラ座の怪人」でのファントムは、基本的に紳士然としていて、そのベールが徐々に剥がされていくイメージでしたが、「ファントム」のエリックは、人目につかないところで育った恐ろしいまでに無邪気な青年、という印象でした。理想の女性を前にしてどぎまぎしちゃう様子や、彼女を外に出さないで独り占めしようとするところで、「ノートルダムの鐘」のカジモドを思い出しました。

 

最初エリックがしゃべり始めたとき、あまりにもカジュアルな話し方だったのにはやや面食らいました(そして最後まで慣れなかった…)歌い出すと大人の男性なんですが、話し方がまるで8歳の男の子みたいで、とても不気味。ただおそらくそれが狙いなんだろうな、とも思えました。

 

初見だけでは「何回も見たい!」とは正直思えませんでした。歌やお芝居はとても素晴らしかったですし、どちらかというと好きな部類の作品ではありますが、もう少しそれぞれのキャラクターを掘り下げてほしいなとも思いました。特に最後は結構足早にバタバタ~~っと収束していった印象があり、やや消化不良でした。

(あの後クリスティーヌとシャンドン伯爵はどうなったんだろうか…2人で生きていくのはちょっと…ってなりそうだけど)


演出で気になったのは、物語の中の大事なシーンが、なぜか舞台上手側に寄っていたこと。特にキャリエールとエリックが、お互いに親子であることを確かめ合うクライマックスのシーン。すごく大事なのに、2人して舞台上手の方でお芝居していました。

たまたま今回の席は上手ブロックだったため、ちょうどそのシーンは真ん前に2人が見えて良かったんですが、この次の観劇は下手ブロックのため、どう見えるのかが心配になりました。

 

客席降りが多いことも上演当時いろいろ言われていて、個人的にはあまり気になりませんでしたが、確かに大事なセリフは舞台上で喋るべきじゃないかな…。

 

終演後は「歌がいまいち印象に残らないな」と思ってましたが、数日経ってふと脳内で、クリスティーヌが♪メロディ メロディ マイメロディドゥパリ〜♪と軽やかに歌い踊ったり、♪あれはタイタニーア!♪とか流れ始めたので、無意識に記憶に刻まれていたようです。でも「これ!!!!!」と思える曲はこの時点ではなくて…。

 

強いて言うなら城田さんのミュージカル曲カバーアルバム「a singer」で散々聴いていた♪母は僕を産んだ♪が、とんでもなく悲劇的なシーンで歌われてたのが衝撃でした。そりゃ「の゛ろ゛う゛!!!!!!」ってなりますね。

(初めて聴いたとき、突然の叫びにビビってイヤホンを耳から外した人より←)


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↑開演ぎりぎりに入場した、私の焦りがわかる写真(ぶれぶれ)

(ぎりぎりなら撮らないでとりあえず入ろうよ←)

 


以下、印象的だったキャストさんの感想です。

【エリック(ファントム):加藤和樹さん】 

・お名前は至るところで目にしてましたが、舞台上で演じる姿を見るのは初めてでした。歌もしっかり聴いたのは今回が初。


・加藤エリックは、歌は上手いしお芝居も上手だったんですが、個人的にあまり刺さるものがなかったです。行き場のない怒りの表現や、クリスティーヌを前におどおどする姿は印象的でした。

(そもそも私がエリックという人物に全然共感できなかったことも、あまり刺さらなかった理由かもしれません)

 

・2幕後半、クリスティーヌにもらった白い花を胸のポケットに挿して、大事そうに両手で包み込んで微笑む表情はとても素晴らしかったです。エリックを見ていて唯一ほっとできる場面でした。仮面に顔が隠れていても微笑む様子がわかったと同時に、ものすごく切ない場面でもありました。

 

・カーテンコールで登場した時、立膝をついたポーズでの挨拶が本当にかっこよかったのと、最後まで誰よりも深々とお辞儀をしていた姿がとても印象深かったです。

 

【クリスティーヌ:愛希れいかさん】

・ちゃぴ様~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!

エリザベート」ですっかり虜になってしまったちゃぴさん。可愛すぎます。人類の奇跡です(謎)


・登場が上手側の客席通路だったんですが、愛希クリスが出てきてくるっとこちらに振り向き、客席に向かってあの太陽みたいなきらきらの笑顔を繰り出した瞬間、私の1週間の疲れが吹き飛びました。ちゃぴさんの笑顔は特効薬。

 

・クリスティーヌは、演技次第ではエリック以上に共感出来ないキャラクターになりそうでした(ってこれは「オペラ座の怪人」でもそうですけど)

愛希クリスははつらつとした女の子っぽさと、母性愛の深さを併せ持った素敵なクリスティーヌでした。歌も、エリックに訓練される前と後でしっかり変化があってわかりやすかったですし、エリックの素顔を見て思わず逃げだしたものの、そんな自分を責めてエリックの元に戻っていく過程がしっかりお芝居で表現されていたので、クリスティーヌの行動に「?」ってならずに観られました。

 

・キャリエールが言う「あなたとエリックは住む世界が違うんだ!」がド正論な愛希クリスティーヌ。ちゃぴさんはやっぱり光属性ですよね。


・ちゃぴさんのダンスをしっかり見てみたいなぁ…と思っていたらなんと!エリックの母ベラドーヴァ役も兼任されていて、ベラドーヴァ役としてのダンスが本当に本当に本っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ当に素晴らしかったです。ただ個人的にコンテンポラリーダンスって見てて不安になるからちょっと苦手…。

 

・ベラドーヴァとしてのシーンで赤ん坊のエリックを抱きながら子守歌を歌ってる時の、慈愛に満ちてるけど正気を失ってるんだろうなって表情と、クリスティーヌとしてのシーンでエリックとピクニックしてる時に、「歌って」と言われてさっと曇る表情が印象的でした。

 

・本当は城田エリックと廣瀬シャンドン伯爵との組み合わせで観たかったんですよね~~~~(抽選外れて断念)そちらの方が合ってそうな気がしました。


【シャンドン伯爵:木村達成

・こちらはこちらで、木下クリスティーヌとの組み合わせで観たかったです。ちゃぴさんとの組み合わせも良かったけど…なんて言ったってシシィとルドルフですし…(親子…) 

 

・「ロミオ&ジュリエット」で初めて拝見して、私のセンサーがビビッと反応した役者さん。その後「エリザベート」、そして今回の「ファントム」と、若手俳優さんの中でもかなりの活躍っぷりを見せております。


・やはりルックス、歌、お芝居のバランスがすごく良くて、率直に上手だなぁと思えるパフォーマンスをされていました。個人的には木村さんの台詞回しがものすごく好き!少ない出番でもそのキャラクターの感情がしっかり伝わってくる印象です。

 

・「ファントム」以前はあまり素っ頓狂な役柄は演じたことが無さそうなので、ややぶっ飛んだ役でも見てみたいかも(と書いていたら、2020年「プロデューサーズ」にてぶっ飛んだ役を演じてくれました!笑)
とにかく色んな役柄で見てみたいです。そのうち主役も張るようになるんだろうなぁ。まだ推し…とまではいかないのですが、今後出演作を随時チェックしていきたい役者さんの1人です。

 

・1つ前の作品では、自らの母役だったちゃぴさんが、今度は恋のお相手役。お互い気持ちの切り替えが大変だろうなと思いましたが、しっかりラブラブなカップルになっていました。ただ身長が大して変わらないように見えたのと(ちゃぴさん背が高いので)、木村さんのルックスがすごく大人っぽい感じでもなく等身大の青年という印象なので、おそらく見た目のバランスとしては木下クリスとの方がしっくりくるんだろうなと感じました。

 

・ところでこの日はDVDの収録日。シャンドン伯爵がシャンパングラスを真後ろに投げるシーンにて、グラスが柵に当たって戻ってきてしまうハプニングが発生しましたw

ちゃぴさんが慌てて下手袖にグラスを放り投げているのに、「何事も起きませんでした」みたいな涼しい顔で歌い続ける木村伯爵に、場内こらえきれずに噴き出してましたwあれDVDに収録されてしまうのだろうか…。

 

その他のキャストの中では、エリアンナさん演じるカルロッタが、憎たらしくもチャーミングという、相反する印象を与えてくれるキャラクターで素晴らしかったです。カルロッタ独壇場シーンは何回も見たい!!!!!!!!!!!

 

あと原作だと男性のジャン・クロードを、佐藤玲さんという女優さんが演じていて、特にソロ歌唱とかはなかったんですが、ボーイッシュな衣装と丸眼鏡の似合うなかなか素敵な役者さんでした。

 


ところで「ファントム」についてあらかじめ色々調べていたところ、2010年の大沢たかおさん&杏さん出演時に、シャンドン伯爵役をWキャストで、海宝さんと古川さんが演じていたと知って、びっくりして腰が抜けました。

誰か映像持ってないんですか!?!?!?!?

言い値で買いますよ!?!?!?!?!?!?

タイムマシンが欲しい(切実)

(当時お2人で対談された雑誌もどこかに存在するようで……喉から100本くらい手が出るほど欲しい)(2人が会話している絵が全く思い浮かばないのは私だけか…)(海宝さんの作画は少年マンガで、古川さんの作画は少女マンガって思ってるので)(謎)

 

同じ役なのにビジュアルも歌い方もキャラも真逆では…と思ってましたが、今回シャンドン伯爵を演じた廣瀬さん&木村さんも、結構正反対なキャスティングの印象なので、きっと実際に観たら演じ方の違いとか面白かったんだろうな~~~やっぱりタイムマシンが欲しい~~~~~~!!!!!!