Der Lezte Tanz

観劇、映画鑑賞、読書のキロク。たまにひとりごと。

2017.02.04 劇団四季「ノートルダムの鐘」:野中フロローの魅力を知る

 

2回目の観劇となった「ノートルダムの鐘」。

 

この週のキャスト変更は、ディズニーランドで夜ご飯を食べてるときにチェックしたのですが(お行儀が悪いので良い子はマネしない!)、あやうくテーブルごとひっくり返すところでした。私が「この組み合わせで見られたらな~!」って思った方がキャスティングされてたので、夢と魔法の王国でうはうはしてしまった…。

 


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 さすがに1回目ほどの衝撃はなかったのですが、本当に心のド真ん中にずしーーんとくる作品、そして色んなキャスティングで何度も見たくなる味を持った作品だなと感じました。

 

以下キャスト別感想。

メモ書きを再編集しているのでめちゃくちゃ読みづらいです。あとやたら長いです。

 

【カジモド:海宝直人さん】

 ・「もう一度だけでいいから見たい!」と願っていたら、この週はこの回のみ出演された海宝さん。本当に運が良かったです。

 

・正直なところを言うと、全体的には前回のほうが良かったと、素人目にも思いました。具体的にどこがどう違うか、はっきりとはわからないけど、心に迫る演技をされてるなと思ったのは前回。あと今回はセリフの声と歌声の区別が、かなりはっきりついてるなという気がしました。前回はセリフと歌声の中間ボイスがあったような…いろいろ工夫されている過程だったのかもしれません。

 

・海宝カジモドはかなり抑圧されてるなぁという印象でした。それが野中フロロー相手だからなのかは分からないけど。この時点で未見だった芝フロローは、ぱっと見はなんとなくカジモドに対しては優しそうな印象だったので。芝さんの穏やかなお顔のせいかもしれない。

 

・あとは仕草のせいか、海宝カジモドはいつも何かに怯えてる印象も受けました。身体が生まれつき歪んでいること以外でも、知らない世界への恐怖心から背が縮こまってしまっているような気が。常に何か(大体はフロローだけど)にしがみついてないと生きていけない弱さを感じました。

 

・ただもう一方で、「こうしておけばフロローは自分を見放さないだろう」ということを、しっかり理解している気もしました。フロローの顔色をうかがっていい子を演じているだけで、盲目的にフロローに従っているわけではなさそう。本当は弱くないんだけど、弱いふりをしておけば支配欲が強いフロローは満足して自分を守ってくれる。だからとりあえずは従っておかなきゃ、というのを本当は全部分かってる。だから実際のところ、海宝カジモドは弱いのか、強いのか、見ててよくわかりませんでした。結末も、海宝カジモドだととっさに…とか勢いで…というよりも、「彼ならやりかねない」感がありました。

 

・♪Out There♪は今回もそつなく歌い上げていました。最後のロングトーンは圧倒されて思わず「すごい…」と声に出してしまったほど。あの爆発的な声量は聴いてて本当に気持ちがいいです。

 

・♪Top of the World♪は前回よりもおどけてた印象。数少ないほっこりシーンなので、ここはカジモドが思いっきりはっちゃけてくれると、観ているこちらも安心します。このあたりのシーンでいいなと思った海宝カジモドは、

エスメ「ずっとここに住んでるの?」

カジ「生まれてからずーーーっと!」

の、ずーーーっとの仕草(細かい)

あと手をごしごししてエスメをエスコートするところは、うっかり「僕を信じて」とか言っちゃわないかなとか思ったり(アラジンネタ)(そしてそのままアラジンを上演してハッピーエンドになってほしいとか思ったり←)

 

・フロローにエスメラルダのことを考えるな!って怒られてる時に、文脈は忘れたけど

フロロー「お前の父親のように!!」

カジ「とうさん!!!!!」

って流れがあって、海宝カジモドはすんごい勢いで自分の頭をぽかぽか殴ってました。あれは普段からフロローに「お前の父親は弱い人間だった」とかなんとか刷り込まれた結果なのかな。「父さんのようになってはいけない」という自分への戒めの行為??

 

・そういえば基本フィーバスのことが大っ嫌い(と海宝さんご自身が雑誌のインタビューで言っていた。もちろん役柄上のお話)な海宝カジモドだけど、佐久間フィーバスがカジに対してそれほどきつく当たらない(というかむしろ優しい感じ)ので、カジ→フィーバスへの扱いもこころなしか優しかった気が。

 

・フィーバス「君が彼女を探す?ろくにしゃべれないくせに?」

 カジ「きみこそ、ろくにあるけないよね!!」

のカジモド可愛すぎません???もちろんセリフそのままの意味もあるけど、石像相手にじゃなくて、フロロー以外の生身の人間としゃべってるうれしさみたいなのがにじみ出てる感じがとても良かったです。

  

・クライマックスでカジモドがエスメを助けに行く一連のシーンはやっぱりすごかった。ここは映画でも、アニメーションなのにカメラワークが本当に素晴らしくて大好きなんです。

 

・海宝カジモドは大きく顔をゆがめているせいか、やや感情が読み取りにくいなと思いました。特にラストのフロローとの一連のやり取りをオペラグラスで見てましたが、もっと激しい怒りの表情が見てみたいなと…。表情が変わらんままあの行動に走るのもなかなか怖いですが。

  

・この日1番びっくりしたのが、結末で本気で泣いてた海宝カジモド。前回は静かに涙する感じでしたが、泣き方が全然違ってました。やはり公演ごとに感情の高ぶり方とかが違うのだろうか…。

 

・そしてフィナーレでカジモドから普通の青年に戻った海宝さんが、神レベルの美しさを放っていました。完全に後光が射していてまるで天使のようでした。オペラグラスで最後見納めておこうと思ったら、隣にいた母にオペラグラスひったくられました←

ちなみに母はこの日以来、海宝さんのトリコです。笑

 

 

エスメラルダ:宮田愛さん】

・リハやゲネプロに一切出てなかったので、見る前は全く想像のつかなかった宮田エスメ。岡村エスメとは全然違っていて、すっごく面白かったです。同じ役なのにこんなに変わるんだ…!!

 

・大雑把に言うと、岡村エスメはさっぱりしていて凛としてて、かっこいいお姉さんなエスメ。宮田エスメは大胆で強気で、でもちょっぴり幼さも残るエスメでした。

 

・♪Rhythm of the Tambourine♪のダンス、岡村さんと同じ振付のはずなのにこうも違うのか!!??と衝撃を受けました。岡村エスメは手先までバレエみたいに美しく流れるような上品なダンスだったのに対し、宮田エスメは「私を!!!!!!!!!!!見なさい!!!!!!!!!」でした。腕の振りも手の振りも足の動かし方も、とにかく一挙手一投足がダイナミックで大きく、野性的。体をくねらせる動きも艶めかしく、目が釘付けになりました。激しく動くせいか、スカートの深いスリットからばんばん太ももがあらわになっていて、あわやお尻まで見えてしまうのではとハラハラ。たぶん本人としてはそんなの全然気にしてないし、むしろそこまで見せても生活のためなら私踊りますけど!!!!!!!!みたいな勢いでした。いやーすごかった。

 

・踊りながらフロローに迫っていくときも、表情が凄まじく挑発的で、完全にフロローにロックオンしてる感じが強かったです。そりゃあんな大胆に迫られたらフロローもヘルファイヤー(?)してしまうがなと思いました。♪The Tavern Song♪のダンスパートも超かっこよかった。自信に満ちてて素晴らしかったです。

 

・歌も期待以上でした。岡村さんと比べたらやや声量が落ちる感じはあり、ロングトーンもちょっと苦手なのかな?と思いましたが、私が観た回は高音も地声で出てましたし全く問題なかったです。

 

・カジモドからエスメへの想いも、この2人それぞれでちょっと違うんじゃないかと思いました。岡村エスメの場合だと「今は亡き母への想い」っぽくなるかなーと思うし(カジモドのお母さんジプシーだったし、カジがそのこと知ってたらエスメに面影を探してもおかしくはないのでは)、宮田エスメだと「初めてできた人間の友達への想い」っぽいかなと。

 

・♪Someday♪の途中で、必死につないでいた強い気持ちの糸がぷつっと切れて、その瞬間泣き崩れる宮田エスメに泣かされました…。お芝居もとっても良かったです。この日を機に、宮田さんに注目するようになりました。

 

 

【フロロー:野中万寿夫さん】

 ・今回のMVP前回も♪Hellfire♪の迫力がぶっ飛んでたんですが、今回はあの時の100倍くらい迫力あって、曲の最中何度鳥肌が立ったかわからないです。そして何よりものっっっすごい怖かった。座席が2階席の端っこだったのでまだ良いけど、あれ1階センター席とかでまともに食らったら燃やされた挙句灰にされそう(危)

 

・前回は淡々としすぎてて、イメージとして勝手に持っているフロローのねちねち感が足りない……って思ってましたが、野中フロローの怖いところは常識人の顔してものすごくえぐいことを行動に移しているところだなと。しれっと言いのけたり実行したりしますが、本人としては全部「正しい」と信じているんでしょうね…。

 

・映画版フロローは、♪Hellfire♪後に感情的になって狂気に走る感じでしたが、野中フロローは自分でも自覚しないうちに戻れないところまで行ってしまった感じ。恐らく最後まで、自分がなんでああいう結末を迎えたのか、全く理解していないかもしれないな…。

 

・牢獄でエスメラルダと対峙するシーンでは、唯一苦悩の色が見えました。

「私は気づいたのだ、自分が人間であるということを」みたいなセリフがありますが、フロローは弟のジェアンと一緒にノートルダムに引き取られてから、ひたすら真面目一辺倒に生きてきて、常に神様の近くにいたがために、自分もいつの間にか聖人君子になったような気でいたのかもしれません。大聖堂の中では、真面目に生きていればすべてが上手くいく世界だから。でも本当は自分が若い女にそそられてしまうようなフツーのおっさんだってことに、あの時初めて気づいたんでしょう。よりによってエスメラルダにそのことを指摘されてしまい、今まで信じていたものが根底から覆されてしまう衝撃と、その事実に苦しむ様子がにじみ出ていました。

 

・野中フロローは、冒頭で決意した「弟は救えなかったがこれ(カジモド)は正しく導いてやろう」を徹頭徹尾守り抜いてる印象でした。そこには長年一緒に暮らしてきたカジモドへの情は全く無さそうです。「育てる」というより「教え込む、導く」っていうのがしっくりくるため、カジモドをハグするときも、愛情からというよりも、そうすることがカジモドにとっての「飴」になると思ってやっていそうでした。

 

・こう考えると、個人的には海宝カジと野中フロローの組み合わせって結構怖いなと思っていて。どっちも何を思ってるか、本心があまり表情に出ないペアだったので、お互いをよーーーく観察して、性質をよく知った上で、共依存のように一緒に住んでるんだろうなと。似た者同士でもあるのかとも思います。エスメラルダが出てこなくても、この2人であればいつか決別していた気がします。

 

 

【フィーバス:佐久間仁さん】

・すらっとしていてスマートな軍人フィーバスでした。マントと剣とブーツが似合っちゃってるし。宮田エスメとの身長差が素晴らしかったです。どうでもいいんですが、佐久間さんのお顔、関ジャニ∞渋谷すばるさんにちょっと似てませんか…??(すぐ誰かに似てると思っちゃう私の悪いクセ)

 

・面白いな~と思ったのは、♪Rest and Recreation♪の場面でのトラウマパートで、「この人すっごいトラウマ抱えてんな…」っていうのが露骨にわかったこと。手も足も目に見えてがたがたと震えてすごい苦悶の表情。さぞかし血生臭い出来事をいろいろ経験してきたんだなと伝わってきました。そのトラウマを何とか払拭するために色んな女の子に手を出してるような感じ。ネガティブな感情の上に乗っかったチャラさでした。

 

・あとカジモドに対して優しい。というか大人の対応でした。清水フィーバスだとカジモドとの言い合いがまるで小学生同士のケンカだったけど、佐久間フィーバスだとカジモドが子供、佐久間フィーバスは面倒見のいいおにーさんみたいでした。

 

・歌は、申し訳ないのですが、この時点では圧倒的に清水フィーバスが良かったです。♪Finale♪のフィーバスソロの迫力が全然違いましたし、♪Esmeralda♪で他の人と歌うと歌声がかき消されてしまっていました…。

 

 

【クロパン:阿部よしつぐさん】

・身軽で飄々と生きている様がまさにクロパン。吉賀クロパンはちょっと恰幅のいいクロパンでしたが、阿部クロパンはひょろっとしててずる賢そう。楽しそうにしてるシーンでも目が笑ってなくて怖かったです。

 

エスメラルダのことを最初は本当に疎ましく思ってそうだったけど、なんだかんだ言って仲間を見捨てられない情に厚いアニキっぽさもあって素敵でした。ツンデレクロパン。

 

・歌は全体的に安定してました。つくづくなんでこの人にシェフ・ルイ(「リトルマーメイド」のギャグキャラ)やらせたんだろうと思ってしまうな…。

 

 

観た後はずどーんと気持ちが重たくなるのでしばらくはいいかな…と思いましたが、他キャストさんがものすごく気になってしまうので、数日後には「また観たいな…」と思っていました。クセになるぞ、「ノートルダムの鐘」。