(あらすじ)
天才数学者でありながら、不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に密かに想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。
だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者・湯川学が、その謎に挑む。
(感想)
言わずと知れた名作。ただ意外と人によって好き嫌い分かれる印象があります。
(小説未読だけど映画を観た我が母は、「石神のやったことは独りよがりの自己満足でしかないし、そもそも好きな人をかばうために人殺しました、なんて許されるわけないじゃない」と、大変冷めた見解を述べておりました。笑)
(それは……正論なんだけどさぁ…というのが私の意見)
初めてこの作品を読んだのは、確か高校生の頃だったような気がします。ちょうどドラマ「ガリレオ」が流行っていた頃でした。
終盤で明かされる、石神による「もう1つの罪」に、まさに雷に打たれたようなショックを受けたこと。
本を読み終わって、真っ黒な表紙に白い文字で書いてあるタイトル「容疑者Xの献身」を目にした瞬間、「そういうことか…」と腑に落ちると同時に涙が止まらなくなったことを、今でも鮮明に覚えています。
石神が靖子たちを守るためにやったことは、もちろん全くもって許されないですし、「命がけの純愛」というキャッチコピーはどう考えても美化しすぎなんですが、何度読んでもなぜか石神を責める気にはなれないんですよね…。美しい愛と歪んだ愛はきっと紙一重なんだろうな…。
完璧なまでに計算された隠蔽工作。きっとそのまま何事もなければ成立したはずなのに、湯川という「計算外」の存在によって、その完璧なパズルが徐々に崩されていく様は、面白くもあり悲しくもありました。
久々に映画版も観たくなりました。雪山のシーンさえなければ傑作なのになぁ…ってあと100年くらい言い続けそうですけど。笑